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ニジェールデルタの闇をブロックチェーンは照らせるか?

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  • MALIS
  • 2018/07/18 22:00

こんにちは、今日も "ALIS読者の石油オタク化計画" を一人着々と進めるMALISことマリです。


前回記事↓
エネルギーとブロックチェーン、連載開始します!


好きなこと書くのは、楽しいですね。



<おさらい>

前回の記事で書いた、

「エネルギーの上流、中流、下流とは?」

これ分かりずらいですよね。

皆さんのためにMALIS画伯がお絵かきをしようと描いてみたら、自分で自分の字が読めませんでした。

なので、普通にスライド作りましたよ↓


Content image


ポイントはさりげなくイラストを入れたとこ。

うん、わかりやすいですね!


じゃなくて、本当のポイントは青と黄色に分けたとこ。

エネルギー業界と電力業界って時々ごちゃっとされがちなんですが、全然違います。エネルギーというと、この絵全体をさすか、青色のエネルギー資源を採ってきて売るまでを指すんですね。

電力業界は黄色いとこだけ。



さて、おさらいが終わったところで、
今日も引き続き"石油"のお話ですよ。
(青色の上流の部分ね)


1. ニジェールデルタの闇


石油の"闇市場"という言葉を前回使いました。


あなたが使う石油製品の半分は闇市場からきたものだ、と。

そして、ブロックチェーンにより取引の透明性を高めることがこの闇市場の解決策になる可能性はある、が、そんな簡単な話でもない、と。


今回は、そんな石油の闇がよくわかる例として、アフリカのナイジェリアという国の"ニジェールデルタ"を紹介します。


ニジェールデルタというのは、ナイジェリアの南のほうにあるエリア。


事の始まりは、60年ほど前に石油資源が発見されたところから。

もちろん、現地の方々は大喜び。

漁業に頼って貧しい生活をしていたのですが、石油のおかげで貧困から抜け出せるかもしれないと夢がふくらみました。そりゃ自分の住んでるとこから石油出てきたら誰しもそう思いますよね。


残念ながら、その夢は実現されませんでした。


川、海は石油で汚染され

地元にはお金が落ちず、

その不満から紛争が勃発


(このエリアはもともと植民地支配の複雑さもあり、経緯をさかのぼると1か月は記事を書けるくらいの話なのですが、今回は割愛します)


こちらの記事を見てみましょう。


この記事によると、現地の河川は汚染され、

井戸水はWHO基準の900倍以上の濃度のベンゼンが含まれていたとのこと。


更に、

"人権活動家らは、石油汚染の元凶として、1993年に同国から撤退するまでオゴニランドで操業していたナイジェリア史上最大の石油会社、英・オランダ系アングロ・ダッチ・シェル(現ロイヤル・ダッチ・シェル、Royal Dutch Shell)を強く非難している。"

と石油会社の責任が追及されています。


その後、ロイヤル・ダッチ・シェルは現地の方々から訴えられることになり、多額の賠償金を支払い、除染作業コストも支払うことになります。


2. 本当に悪いのはシェルだけか?

さて、ここまで読んで

「なんてシェルは悪い会社なんだ!」

と思いませんでしたか?


でも、そんな簡単な問題ではないのです。


こちらの映像をご覧ください↓


英語なので解説すると、

現地の人が石油採掘所から油を盗み精製している → 石油闇市場で売ってる → 軍が来て闇市場のオイルに穴をあけて全部川に流しちゃう(!?) → 覆面の人たちが操業止めるために「パイプライン爆破してるんだぜ」って言ってる

、、、という映像です。


現地の方がそもそも石油採掘上のパイプに穴をあけて石油を盗み、燃やし、結果として川に石油が流れ込んでいるんですね。


では、誰が悪いのでしょうか?


誰といえるほど単純な話ではありません。

もともと、この油田の利益は全く地元に落ちず、全て連邦政府と石油会社のポケットに入っていました。現在は改善されたとはいえ20%程度しか地方政府に入りません。更に、地方政府がそのお金を地元民に還元する保証など、どこにもないのです。


結果として、盗みを止めることはできず、さらに川は汚染され、本来の生業だった漁業は続けられない、やはり石油を盗むしかない、という悪循環です。


3. ブロックチェーンで問題は解決できるか?

では、この問題解決にブロックチェーンは貢献できるのでしょうか?


操業権を持つ石油会社から出荷された石油であることを証明し、そうでないと受け取れない仕組みにすればいいのではないか?

ニジェールデルタの自然資源に裏付けられたトークンを発行し、環境向上へのインセンティブを与えればいいのではないか?


アイデアはいろいろと出てくると思います。

実際に、石油の産油元保証のようなシステムをブロックチェーンで作る動きは出てきています

ただ、今回ご紹介したニジェールデルタの問題の根底にあるのは、貧困であり、政府の腐敗であり、そして長年の紛争によりもつれた人々の感情です。


Content image
汚染された環境を取り戻すには30年以上必要と言われている(BBC NEWS, 2013)


そしてこの一帯が抱える問題を解決するために必要なのは、ブロックチェーン技術が提供するサービスそのものではなく解決に向けたエコシステムの構築です。


私はブロックチェーンの力を信じています。

しかし同時に、ブロックチェーンは問題解決に向けたエコシステムのピースの1つにすぎないことを忘れてはいけないのだと思うのです。その小さなピースが、今までにない大きな力をもっていると信じるのだとしても。




というわけで、今日は石油採掘による地球上最悪の汚染が発生したとされるニジェールデルタの話でした。

この一帯の状況は複雑すぎてとてもじゃないけど1話じゃ無理でした。かなり割愛したし話せていない背景などありますが、何か少しでも得るものがあれば幸いです。


次回は、石油×仮想通貨といえば?です。

お楽しみに!


MALIS

過去の記事一覧はこちら


公開日:2018/07/18
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エネルギー政策専門のコンサルタントです。ニューヨークにいることが多いのでこちらの情報発信が多めになる予定。Twitter: @mari_saita

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