USDTやKIZUNACOINなどなど,ステーブルコインが最近何かと話題になっているのを見かけます.
そのためずっとステープルコインについて調べているのですが,何処も彼処も「安定」しか言いません.
安定がほしいなら法定通貨使えばいいのです.それ以外の,積極的にステーブルコインを求める理由を探しているのですが,どこにもありません.
しょうがないので,「安定」の概念から見直しているのですが,素人考えとはいえ,ステーブルコインが安定して使えるのかという点において疑問点が残ります.
まずはステーブルコインの定義をはっきりさせましょう.ステーブルコインには三種類ほどあるらしく,
①法定通貨担保型:USDT、TSUDなど
②仮想通貨担保型:DAI(ETH担保)
③無担保型:Basis、Saga
があります.あるいはペトロのような原油担保もあるようですが….ひとまずのところ,何かに対して一定の価値がある通貨と思って良いでしょう.
「安定」から考えると,無担保のコインは明らかに安定させる作用がありません.モノの価値は相対的であり,何かしらの明確な尺度が必要です.そもそも何に対して安定的なのかのかもわかりません.
同様の理由で,仮想通貨担保もありえません.仮想通貨の価値は非常に流動的です.支える価値が,信頼や投資家の思惑ぐらいしか今のところない通貨です.ある日100万円だったものが次の瞬間に200万になったり,その次には80万円になるような世界です.現在は比較的落ち着いていますが.
では法定通貨担保型はどうでしょうか.法定通貨という明確な価値の尺度を持つ
わけですから,「安定」に一番近い気がします.しかしながら法定通貨を使う以上,円なら日本の,米ドルならアメリカの価値に左右されることは避けられないでしょう.とはいえ,これが一番安定に近そうです.
上記から,法定通貨担保型ステーブルコインについて考えます.
例として,USDTを考えてみます.Tether Limitedが発行しているこのコインは,米ドルに対して1:1です.
記事執筆中の2018年11月3日22時52分時点で1USDT= $0.999998でした.
ほぼ1ドルですね.
法定通貨担保なので,Tether LimitedはUSDT発行枚数と同等の米ドルを保有する必要があります.執筆時点で時価総額 $2,059,237,632なので,これと同額程度です.この金額を保有し続けていれば,あるいは増減に合わせて調整ができているならば,確かに安定して使えそうです.米ドル建てである以上は,仮想通貨の利点である全世界共通で使える決済通貨としての価値はありませんが,自国経済圏においては確かに有効ではありそうです.
ではこれが,ジンバブエドルで行われたらどうなるのでしょう.ジンバブエドルといえば,とんでもないインフレで有名ですね.某サイトでは,ステーブルコインは価値が変わらないので,ステーブルコインに逃げていればインフレから逃げられると書いていました.これはありえないでしょう.
例えば,ジンバブエドルと1:1のステーブルコインだったら?
ジンバブエドルの価値が下がっているのですから,そのステーブルコインの価値も下がっています.$10でパンが買えたとして,インフレでパンが$20必要になったらUSDTでも20USDT必要です.
では別の,ジンバブエドル以外の通貨や価値とのステーブルコインだったら?
結局その別の通貨を買うためにインフレしたお金をつかうのですから同じです.逃げられていません.
インフレが起きる前に逃げる? それならわざわざ法定通貨担保型ステーブルコインである必要もないです.別通貨に逃げるだけでも済みます.あるいは無担保型や仮想通貨担保型ステーブルを採用していれば逃げられるかもしれません.ですが,そのためには国がそのコインによる決済を認め普及している必要がありますし,ジンバブエのGDP178.5億米ドル規模(2017年)の大半が流入しても安定している必要があります.大量の購入は価格を釣り上げます.その後の調整で下げられては,せっかく逃げた資産を失う羽目になります.
そしてなによりも,担保型のステーブルコインは,金本位制と同じなのではないでしょうか.
簡単に説明しますが,金本位制は金を担保に通貨を発行する通貨制度です.最初は金貨を使っていましたが,次第に紙に「金100円相当」とあれば,銀行に持っていって金100円分と交換することができるようになりました.金は重く,持ち運びが不便なので,紙の上で信用でもってやり取りしていたわけですね.でもって,第一次世界大戦ごろに制度が崩壊しました.金本位制の国の政府が金の輸出を禁止したためです.例えばA国が100のお金を使ったとして,必要な金は100ですが,現在A国には90しか金がありません.なのでA国は外国から金を10輸入する必要があります.金がないと通貨を発行できないので,足りないなら外国から買うしかないのです.ところが,世界中が戦争してそんな状態なので,どの国も輸出できる金なんてないのです.そのため,自国経済を守るためには金の輸出を禁止する他なく,やがて金との交換すらできなくなりました.これにて制度崩壊です.そこから現在の管理通貨制度に移行するわけです.
そんなわけで,何かを担保にして通貨を作るやり方は,担保にしているものの調達が滞ると崩壊してしまうわけです.
USDTは,ユーザーがTether Limited社にドルを渡すことで新規発行されるとのことですが,利益確定のために大量に買われた場合はどのようにして調整するのでしょうか.調整のための発行を行うためにはどこかからドルを調達しなければなりません.不要になったUSDTのバーンはこの前行っていたようですが.
このあたりのリスク回避をどのようにしているのか,しっかり書いてあるコインを私はまだ知りません.あるいはUSDTのホワイトペーパーをしっかり読めばかいてあるかも知れません.
何かあったときに逃避先になったりする通貨が,何かあったときにまっさきに潰れるシステムでは困るのです.
もしこれを読んだ方で,この通貨はちゃんとしてますよというのがあれば教えてください.