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仮想通貨ペトロはベネズエラの救世主となるか?

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  • MALIS
  • 2018/07/19 22:17

みなさまこんにちは、前回記事はいかがでしたか?

石油石油石油と言ってますが今日も相変わらず石油の話です。でも今回は、ナイジェリアからちょっと離れて南米ベネズエラの様子を見てみましょう!

ベネズエラといえば?



そう、仮想通貨「ペトロ」です。



1. 2018年3月、ペトロ爆誕!

2017年にベネズエラのマドゥロ大統領が発表した仮想通貨、ペトロ

「石油に裏打ちされた仮想通貨!」

と日本でも驚きをもって報道されていたのでご存知の方も多いかもしれません。


特徴は

・1ペトロ=原油1バレルで国家が価値保証

・とはいえ原油と交換できるわけではない

・総発行枚数は1億

・NEMベース


そうそう、これNEMベース(※)なんですよね。

Buyer's Manualには、、↓


Powered by NEM!


(※その後NEMではなくDASHになった様子)


ペトロは2018年3月にICO開始。

結果、7.35億ドルを調達しています。

このペトロ公式アカウント↑、ICO開始したぞ!の1ツイートしかしてません。様々なICO評価サイトでマーケティングが低く評価されていましたが、、、

人生に割り切りは重要ですね。


というのはおいといて、

そもそも、なぜこんな通貨をベネズエラ政府は発行したのでしょうか?


ベネズエラの状況は前回お話したニジェールデルタばりにややこしい話ではあるのですが、、、大きな背景としては

・ハイパーインフレ

・経済制裁

の二つです。


2. ボリバルのインフレは仮想通貨ばり

まずはベネズエラの衝撃的ハイパーインフレぶりを見ていきましょう。

外貨獲得のほとんどを石油に頼る、石油超依存国のベネズエラですが、マネジメントやら色々と失敗していて生産がうまくいっていません。石油ビジネスが絶不調では国家も傾くというものです。


さらに追い打ちをかけたのは昨今の石油価格低迷です↓


2013年代の原油価格は1バレル100ドル以上が普通の世界でした。

しかしその後、シェール革命がアメリカで拡大。アメリカは順調すぎる勢いでオイルの生産を拡大、あっという間に市場は供給過多に陥ることになります。2016年には一時期1バレル30ドルを割り込む異常事態に。


ベネズエラはオイルを売って商売をしているわけですから原油安は大打撃。


返済が滞りだしたベネズエラ政権は大量の通貨発行を繰り返しました。当然のことながらベネズエラ通貨であるボリバルは大暴落、ハイパーインフレが発生したのです。市民は生活用品すら買えなくなり困窮することに。


どのくらい"ハイパー"か見てみましょう。

おっと、すごいチャートです。

既存通貨と比べて仮想通貨はボラティリティがーとか寝ぼけたこと言ってほしくないですよね円の世界で甘やかされ過ぎですよなんてね。

これじゃあとてもじゃないけど経済は安定しない!よし、仮想通貨を自国通貨として使えるようにしよう!ということですね。


3. とどめはアメリカ経済制裁

しかし、2017年に始まったアメリカからの経済制裁こそがペトロ発行の直接的な要因です。


なぜベネズエラは、アメリカから経済制裁を受けているのでしょうか?


ベネズエラでは、2017年議会選挙にあたり「この選挙は不正だ!」として野党、与党で対立が発生していました。実際は、"対立"というほど生易しい状況ではないのですが、とにかく「不正選挙だ!」という声があったにも関わらず現職のマドゥロ大統領は選挙を実施。


結果はもちろん与党大勝利。

実際、不正ですからね。

この選挙の開票直後から反政府デモが激化し、街は戦争状態に陥りました。

この戦闘で10人以上が死亡、選挙前からの反政府運動を含めると120人以上が亡くなっています。


実は、ちょうどこの時期にベネズエラ出身のクラスメイトがいて、自国の状況をプレゼンしてくれたのですが、「もう私は故郷に戻れないのかもしれない」と涙ながらに話していました。

どれだけ切迫した状況だったかわかると思います。

Content image
その時のクラスメイト、私にとってはベネズエラの状況を真剣に考えだしたきっかけでした


さて、話を戻します。

多くの死者を出したこの選挙の結果、当然のことながらベネズエラは国際社会から批判を浴びることになります。そして、そもそも反米路線だったマドゥロ大統領に対し、アメリカは経済制裁を発動するに至るのです。


幹部の資産凍結

国債・国営会社の社債発行禁止

そして極めつけは石油取引の制限


これらの経済制裁により打つ手のなくなったベネズエラは、仮想通貨ペトロの発行による資金調達と、経済制裁のおよばない経済圏創造に取り組むことになるんですね。



と、今回はここまで!

次回は、そもそも石油によって裏打ちってどういうこと?このコインって信用できるの?を見ていきましょう。


今回の記事タイトルに、"ベネズエラの救世主"と書きました。

この"ベネズエラ"がさしているのは一体誰なのでしょうか?ハイパーインフレに苦しむ市民なのでしょうか?そうであれば、この状況を作り出した張本人であるマドゥロ大統領はどんな気持ちで仮想通貨ペトロを発行しているのか?


誰にもわかりません。

マドゥロ大統領個人にとっての救世主でないことを願うばかりです。


MALIS

前の記事:ニジェールデルタの闇をブロックチェーンは照らせるか?



公開日:2018/07/19
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エネルギー政策専門のコンサルタントです。ニューヨークにいることが多いのでこちらの情報発信が多めになる予定。Twitter: @mari_saita

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