11歳の時。
俺は、まだ漫画本しか読んだことが無かった。
小説というのがあるのは、知っていた。
でも、文字がぎっしり書いてあり学校の教科書みたいで嫌いだった。
この時、小説なんて読む気など全くなかった。
ある時、本屋に行ったらドラゴンクエストの本が売っていた。
表紙は、中二病を奮い立たせる凄くかっこ良い表紙だった。
俺は、その本を見て手に取ってみたら、なんと小説だった。
でも、試しにその場で立ち読みしてみると、凄く面白い。
子供向けに解りやすく書かれた内容だった。
でも、小説だから読むのに抵抗がある。
しかし、表紙のカッコよさと、文章の解りやすさで買ってしまった。
俺は、この小説を夜寝る前に読む事にした。
読み始めて最初の数秒は、文字嫌いという抵抗感があった。
でも、1行読み終わると続きが知りたくて更に読み続けてしまう。
そしてどんどん面白くなっていき、何ページも読み続けてしまった。
当時中二病が発病していたせいで、物語の内容に一気に吸い込まれる。
まるで、小説に書かれている内容が現実に起こっているかの気がした。
もうこの時は、妄想が暴走し完全に物語の中に自分が入ってしまっていた。
でも、初めての小説なので読むペースが凄く遅い。
たった5ページ位読むと、30分位たっていて眠気が襲ってくる。
俺は眠気に耐えられず、いつもそのまま寝てしまっていた。
やっと読み終わった頃には、1月位たってしまっていた。
でも内容は、中二病前回の俺にとって最高に面白い本だった。
もう、この小説のせいで現実と物語の区別がつかない。
それ位、この小説の内容にどっぷりと浸かってしまった。
俺は、小説を読んだのは、生まれて初めてだったが凄く感動してしまった。
この本のお陰で、小説に教科書の様な抵抗感がなくなった。
これが、俺の小説デビューだった。
そしてドラゴンクエスト2が発売され、しばらく立った、とある日。
本屋に漫画本を立ち読みに行ったら、ドラゴンクエスト2の小説があった。
またしても表紙の絵柄が、俺の中二病本能を燃え上がらせた。
俺は、迷わずドラゴンクエスト2の小説を買ってしまった。
そして、また毎晩寝る前に5ページずつ30分かけて読む事にした。
もちろん、この小説を読んだ次の日は、完全に頭がファンタジー。
ドラゴンクエストの世界と、現実の世界の見分けがつかなくなっていた。
街ゆく人々は町人に見え、犬や猫はモンスターに見える。
そして他人の家に入り、無言で棚を調べても良い気がしてきた。
トンネルが洞窟の入り口に見え、その奥に宝箱がある気もしてきた。
俺は、完全にドラゴンクエスト小説に洗脳されてしまった。
この時、変な宗教団体にツボを売りつけられたら買ってしまっただろう。
それ位どっぷりとつかっていた。
そして1月位たって、やっと小説を読み終わっても洗脳が解けなかった。
小説の内容がバカな俺でも解りやすく、凄く面白く書かれていたのが悪い。
俺は、小説ってこんなにも面白い物なんだと改めて感心した。
この後俺は、漫画やゲームの小説だけを中心に小説が大好きになった。
他の小説は、難しくて読めなかったからだ。
当時、漫画とゲーム以外の小説は、全く読まなかった。
でも本屋で偶然ある小説が目に止まった。
その小説を開いてみたら、一節の内容が短くて凄く読みやすい。
その本は、銀色夏生さんと言う人の「ロマンス」と言う詩集だった。
その本は、文字数も少なく凄く読みやすいので、スラスラ読めて行った。
内容は、恋愛物の詩集。
中二病全開の俺は、一瞬でこの世界引き込まれてしまった。
当時、恋愛なんて1度もした事ない脳みその中が妄想で埋め尽くされた。
この詩集1冊で俺は、中二病妄想が暴走して恋愛体験をした。
でも妄想が暴走していたのは、本を読んでいる間だけだった。
本を読み終わると、ふと我に返り誰もいない事に気が付く。
自身のバカバカしい現実が目の前に広がった。
でもこの詩集は、漫画やゲームの小説とは違う果てしない面白さがあった。
この時、俺は一瞬で銀色夏生さんのファンになった。
この詩集に書いてある「恋は列合烈火」と言う事を本気で信じてしまった。
そして今でも本の中で、この銀色夏生さんの「ロマンス」が1番好きだ。