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その石油は信用できるか?仮想通貨ペトロの価値

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  • MALIS
  • 2018/07/20 22:29

みなさまこんにちは。

前回は仮想通貨ペトロがなぜ発行されたか?をみてみました。


今回は、ベネズエラが主張する"石油に裏打ちされた"の意味とは何ぞや?これ本当に信用に足りるのか?についてみていきましょう!


今回はなんと、MALIS画伯がわかりやすい絵を描いたからね、最後まで読んでくださいね。



1. 石油に裏打ちされたって?


石油と国家に裏打ちされた仮想通貨、ペトロ。

なんだか強そうな響きですよね。


でも、石油で裏打ちされるって一体どういうことなんでしょうか?

ホワイトペーパーにはこんな公式が。

Content image

"Bolivar"はベネズエラの通貨のこと。

PetroとBolivarを両項から消すと

Petroの価格=石油価格×(1-ディスカウントレート)

となります。

ちなみにここで使われる石油価格は前日の価格なのだとか。


では現在の石油価格は?

指標は色々とあるのですが、今回はOPECバスケットプライスと呼ばれる価格を見てみましょう。

2018年7月19日現在の価格は、


1バレル = 約71ドル


結構高い!

ALISの現在価格の70倍くらいありますね。


しかし、これって上場した取引所の価格と同じでしょうか?違いますよね?
(ここ分かる人いたら教えてください、価格見つけられなかった)

さらに、オイルの流通って圧倒的にドルでの取引が強いので、オイルの価格に合わせる=この通貨は実質ドルってことになりませんかね?


さらにさらに、"具体的に"どう石油で裏打ちするのか、の点が不明瞭です。

様々なコンサルタントがこの点について意見を言い合ってきたのですが、地政学で有名なユーラシアグループに言わせると


「よくわからない」


のだそう。。。

Content image
イアン・ブレマー氏講演会行った時の写真

ユーラシアグループの代表かつ地政学研究の著名人、イアン・ブレマー氏もお手上げです。

ふむ、怪しさが増してきましたね。


2.ベネズエラの石油は信用に足りるか?

さて、そもそもですよ。

ベネズエラの石油ってどんだけのもんなんでしょうか?これが証明できないと裏打ちしてもらっても意味ないですよね?

ホワイトペーパーに載っている石油埋蔵量ランキングによると、、


Content image


ベネズエラ!石油埋蔵量世界一!

そう、実はサウジアラビアより石油埋蔵量が多いんですね。


(どうでもいいですが、この引用↑、Source:CIA Facebookってなってるんだけど、Facebookじゃないよ、、Factbookだよ、、誰か教えてあげて)


さて、誤字はともかくこれは期待できる!?


結論を述べると、


うーん、ちょっと無理かな。。


3. 石油生産量がた落ち

では、ちょっと無理かもな理由を見ていきましょう。

まずはこちら、ベネズエラの石油生産量の推移を見てください。


Content image
EIA、2018

あらら、石油生産量落ちてますよ。。

埋蔵量はあるのに、なぜでしょうか?


まず挙げられる理由は

(1) 人手不足

です。

ベネズエラではPDVSAと呼ばれる国営会社が石油市場を握っています。とはいえ、実際採掘しているのは外国資本のBP、シェブロン、エクソンモービルといった企業。

2002年、前職のチャベス大統領が「うちで生産するなら分け前を増やせ!」とロイヤルティの引き上げと権益(油田の権利)の引き上げを迫りました。

現場は混乱に陥りストライキが発生、2万人近い従業員がPDVSAを去りました。この影響がいまだに残っているんですね。

(ちなみにこのストライキ運動は大手外資石油会社およびアメリカ政府のバックアップがあったとの話もあります。チャベス大統領は国民への分け前を増やしたかったのでしょう。が、結果は生産量減により困窮することに。)


と、そもそも困難な状況だったのですが、、、

さらに、マドゥロ大統領の汚職撲滅運動で多くの幹部が逮捕され辞めることに。現場の士気は低下し、さらに辞める人が続出。通常営業すら続けるのが難しく、人手不足で事故の可能性も高まっています。


人材不足になったことで露呈したのが、

(2) ノウハウ不足

石油産業というのは想像するよりずっと高度な計算や技術、マネジメント能力が必要な産業です。

例えば、油田で掘り始めたかといって、ずーっと同じペースでとれるわけではないんです。最初にわーっと取れて、そのあと少なくなっていくんですね。

こういう感じ↓

Content image

分かりやすいね!


まぁ、なので少なくなっていくタイミングを計算して水やらガスやらを注入して圧力を高めてしぼり取る必要があります。もちろん、新たな場所を探して採掘を始めていくサイクル管理も必要。

Content image

1が減ってきたら2、3、という具合にどんどん掘る場所を増やしていくってことです。そうすると生産量がガタガタにならず経営が安定する。

つまるところ、計算しつくした投資が必要なんですが、人材がいないPDVSAではこれがなかなか難しかったんですね。


(3) 資金不足

そうこうしているうちに石油産出量は低迷。

そして、、、前回もお話したシェール革命がおこります。


実は、マドゥロが大統領になった2013年の石油価格はむちゃくちゃ高かったんです。次は1バレル200ドルが普通になるぞ!という時代でした。

その高値を前提として、マドゥロ大統領は国の経営を考えていました。ちなみに彼が当選した時の政策は国民の生活を第一としたもので、人気がありました。


その後の石油価格の大暴落はご存知の通り。

つまり、突然の資金不足により石油生産への投資がまわらなくなってしまったのです。


Content image
EIA, 2018


このグラフは、オイルリグと呼ばれる石油採掘装置の数を示しています。この数が下がっているのは、新しいオイルリグに投資できていないということです。

これでは生産量が上がるわけがありません。



というわけで、、

今日で終わるはずだったのに長くなってしまったのでここまで!

今回の記事を読むともはやペトロはダメそうですが、、、まだまだ続きがありますからね、覚悟して読んでね。


ちなみに今回はしれっと石油産業の深いとこまでお話しているので、ぜひ飲み会のネタにでも使ってみてください。


それではまた来週!


MALIS

前の記事:仮想通貨ペトロはベネズエラの救世主となるか?


公開日:2018/07/20
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エネルギー政策専門のコンサルタントです。ニューヨークにいることが多いのでこちらの情報発信が多めになる予定。Twitter: @mari_saita

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