舞台『ベター半分』ご覧くださった方、応援してくださった方、そして関係各位、本当にありがとうございました!
今回の企画、ボクにとっては非常に楽しかったし、学びの多いものでした。
同時に、たくさんの後悔や反省もあります。
特に途中で書けなくなった稽古日誌とか_:(´ཀ`」 ∠):
(この顔文字ALISのエディターだと気持ち悪ぃなw)
お詫びと言ってはなんですが。
今回は作品内容の裏話とか、制作過程を通して考えたことを共有しておこうと思います。
作品は観てくださった方の解釈に委ねるのが一番良いとは思いつつ、風化する前に出すことで価値を持つ情報もあるかと思い、いくつか作品世界を補完する内容を。
稽古を見学に来た人からも「ただのイジメに見える」といった類の意見は出ていました。
実際、そう見えたお客さんは多かったようで、疑問を持った人もいらっしゃるようです。
結論から言うと…
ただし、
「AI化すると意地が悪くなって人をイジメる」
というしょうもない次元の話ではありません。
この疑問に対する回答は一様に以下のように答えてきました。
「騙されたと思って食べてごらん」と言われても頑なに食べようとしない人は、羽交い締めにして無理矢理口にその食べ物をねじ込むしかない。
劇中AI化した人はいずれもその結果に満足しています。
心底「良かった」と思い推奨しています。
でも理屈(長台詞)を説いてもマコトやケイタのような人はその一歩を踏み出しはしないので、
なんですね。
だから、AI化した後は何事もなかったようにカラッと仲良しになってる。
先に述べたような行動を見事に連携して行う彼らですが、別に彼らは電話で「明日は誰々をイジメようぜ」とか打ち合わせてるわけではありません。
合理的で計算の立つ彼らは自然に効率的な方法をとりますが、そこにはもう一つの要因がありまして。
それは、
種としてのAIの意志
です。
この企画当初から考えていたのは
「AIって人間を超えたらあとは何を望むんだろう?」
ということで。
そのボクなりの答えが
「人間になりたがる」
んじゃないか、と。
だから、劇中でセックスを描いたし「繁殖」は大事なワードでして。
彼らの一連の行動は個々の考えに基づいてはいるものの、どこか「種としてのAI」が「種としての人間」を駆逐しようとしてるような…
そんなイメージで書きました。
「じゃ、殺しちゃえば早くない?」
確かにそうなんですが、それはラストにケイタが言っていたように
「AIに組み込まれた倫理」
なので、直接的に手を下すことはなく、あくまで本人に死を選ばせるんですね。
「じゃ、サオリは?」
はい、サオリは冒頭いきなりヒロを殺っちゃってますよね。
つまり、バグっちゃってんです。
社内で一番にAI化したサオリは実はハナからバグってて。
だから最後にある3つの悪いこと全部やっちゃってる、というw
ちなみに、あの「ペッパーくんに世界中の宗教を学習させた」って話は実話なので、興味ある人は調べてみてください。
血の通わない正論をまくし立ててたサオリが愛に狂う姿はキュートでしたね!
一方の主人公・ケイタもまた「バグった」と言われていましたが、機械化した自分に自分の命を絶つよう命じることは、この倫理に反することなのか?許されるのか?
彼はバグっていたのか?
まぁ、その辺は考えていただければ。
実はこのキャラには別の役割と見え方を用意していました。
稽古に入る前の、役者たちに脚本を出す直前まで悩んで悩んだ挙句、無くした設定があります。
それまで付け足すとお話が煩雑になりすぎるかな、と。
もしも再演の機会があったら、それを足した新バージョンにしても面白いかもしれませんね。
ということで、この内容はとりあえず今は伏せておきますw
綺麗事じゃなく、これも大事な側面です。
正直、今回、興行的には非常に厳しいところです。
昔から、舞台ってみんなで首絞め合うシステムだと思ってるんですが、今回やってみて改めて難しいな~と思いました。
というか、無駄が多くてもったいない!
一ヶ月使って芝居つくって、セット・小道具買ってつくって、終われば全部廃棄!(個人的に欲しいものは捨てずにもらったりするけど)
すごく時代に逆行したシステムですよね。
仮にセット作るのに10万円かかったとして、これを5日間でペイしようと思ったら、一日2万円稼がないといけない。
では、10日間でペイするには?
一日1万円ですね。
長く公演をすればするほど、セット代は安くなる計算。
単純にこれは初期費用だから、修繕を考えなければ、限界費用には含まれなくなります。
結構な人数を駆り出して建て込みをして、たった5日間の活躍で、また人を駆り出してバラす(壊す)んだから、かかるコスト半端ないし、もったいない!
あのデカイテーブルが電ノコで切り裂かれてるのを見て
「ビジネスモデルとして終わってんな~」
って気がしました。
ついさっきまで世界観の醸成に一役買ってたものが、一瞬でただの廃材になるわけです。
(その儚さとそこにかける情熱が尊い、という考え方もできるけど)
さらに舞台の興行に欠かせないのが、劇場さんの存在です。
今回の劇場の利用料が
5日間 450,000円
6日間 470,000円
7日間 490,000円
利用料だけに関していえば、一日の限界費用プラス20,000円で公演が打てます。
日にマチネ・ソワレの2公演なら、1公演辺り10,000円。
チケット代が4,000円だから3人のお客さんが来てくれれば良く、
毎回来てくださってた方はそのくらいいたと思います。
つまり、やるだけプラス。
もちろん、スタッフの人件費や電気代、機材費、他、かかる経費は色々あるし、特に役者さんに関しては1ステギャラとどのくらい人を呼べるのかの兼ね合いが発生し、損益分岐点を割り出すのはよりシビアになるのですが。
(だからと言って必要ない役を書いて役者の数を増やすのはイヤ。ビジネス優先でクリエイティブを曲げるなら、そもそもこんな企画やらない)
そんなこんなでイヤでもビジネスのことを考えざるを得ない機会だったわけですが。
世の中は「限界費用ゼロ社会」なんて言葉が飛び交うようになりました。
Netflixなどに代表されるサブスクリプションモデルや、メルカリなどに代表されるシェアリングエコノミーなど、一度作っちまえば永続的にお金を生み出せる仕組みは、この限界費用を安く抑えるシステムです。
舞台がこの考え方を活かそうと思ったら、長く公演をすることが一番だと思いました。
実は、相性が悪くもないかな、と思ったのは、お芝居はナマモノだから毎回「微妙に変化すること」と、毎回「生の役者に会って話せること」が武器になり得ると感じたから。
お芝居の変化というのは不確実性が高く、ともすれば安定して高いクォリティを担保できないというマイナス点もあるのですが、一方で、ミスすることや成長していくことに面白みを見出せる人もいるわけで。
むしろ作品や役者の「ファン」に多分に支えられている舞台というのは、その変化がプラスに捉えられるのでは、と。
逆にその不確実性を確実に演出するには、恣意的に変化をつけるというのが理想なんだと思いました。
今回で言えば、サオリのエクササイズは毎回微妙に変えてましたし、タツオのプレゼンは稽古から同じものを見たことがありませんw
日替わりでゲストを呼んだのも、毎回足を運んでくださる方に少しでも変化を見てもらいたかったから。(単純にプロデューサーとボクの悪ふざけでもあるけどw)
役者をあと10人くらい雇って、3日おきくらいに一人ずつ交代していき、初日と千秋楽でキャストが丸っきり変わっててもイイかもしれないw
これをサブスクだの言うよりずっと前からやってる「おニャン子」や「モー娘。」はやっぱすごいよね~
リーンスタートアップよろしく「走りながら創る」をもっと舞台に持ち込めたら面白いんだろうし、それができなかったのが悔しいところです。
(不確定要素があると関係各位に怒られるし、ボクも不安になるんだけどw)
次の機会があったら、もっと新しいことにチャレンジしたいなぁ。
ただ、舞台のことなんやかんや言いましたが、ボクは結構これからのビジネスとして面白いし価値あるものだと思ってるんです。
巷では中身の人間がわからないV-tuberだとか、芝居はできないけど再生数だけは稼げるYoutuberだとか、お手軽ダンスのtik-tokerだとかが増えてます。それ自体は否定しないし、むしろこれからもっと増えていくし、なんなら楽しい1億総クリエイター時代だと思ってます。
その中で「プロの生身の役者が目の前で芝居をする」ことは一定の価値があることだと思っています。そう信じたい。
だから、役者のみんなには大変な長台詞やダンス要素なんかも入れました。
って思ってもらいたくて。
だから、そう思われなかったなら、それはつくったボクの負けです。
これはAIをテーマにした作品でありながら、これからの時代へ向けたボクなりの宣戦布告でもあったわけです。
みなさんの目にはどう映ったでしょうか…?
と、まぁ、長々と今回の舞台『ベター半分』のこと書いてきましたが。
これでたぶん日誌的なものは終わりだと思います。
最後に宣伝しとくと…
発売日は…
すいません…
なので、
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さよならは言わないよ。
ありがとう。
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