Web3プロジェクトを長期的に成長させるためのシステム設計とOcean Protocolへの応用
Introduction
あなたがWeb3プロジェクトの創設者で、その技術を使ったアプリケーション開発をしているチームがエコシステム内に複数存在するとします。
そこで、あなたは問いかけます。
どうすればエコシステムを成長させ、真に自立したものにすることができるのか?
既存のWeb3助成金プログラムには課題があります。それが本当に長期的な持続可能性につながるのか?もし助成金がブラックホールになってしまったら?あるいは、助成金が終了した場合のそのエコシステムは生き残れるのか?
このことは、全てのWeb3プロジェクトにとって真の関心事であるべきだと思います。もしそうでなければ、素晴らしいプロジェクトもその姿を持続させることができずに忘却の彼方に消えてしうかもしれません。大規模な資金提供によって問題がぼんやりとしてしまいがちですが、この点を曖昧にすることは後々大きな問題を生むことになるでしょう。
私は必ず最適な方法があると信じています。何十年、何世紀にもわたって生き残ってきた歴史上の組織を注意深く観察することで、インスピレーションを得ることができます。つまり、成功している企業や国家です。このエッセイでは、企業と国家の両方について、コアとなる成長/持続可能性のループと、株式とフィアットの役割について説明していきます。
このWeb3持続可能性ループは実際にプロジェクトで使用することができるものでなくてはいけません:
英国議会は何世紀にもわたる英国の歴史を象徴しています [Image: CC-BY-SA-3.0]
本投稿は以下のように構成されてます:
まず、企業のビジネスモデル(1)について、Web1とWeb2に焦点を当てて、収益を動力源とする企業のビジネスモデルを説明します。 ただし、それだけでは全体像がつかめないので、企業の株式の役割も含めて説明していきます(2)。
次に、税金を源泉とした国家レベルの持続可能性/成長モデル(3)について説明します。更に明確にするために、フィアットの増刷の役割を説明します(4)。
次に、取引手数料を源泉とするWeb3の持続可能性/成長モデル(5)について説明します。完全なWeb3の持続可能性ループを作るために、トークン生成に関しても説明していきます(6)。
最後に、Web3持続可能性ループ(7)のOcean Protocolプロジェクトへの応用について述べていきます。
全てのビジネスには、自分自身を維持していく手段が必要です。そうでなければ、死に絶えるからです。進化を止めれば容赦なく淘汰されます。
企業において持続可能性とは、一般的に人々が製品やサービスの提供を受けるためにあなたへ金銭を支払い、企業はそれをコスト(給与、オフィスなど)の支払いに使用していくことを意味します。収入がコストを上回ることが自立を表し、これが持続可能性の最初のマイルストーンとなります。収益性があれば、現金はもはや存在の脅威ではなくなり、ビジネスの幅も広がります。しかし、スタートアップは持続性だけではなく、余った収益を成長に還元することでさらなる成長を目指します。それは正のフィードバック・ループであり雪だるま方式と呼ぶことができるでしょう。
Web1やWeb2の企業は、多くのビジネスモデルを模索してきており、成功した企業は成功するべくしてしたビジネスモデルを有しています。
1990年代半ばにウェブが商業化され始めたとき、誰もがこの新たな産物による正しいビジネスモデルを探し求めました。ウェブはもともとコンテンツ、つまり巨大なハイパーリンクされたドキュメントのことを表すものでした。多くの人々がオフラインのコンテンツをコピーしてオンラインの世界に貼り付けるというビジネスモデルを試みました。あるいは純粋なオンラインのコンテンツです。これらはほとんどが失敗しました。
いくつかのWeb1企業は、ウェブネイティブのビジネスモデルを試してみました: Webページを、物を買ったり、他の人と交流するためのアプリケーションとして扱います。これらの企業の中には、EbayやCraigslistのように非常にうまくいったものもありました。
また、Amazonの有名なループ(下の写真)は非常にうまくいっています。より良いカスタマーエクスペリエンスは、より多くのトラフィックを生み、より多くの売り手を生み、より良い選択を生み、さらなるカスタマーエクスペリエンスを生みます。これが真の成長です。そして、この成長は多くの利点を提供します:成長は、さらにカスタマーエクスペリエンスを向上させ、価格を下げ、コスト構造自体を下げることができます。このループを適切に扱い、結果を時間をかけて分析することでAmazonは世界で最も価値のある企業の一つになっているのです。
The Amazon loop. Source: Amazon.com
Web2世代になるとモバイル、ソーシャルメディア、クラウドが登場しました。ここにきて持続可能なビジネスを成功に導いたモデルが数多く存在するようになります。ここではその一例を紹介しましょう。
有料のサブスクリプション:ソフトウェア(SalesForce、Meetup、MailChimp)、コンテンツ(New York Times)など
取引手数料:プラットフォームを利用することで、買い手と売り手を接続するための手数料を請求する仲介システムです。支払い(PayPal、Stripe)、トランジット(Uber、Lime)、宿泊施設(Airbnb)、電子商取引(サードパーティとAmazonの関係性)など
アフィリエイトプログラム:ここでは、紹介者は最終的な販売のカットを取得します。これには、旅行(Kayak)やeコマース(Amazon Associates)など
広告:広告の仲介は最大のインターネットビジネスです。広告は至る所に存在し、検索プラットフォーム(Google AdWords)、サードパーティのウェブページ(Google AdSense)、ソーシャルメディア(Facebook、Twitter)、アプリ(大半の無料モバイルアプリ)、コンテンツ(YouTube)に存在します。誰しも広告は好きではないかもしれませんが、Web上での持続可能なビジネスを実現する大事な要素です。
全てのビジネスは体制の維持と成長のためにビジネスモデルを必要とします。次の図は維持・成長を促すように設計されているビジネスマシンを説明するものです。
労働者を中心としたループ: 会社のプロダクトやサービスを市場に投入することにより、会社の収入を成長させるために実際に仕事をするのは会社の従業員の役割です。会社の経営陣は、会社をさらに成長させるために、より多くのリソース(例えば、より多くの雇用)を得るために会社の収益を割り当てます(キュレーション)。これは一つのループとなっており、成長の為にに投入された収益は、適切な再分配がなされ、より多くの収益を生みます。
収益を重視した企業のビジネスモデルとしては、いかに会社をキックスタートさせ、競合相手に打ち勝つためにいかに早く成長させるかが課題となります。
前節では、アマゾンのループモデルについて説明しました。しかし、これは非常に簡略化されたものであり、実際にはアマゾンのストーリーや他のビジネスについての不完全な図です。収入だけでは、重要な場面での資金繰りは解決しません:
アマゾンはそもそも事業を軌道に乗せるために資金が必要でした。初期の収益を獲得する為と、最初のプロダクトを作る従業員を雇うための資金を必要としていました。
さらに、アマゾンは成長を続け、動きの速い競合他社に追い抜かれる危険性があったために積極的な成長戦略を遂げる為の資金が必要でした。
そこでアマゾンは何をしたのでしょうか?アマゾンは自社株を発行し、その株式を投資家に売却して現金を手に入れました。アマゾンは、上記の2つのターニングポイントに対応するために株式を発行しました。第一に、ジェフ・ベゾスは事業開始のために友人や家族に株を売却し、第二に、ビジネスが軌道に乗り始めた段階で、より早い成長を促すためにVCから資金を調達しました。
株式の発行は、ビジネスにとって超強力な力となります。効果的に配分することで、将来的にはさらに価値が上がるという前提で、未来から現在に資本を引っ張ってくることができるのです。個人ではできないし、家族にもできないし、都市にもできません。企業だけがそれをできます。
株式の発行は、ビジネスのキックスタートや成長の促進に役立ちますが、その他にもう一つの重要な用途があります:株式は、痛みに苦しむビジネスを救うことができるのです。ビジネスが不調に陥った場合、会社は(潜在的に低評価にはなるものの)より多くの株式を発行し、生き残り、その後の機会に日の目を見る為の手段として株式を売却することができます。スタートアップの世界では、これは “ダウンラウンド ”でありますが、会社が生きるか死ぬかの瀬戸際では重要な手段となります。
株式は、破産手続きを介して大企業を救済するためのツールでもあります。例えば、ゼネラルモーターズ(GM)は2008年の金融危機の間に倒産しました。この時、GMは新しい投資家に多くの株式を発行しなければなりませんでした。古い投資家の多くはその価値の大半を失いましたが、GMは事業を継続し、従業員に給料を払い車を作り続けることができました。
要するに、株式発行は強力なツールなのです。下図は、会社の全体像を示すように修正されたビジネスマシンを表したものです。これは、収益に加えて株式の役割を考慮して修正が加えられています。会社は株式を発行し販売する(左)。企業は収益と株式価値を成長させるために取り組む(中段右)。会社の製品・サービスは、その利用者が増えれば株式価値が増加するるように設計されている(右上)。株式は、株主に配当や自社株買いなどによる報酬下限を与えることができるオプション性も保持している(左下)。
このメカニズムにより、収益が伸び悩んでいても、長期的には投資家を満足させることが可能になります。
収益だけでなく、株式をツールとして活用する企業のビジネスモデル
国民経済のダイナミクスに目を向けてみましょう。国家は税金として収入を得ています。国家及び国民が繁栄し、商業がより盛んになるように、法律やインフラ、国防などのエコシステムを構築・成長させるために、その収入を利用します。国民と企業の幸福度が上がるにつれて税収も上がり、国家はより成功します。GDPは商業の総量を測る物差しとなります。このようにしてループが継続していきます。
下画では、「マシン」の枠組みを使用して説明しています。中央では、公務員と市民が仕事をしています。この仕事は、個人や企業が稼ぐ収入の量に反映されます(右)。GDPはこの収入の合計であり、国家のKPIとして機能します[1]。その収入が課税され、国の収入となります(右下)。国は、この収入をどう配分するかを選択(キュレーション)して、さらなる改善に向けてループを回していきます。
税収入を中心とした国家レベルのサステナビリティ/成長モデルにおいては緊急時にいかにして十分な資金を確保するかが課題となります。
この図は、唯一の資金源が税収であることを前提としています。これは政府が一般的に予算編成を行う方法でもあります。例を挙げると、予算編成後にXのための法案が臨時に提案された場合に「Xを実行するための税収をどこから調達するのか」という課題が必然的に出てきます。この場合においてはこれは不完全な画像です。通貨の増刷について説明する必要があります。
次のセクションで詳しく説明します。
通貨は、交換手段及び勘定科目の単位として機能することで、経済地域内の商取引の摩擦を大幅に軽減します。政府、銀行、民間機関はすべて通貨を発行することが可能ではありますが、20世紀からは通貨の発行者としては政府の優位性が確固たるものとなっています。
時に通貨の発行は、特権とリスクをもたらします。経済的に必要な時には、政府は経済に現金を注入することで消費経済を押し上げることを期待して「より多くのお金を刷る」力を持っています。経済が回復した後に均衡を回復させるために、政府は、過剰印刷されたお金を徐々に取り除くことが一般的です。
「より多くのお金を刷る」という行為にはリスクが伴います。お金を刷り過ぎれば需要が供給を上回り、余剰金がどこかに流れる必要が生じ、物価インフレを引き起こす可能性があります。均衡を回復させるための対策を講じなければインフレは制御不能に陥り、お金が本質的に無価値になるハイパーインフレに陥る可能性があります。刷られたお金がうまく配分されていないと、お金が貯め込まれ、その結果、最も弱い立場にある低・中所得層の労働者の経済的不平等、社会不安、経済的混乱につながる可能性が生じます。
適切な判断で実行する通貨の増刷は、経済成長に拍車をかけ、市民の幸福度を向上させるために国家だけが有する伝家の宝刀とも言うべきツールなのです。
下図は、マサチューセッツ工科大学(MIT)のジェイ・フォレスター教授の国民経済モデルに対するシステムアプローチの精神に基づいて設計された、国民経済のための「マシン」を要約したものです。これは、前述した税による収入のループから始まり、この図に修正を加えたものです。政府は通貨を印刷し(左)、それが税と共に所得として扱われ、政府によって管理・使用されます。国家は、GDP(と課税ベース)だけでなく、通貨の価値も成長させるために"work"を実行します。
税収に加えて通貨に増刷をツールとして含めた国家レベルのサステナビリティ/成長モデル
この記事は次の疑問から始まりました。
どうやって生態系を成長させ、真の意味での自立を達成させるのか?
それが最終目標です。Web3プロジェクトは実際にどのようにそれを行っていくべきなのでしょうか?ここでは、それをモデル化するためにトークンエンジニアリングシステムのアプローチを取ります。下図は、一般的なWeb3プロジェクトの例を示しています。創業者がトークンを生成し(左)、トークンを販売して初期資金を得て(左中)、製品を構築し(中)、出荷し(右中)、初期のエコシステム(右)に力の源泉を供給します。
ここでの目的はトークン価値を成長させることです。そのためには、トークンの利用率が上がるにつれて価値が上がるようなダイナミクスを設計する必要があります。チームは、製品の改善に努めながら、時間の経過とともに、より多くのトークンを資金獲得のために売却することでプロジェクトを維持していきます。
ループのないWeb3プロジェクトでの課題は、トークン供給が減少していくこと及び長期的な持続性がないことです。
この場合の課題は、チームが資金調達するために、継続的にトークン供給を受けなければならないということです。特に、プロジェクトが製品と市場の適合性を達成することに向けて軌道に乗らなければならない場合、その供給量は減少し続けていきます。それが進行していくたびに、プロジェクトを成功させようとする創業チームのインセンティブは低下していきます。供給が限界まで減少した場合には、チームは自社株や新たなトークンを売却しなければならなくなりインセンティブメカニズムに"ずれ"が生じてしまうリスクがあります。
もっと良い方法はないだろうか?下図は、いくつかのWeb3プロジェクトが行っている改善策を示したものです。企業や国からヒントを得て、収益生成メカニズムを導入しています(右下)。収入は、その後、調整された方法で、ワーカーにループバックされます(左中)。プロジェクトは、成長の可能性とプロジェクトのミッションとの整合性に基づいて選択されます。資金は、設立チームと他のプロジェクトチームに循環することができます。彼らは皆、トークン価値とネットワーク収益を成長させるために*ワーク*します。そのようにして、このループは続いていきます。
収益に焦点を当てたWeb3の持続性/成長モデルでの課題は、チームによる貢献が持続するように、十分な収益を確保することです。
収益源の創出は、Web1やWeb2のビジネスのアイデアを参考にすることができますが、抽出率は低くなります。重要なことは、トークンが利用率の上昇に応じて価値が上昇するように設計されていることです。
しかし、1つの大きな問題があります:収益が少なすぎて、収益化が遅すぎることです。この点を詳しく説明していきます。
料金が高すぎると、フォークされてより低料金で再配備されるか、採用されないかのどちらかになります。
料金が低すぎる場合(利用率が十分でない場合)では、収益量が低すぎます。
どちらにしても、チームはプロジェクトを成長させ続けるのに十分な資金を持続できません。彼らは家族を養えなくなるレベルまで、辛抱し、あるいは勇敢に活動を続けるかもしれません。そのうち何人かは乗り切るかもしれませんが、大半のチームメンバーは辞めざるを得ないでしょう。そして、ほとんどのチームがプロジェクトの中止を余儀なくされ、その時点でプロジェクト自体忘れ去られていくことになるでしょう。
「収益が少なすぎて、収益化が遅すぎる」という課題を克服することができる方法があります。それは、プロジェクトの開始時に全てのトークンを分配するのではなく、トークンの大部分をプロジェクトに付加価値を与えているワーカーに長期間にわたり分配していくという方法です。これにより、チームはプロダクト・マーケット・フィット(PMF)に向けて反復作業を行うための長いランウェイを得ることができ、PMF達成後は成長を促進するための資金をより多く確保することができます。
私はこれをWeb3のサステナビリティループと呼んでいます。下図はこれを説明しるものです。これは、成功している国やビジネスのモデルに類似しています。その中心には、エコシステムの「スノーボール効果」成長のために設計されたループが存在します。ワーカー(中央)は、Web3プロジェクトのエコシステム(右)を成長させるために仕事をしています。アプリやサービスは、Web3プロジェクトのツールを使って収益を生み出します。
その収益の非抽出的な部分は、Web3コミュニティへのネットワーク収益としてループバックされます(矢印は右から左にループします):トークンは購入及びバーン(左下)され、コミュニティによってキュレーションされたワーカーに戻ります(中央左)。そして 成長を促進し、初期段階での十分な資金調達を確保するために、ネットワーク報酬(左)はワーカーにも供給されます。
このループを言葉にすると、次のようになります:
プロジェクトはコミュニティによって提案され、キュレーションされる
プロジェクトは、ネットワーク収益とネットワーク報酬により資金調達をおこなう
プロジェクトが成果を上げて価値を高めると、ネットワーク収入が増え、トークンも増え、コミュニティへの資金提供も増加します
最後のステップでは、ポジティブフィードバックループ(スノーボール効果)が発生し、時間の経過とともに、プロジェクトはより多くの資金を得られるようになります。これは、より多くの制約を意味します:
プロジェクトは、エコシステムに十分な価値を付加しなければならない
エコシステムの付加価値は、トークン価格に反映される必要がある
“ 十分な価値 ”について説明していきましょう。あるプロジェクトに資金が提供されると、そのプロジェクトを支える人たちは、自分の生活を維持しながらプロジェクトを完成させるために、徐々にトークンを売却していく必要があります。これにより、トークン価格にネガティブ圧力がかかります。したがって、プロジェクトからエコシステムに付加される価値は、エコシステムが創出した価値を超えなければなりません。
しかし、プロジェクトが創出する付加価値を事前に知ることは困難です。失敗するものもあれば、成功して10倍の価値をもたらすものもあります。そのなかでプロジェクトの選択基準となる指標が必要となります。
プロジェクトのROI
プロジェクトの提案書には、ROIに関するモデルを含める必要があります。エコシステムが成長するためには、平均ROIが1.0以上でなければなりません。
ROIはリスクの低いプロジェクトでは低く、リスクの高いプロジェクトでは高くなるものであり、これはVCの思考プロセスと似ています。
エコシステムの観点から、プロジェクトがエコシステム外部から資金を得た場合、それは付加価値としてカウントされます。これにより、プロジェクトはマッチング投資や二次資金調達などの外部からの資金調達を求めるインセンティブが生じます。
価値は、コア開発者によって構築されているコア製品が、アプリ開発者によって作成されたアプリを保有していて、ユーザーによって有用性が見いだされた場合にのみ、エコシステムに付加されるものです(go-to-marketの仕事)。コアプロダクト→Dapps→発見・利用→「実際の付加価値」とういう連鎖になります。
第二の選択基準:それは、Web3プロジェクトのミッションとバリューの促進に役立つものでなければなりません(少なくともそれらに反した動きにならないようにする必要がある)。また、Web3におけるポイントは、全ての人々の機会を平等にすることであり、この部分がWeb2プロジェクトと違いを生む部分となります。
バリューの創出には長期的思考が重要となります。ここでは、時間で重み付けされた投票力を利用したアプローチをいくつか紹介します。
Conviction Votingでは、投票はステーク量とステーク時間に応じて増加します。Arweave Profit Sharing Communitiesを例に挙げると、投票は投票者が保有するトークン量に、ロック時間を乗じて重み付けされます。Yearn.financeでは、重みはx/365で計算され、xはロックされた日数です。
多くの優れたWeb3プロジェクトは、上記のダイナミクスのいくつかを実装しています。
Ocean Protocolは、データへのアクセス機会を平等にすることで、AIの恩恵を普及させることを目的としたWeb3プロジェクトです。Oceanでは、Web3のサステナビリティループのパターンを踏襲したシステム設計を行っています。
下図がそれを示しています。これは、データエコシステムに継続的に価値を付加するチーム(ワーカー)に行く資金を介して、何十年にもわたって持続可能性を達成するよう設計されています。Oceanの場合、Web3のエコシステム(右)は、Oceanのツールを利用したデータマーケットプレイスやデータカストディアンなどのデータエコシステムを表します。
ネットワーク収益に加え、何十年にもわたって$OCEANの支出を活用する「アウターラッパー」を含むOcean Protocolのサステナビリティ/成長モデル
Ocean DAO(左中)は、ネットワーク収益とネットワーク報酬による資金を管理します。ワーカーは、Oceanのコアソフトウェアの改善、Oceanを使ったアプリケーションの構築、認知度の向上、データ供給の拡大などのために資金を獲得できます。プロジェクトの選定基準としては、(1)期待されるROIが1.0以上であること、(2)Oceanのミッションとバリューに沿ったものであること(長期的な思考を含む)です。私たちは、データ供給の成長を促進するためのデータ供給マイニングプログラムを想定しています。
資金はネットワーク収益(右下)とネットワーク報酬(左)から得ます。長期的には、収益の大部分はネットワーク収益からのものになるでしょう。また、成長のキックスタートをサポートするために、OCEANのトークン供給全体の51%がネットワーク報酬として割り当てられます。
トークンデザイン:Oceanトークンは、Oceanの使用量が増えれば増えるほど、$OCEANが増加するように設計されています。Oceanツールの(データエコシステムでの)利用が増えれば、OCEANがより多くステークされ、需要が増加し、$OCEANが増加するというループです。また、利用が増えればネットワーク収入も増え、それがバーンやOcean DAOに流れます。OCEANをバーンすることで供給が減り、さらに$OCEANを成長させます。資金はOcean DAOを経由して、Oceanツールの使用量を増加させるための取り組みをするワーカーに送られます。このループが繰り返されます。(OCEAN-トークン自体、$OCEAN-トークン価値)
検証:私たちは、このデザインを検証し、独立開発された2つのコンピュータシミュレーションの助けを借りて、パラメータを調整しました。1つのモデルはスプレッドシートを使用しています。もう1つのモデルは、TokenSPICE [2]と呼ばれるこのプロジェクトのためにPythonでスクラッチから書かれたエージェントベースのシミュレータを使用しています。主な結果は、コンピュータモデルの理論が整合性を示していることが答えとなります。
これは、Ocean ProtocolとOCEANの将来に良い兆しを示すものです。
この記事では、Web3のサステナビリティ・ループについて説明しました。これは、株式/株式発行から収益を受け取る、ビジネス/国家の両方のモデルからインスピレーションを得たものです。
ループの核となるアイデアは、ネットワーク収益とネットワーク報酬を成長のために使用し、ワーカー(仕事)へのインセンティブとして活用することです。ネットワーク報酬は、プロジェクトのキックスタートと確実な資金調達を達成するのに役立ちます。ネットワーク収益は、Web3プロジェクトの規模拡大に成功すれば、成長をさらに後押しするのために役立つものとなります。
この記事では、Ocean Protocolへのループの応用と、その設計の検証について説明しました。
以下の方々に感謝します: Bruce Pon, Julien Thevenard, Simon de la Rouviere, Michael Zargham。それぞれ、この記事や関連する取り組みにつながる考察・思考に多大な貢献をしてくれました。レビューを作成してくれたSarah VallonとMonica Botezにも感謝します。
そして、この記事に向けて協力してくれたOcean Protocolの優秀な同僚にも感謝しています。
[1]私はGDPが素晴らしいKPIだと主張しているのではなく、一般的によく使われているKPIだと主張しているだけです。ここにさらなる議論があります。
[2]TokenSPICEをいつかオープンソース化する予定です。より汎用的でより充実した機能を持つエージェントベースのシミュレーターとしては、 cadCAD をお勧めします。
Web3サステナビリティ・ループのアイデアは、2019年の後半から構想を重ね始めました。私は2020年1月から3月にかけて、TokenSPICEでそれらを明示的にモデル化しています。
この作品の仕上げをしているなかで、Ali Yahya氏が2020年5月のNetwork Flywheelと関連動画を説明するTweet投稿してくれました。それは、私の考察と多くの類似点がり非常に感銘を受けました:
第一に、どちらも “何がトークンの価値を動かすのか?”という長年の疑問から始まっている
第二に、(制御システムとしての)ポジティブフィードバック・ループを使って、トークン価値のダイナミクスをモデル化しようとしている点
一方で、これらのモデルにはいくつかの大きな違いも存在し、それぞれのモデルをユニークなものにしています。一つの違いは、何が実際にトークン価値を動かしているのかという仮説についてです。
私が提唱するWeb3のサステナビリティ・ループでは、(a)トークンの価値がボリュームの増加に伴って上昇するようなトークンのダイナミクス(右上)と、(b)ネットワーク収益を利用してワークを行い、ボリュームを増加させることに焦点を当てています。このモデルは、使用量と価値を直接リンクさせ、ネット現在価値のような評価アプローチにも対応しています
Network Flywheelでは、トークン価値には2つのインプットがあるとしています。(a) 「プロトコルを構築し、初期のトークン価値をブートストラップする」ために創業者に「資金を提供する」投資家 [ref][およびref] と、(b)ビジョン+プロトコルとして、ループが進むにつれて、「トークン価値に対するビジョンが強ければ強いほど、より広範な市場での価値が高まる」[ref]というものです。このモデルでは、利用状況とトークン価値との間に強い結びつきはなく、投資家のセンチメントに依存しています。
2つ目の大きな違いは「持続可能性自体」への注目度です。
Web3のサステナビリティ・ループは、タイトルに「サステナビリティ」を掲げているとおり、これを最重要視しています。何十年にもわたって持続的に維持され、成長できるWeb3プロジェクトをどのように作るかということに焦点を当てているためです。ループは、長期的にプロジェクトを育てるチームに資金を提供するためにトークン生成プロセスを活用してこれを解決します。
Network Flywheelは、「ビジネスモデル」を強調しており(ツイートや動画のタイトルで)、多面的な市場(一般的なビジネスモデル)を指し示す形で間接的にサステナビリティに焦点を当てていますが、直接的には焦点を当てているものではありません。良いビジネスは時間の経過とともに自立していくものであり、良いビジネスがあればサステナビリティが生じる。
このようにループとFlywheelの違いは、その強調している点にあります。
全体的には、Network Flywheelはポジティブな貢献を前提にしたものだと思います。それはそれで非常に重要な考察であり、相補的な意味でWeb3 サステナビリティ・ループが、時代を超えて持続すていくシステムの構築を目指すWeb3ビルダーにとって有用なツールとなることを期待します。
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