「パシフィックリム」というハリウッド映画を見た時のこと。
人間を襲ってくるKAIJU(怪獣)という巨大モンスター、自分たちを守るために開発された巨大ロボットがドンバチやりあう。なぜKAIJUが襲ってくるのかという謎から、ロボットを操縦する人間側のドラマもちりばめられていますが、CGをふんだんに駆使したバトルシーンが見どころであり、怪獣やロボットが好きな方にはたまらない映画です。
さて、この映画を見て斬新だなと思ったことは、「KAIJUが、地底からやってくる」という設定です。海底に「異世界とこの世を結ぶトンネル」があり、KAIJUはここを通って地上にあらわれ、毎度人間をせん滅し地球を征服しようと攻撃を仕掛けてくるという設定で、物語ではKAIJUが出現しないよう、このトンネルをどうやって塞ぐかが焦点となっています。
この「地底から何かが這い上がってくる」という考えは、古い神道の考えに通じるところがあります。(「古神道」とは異なるため、「古い神道」と称しています。)
この「古い神道」によると、古代の日本人は、太陽が毎日東の水平線から昇り、西の水平線に沈むのをみて、海の底に常世国(あの世)があると信じていました。そして、日没によって太陽は一旦死に、常世国で再生されたのち日の出として蘇る。そのような死生観をもっていたようです。
そして、太陽が生まれる場所として海を「うみ(産み)」、そして水平線でつながっている空(天)と海を区別せず、両方とも「太陽が存在する場所」として「あま」と呼んでいたと考えられています。
日の出 日の入
↑空=天(あま)↑ ↑空=天(あま)↑↑ ↓
〇=太陽が昇る 〇=太陽が沈む
ーーーーーー水平線 ーーーーーー水平線
↓海(あま)↓ ↓海(あま)↓
常世国 常世国
やがて、大和朝廷による古事記や日本書紀といった国史の編纂を通じて、神々は空である「天」(あま)から地上に降り立ってきたというイメージが定着しました。しかし、古い神道では、神は海(あま)の底から地上にあらわれたという考え方が主流だったようです。科学的にも、すべての生命は海から誕生したとされているため、こちらのほうが理解がしやすいですね。
よって、天照大神=海照大神(アマテラス)や高天原=高海原(タカアマノハラ)というように、神名など神話で使われる「天」はすべて同じ「アマ」とよぶ「海」に変換されたものが正しいようです。
なぜ、このように天と海をひっくり返したのか、その理由は定かではありません。筆者は、国史編纂により朝廷の正当性を担保しようとしたとき、見えないもの(海の底で生まれ変わる太陽)よりも、見えるもの(空の上に輝く太陽)になぞらえたほうが分かりやすかったという理由ではないかと思っています。