昨日からお話しているイラン経済制裁。
(前回記事:ホルムズ海峡が閉ざされる時、君は仮想通貨を買うべきか?)
本日(2018年8月7日)、アメリカのトランプ大統領により、イランの経済制裁が発動されました。
世界平和のためだ!
だそうです。
実は、これまだ序章。
本当に怖いのは11月に発動予定の、石油企業への経済制裁。
イランは脅し文句の通り、ホルムズ海峡を封鎖するのでしょうか?
その時、仮想通貨はどうなるのでしょうか?
引き続き見ていきましょう!
前回記事では、技術的にどう海峡を封鎖するかを述べました。
結論、技術的には余裕で封鎖可能。
では、政治的には可能なのでしょうか?
結論を言うと、
海峡封鎖の可能性は低いでしょう。
なぜでしょうか?
理由は大きく2つ。
(1)アメリカの軍事力
最初の理由は、アメリカがこの海域を守っているからです。
もしも封鎖してしまうと、イランはアメリカに軍事介入のいい口実を与えてしまうことになります。世界トップの軍事力を持つアメリカと、イランは本音では対決したくありません。
これ、世界の軍事力ランキングです↓
アメリカはぶっちぎりでトップ。
(というかイラン、めっちゃ順位あげてますね、、20位くらいだったと記憶していたのですが驚きました。サウジアラビアは26位です。)
(2)ヨーロッパの援護
今回のトランプ大統領の経済制裁は、国際的に批判されています。
ヨーロッパ諸国も、一度は経済制裁やめるって合意したのに理由もなく「やっぱり経済制裁する!」ってのは横暴すぎるでしょ?ってことで、アメリカに反対しています。
ヨーロッパは、11月の経済制裁第二弾が発動されても、イランのエネルギー資源への投資は続けると言っています。
もしイランが海峡封鎖をすれば、欧州もさすがにイランを援護できなくなってしまいます。世論ってやつですね。
さて、可能性は低そうということはわかりましたが、それでも万が一起こったらどうなるの?
何が起きるか時系列で考えてみましょう!
まずは、、、
(1)世界の原油の20%が輸出停止
ですよね。ここが一番の混乱ポイントでは?
原油価格は一時高騰しそう。
うーん、軽く2倍くらいになるかもですね。
さて、次に起こるのは
(2)武力介入
でしょう。
アメリカが本気出したらすぐカタがつく、、、と信じたい。長引いても死者が増えるだけです。
カタがついたなら、そこから機雷等撤去、、多分数か月かかります。
その間石油はずっと輸出できない?
いいえ
前回記事で、湾岸戦争でもホルムズ海峡が封鎖されたと話しました。
そこから対策しないほど、他の国もばかじゃありません。
(3)迂回ルートでの原油輸出
が始まるでしょう。
イランがあんまりにも「ホルムズ海峡封鎖するぞ」と脅すもんだから、中東の国々はパイプラインを使った迂回ルートを作っています。
さらに、石油を輸入している国は
(4)石油備蓄の放出
を開始するでしょう。みんな中東対策で石油を蓄えているんです。
ちなみに日本も石油備蓄基地があり、半年くらいは持つと言われています。
オオカミ少年じゃないですが、、
脅しすぎると効果がなくなるんですね。
そして石油安定供給の見通しが立つと、、
(5)原油の価格安定化
に向かうでしょう。
勿論経済は混乱しますが、昔と比べて代替手段が多くなっています。
ということで、
世界的な経済の混乱は起こるが教科書に出てくるオイルショックほどではない。
という結論に至りましたー
むしろ、代替燃料や再生可能エネルギー関連の株価が高騰して、投資がさらに進みそうですよね。
では、金融、仮想通貨市場もあまり影響を受けないのでしょうか?
正直、 私にはよくわかりません。
ただ、影響を与えると考えられる要因は3つあります。
1. 経済混乱による世界的なリスクマネー発生
2. さらなるドル売買禁止によるイランと関係諸国間での仮想通貨利用の浸透
3. 中東諸国(国民)からのキャピタルフライト
この3つがどのくらいの強度で発生するのか?
現時点の仮想通貨の流通状況では、1のリスクマネー発生による仮想通貨買いの流れはさほど期待できないかなと思います。どちらかというと、混乱のさなかにいる中東諸国が、どれだけ仮想通貨に頼るか(2、3)の影響が大きいでしょう。
一つ言えることは、どれが起こっても一時的な上げ圧力になるのではないかということ。
よって、結論としては、
イランへの経済制裁によるホルムズ海峡封鎖は、発生する可能性は低いが、もしも発生した場合は仮想通貨価格の上げ圧力になる可能性はあり
さらに、
海峡封鎖に至らずとも、経済制裁が長引けば上げ圧力がかかる可能性あり
になります。
ただ、、、ここまでの話は、戦闘が泥沼化しなかった場合です。
皆さん、知っていますよね?
ベトナム戦争の泥沼を、湾岸戦争を、アフガニスタンを、シリアを、、、
軍事介入の末の取り返しのつかない結末を、
世界は何度見てきたことでしょうか?
今回、どんな形になろうとも、対話の中で落としどころが見つかることを切に願っています。
以上、長くなりましたがイラン経済制裁のお話でした!
中東で何かあっても、思ってたより大混乱にならないんだなぁ、、と思った方も多いのでは?
長らく、中東情勢が荒れると原油価格が高騰する、と言われてきました。
しかし今は
"原油価格の低迷が、中東の地政学的リスクを高める"
と言われています。逆なんですね。
石油の独占により富を築いてきた中東は、代替輸送手段、シェール革命、そして原子力・再生可能エネルギーの普及により徐々に追い詰められているのです。
石油により栄え、そして石油しか持たないがゆえに逃げ場のない中東。
そう、
国家ですら、
卵は一つの籠に盛ってはいけないのです。
MALIS
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