最近富裕層のポジションを発信する人と格差を問題と考える人たちが対立するのをよく目にします。
でも個人的にはどちらの主張にも賛同できなくてもう少し深く問題を考えるべきなのではと感じています。
3つのものが相互作用を及ぼしあうと予測不能なカオスが生まれることはかなり昔から知られていて三体問題と言います。
それはたくさんのものが影響し合う経済など、ネットワーク上で起きることは予測が難しいという意味でもあります。そのためか多くの人は目に見えている社会秩序以外の秩序の存在をなかなか信じられません。なので現状に固執してしまいがちです。それは古い組織が変われない理由でもあります。
しかし生命は変化し続けるのに持続可能です。絶えず新しいたんぱく質を生産し新陳代謝するからです。膨大な種類のたんぱく質の無限のパターンのエラー一つ一つに対応することは実現できないので、遺伝子からたんぱく質を機械的なコピーでガーっと作って更新してしまう方が効率的なのでしょう。そして再生産するたんぱく質の配分を環境に合わせて変化させリアルタイムに対応する方法を取っていると思われます。
今の社会も未来に投資することで環境変化に対応する余地を生み出し続けていて生命に似ています。しかし新陳代謝が活発で発展中の部分でなければなかなか変われません。だから相対的に非効率を顕在化して新陳代謝する圧力が生命と同じように重要です。たとえば古い経済のまま発展し世界が20世紀的な会社で埋め尽くされたら地球は大変なことになるでしょう。
そういう意味で悪者にされがちな投資や資本主義の恩恵について私たちは考えるべきだと思いました。しかし例えば格差を原因とするような今起こっている痛みに対する応急処置は現実的には必要だと思います。しかし長い目で考えて根本的な問題解決を考えることが今は必要だと思います。農村からの出稼ぎなどが変化に対応するための原動力になっていた時代とは違うからです。
そのためには資本主義の発展の力にどんな意味があるか、問題は多いけどもう一度冷静に観察する必要があると思っています。
しかし、そのような階層構造が自然の摂理だという主張や、痛みの声を一蹴することを言う人、それになんとなく便乗して提灯を持つ人たちには異論があります。
ネットワークではどこかにストレスやエネルギーの偏りがあればどこかに逃げてどこかから漏れ出そうとします。物事と物事の間のすべてを知ることは不可能であり無数の穴の全てを監視しふさぐことはできません。
そのようなトップダウンの抑圧が経済の暴走によるモラルの破綻や戦争という別の発散に向かわせるのはかつての社会主義や(実際に壁の横から人々が逃げ始めて崩壊)ファシズム国家の暴走が示唆しています。そのような国家が単純な科学観でトップダウンに走ったのも、そのような科学観を信奉する人が人工知能にすべてを期待するのも、富裕層の納税に依存したベーシックインカムに期待するのも(そんな人間甘くないって前から言ってたけど案の定それを言ってた人は手のひらを返した)同じナイーブさを感じます。
しかし、現在の資本主義も寡占化が進行すると同じようなトップダウンの構造になり、かつて崩壊したそれらの国のように硬直します。
経済を動的なシステムとして見た場合、投資の社会的な機能は、未来を修正するための”フィードバック機構”でもあると思います。今の世界には改善するべき課題が山積みです。それが機能してはじめて社会の長期的な合意や信用が持続可能になると思います。
しかしそのようなフィードバックのリスクテイクは一部の人が集中的に負担しだから恩恵も一部の人々が独占します。(個人的にはリスクテイクとインセンティブを一体化してボトムアップと経済のパワーを両立するものが現実的には必要だと考えています)
そのように経済が寡占化して階層化が進むと全体からのボトムアップが無くなりそのようなナチスやソ連とそれほど変わらない構造になります。
その危険性が忘れられつつあるのは結構まずいと思っています。
少数の人々のポジションのニーズは社会全体の課題と相反しやすいので。資本主義は私有の競争だし有利なポジションを手放すことはとても難しいことだと思います。最初に書いた組織が変わることの難しさと同じ理由です。
つまり、今の経済はブロックチェーンも含めてボトムアップに脆弱性を抱えた不完全なフィードバック機構であり、それに代わる未来を作る仕組みとは何かという議論を深めることが実装と同時に必要ではと考えています。
また、それに関して一緒に取り組んでくれる仲間を求めているのでもし興味があれば声をかけてみてください。