思い出「お年玉の使い道」

【お年玉】

6歳の時。

1月1日に、お年玉をもらった。

お年玉の金額は、確か1000円。

全然少ない。

俺は、お年玉で買う物を、大晦日の夜に決めていた。

実は、クリスマスを過ぎた頃の新聞には、おもちゃの広告が入ってくる。

俺は、その広告を毎日眺めて、ウキウキしながら、買う物を決めていた。

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【決定！】

おもちゃの広告は、新聞紙の大きさと同じ「B1」サイズの広告だった。

その大きな広告は、面積いっぱい、おもちゃの写真が掲載されていた。

そのおもちゃの写真を、毎日眺めて、お年玉で買う物をワクワク見ていた。

もう、その広告のおもちゃを眺めているだけで、凄く楽しい。

そして俺は、その無数のおもちゃの中から、買う物を決定した。

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【希望】

買う物は、超合金の「トライダーG7」というロボット！

これは、なんと3機合体、3段階変形する！

値段は「3000円」

当時の俺は、このロボットが、気が狂うほど欲しかった。

しかし、もらったお年玉は、1000円で全然足りない。

でも俺には、希望の光があった！

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【追加予算】

希望の光は、明日の1月2日、俺の家に親戚一同が集まる。

その時、追加のお年玉が貰えるのだ！

俺は、夢と希望を抱き、明日を大人しく待つ事にした。

トライダーG7は、俺に買ってくれと叫んでいる。

そう、俺じゃなければダメなんだ！

そう夢の中で、妄想していた。

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【お年玉タイム】

そして1月2日。

親戚一同が集まるから、我が家は、朝から慌ただしかった。

おせちを用意し、お酒を用意し、お年玉を用意している。

お昼ごろ、親戚一同がゾロゾロ我が家に来はじめた。

そして全員揃い、お正月の挨拶を済ませ、お年玉タイムになった！

俺は、たくさんの人からお年玉をもらい、超ご満悦だ。

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【はやる気持ち】

俺は、みんなから貰ったお年玉の合計金額を、確かめてみた。

そうしたら、1万円位ある！

「イケる！これならトライダーG7を買える！」

そう確信した！

そして俺は、そのまま、おもちゃ屋に走って行った。

この時トライダーG7が俺に「買ってくれ！」と呼んでいる声が聞こえた！

そして俺は「今買いに行ってやるからな！」と伝え、おもちゃ屋に急いだ！

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【この世の終わり】

おもちゃ屋に到着した俺は、ここで、この世の地獄を見た。

それは、おもちゃ屋が1月3日までお休みだったからだ。

俺は、この時、半べそ状態になって、人類が滅亡した感じがした。

そして、仕方なく家に戻る事にした。

この後は、親戚の子達と、かるたや、超合金で遊んだ。

大人達は、夜になると更にに盛り上がり、大宴会を始めてしまった。

その後、みんなタクシーで帰って行った。

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【早朝散歩】

1月3日。

今日もまだ、おもちゃ屋がお休み。

この日、朝5時ごろ目が覚めてしまった。

ベランダを開けると、綺麗な青空が広がっていて、冷たい風が入り込む。

俺は、綺麗な空気に誘われて、外に出てみた。

そしたら、空は綺麗な青空で、凄く気持ちがが良い。

そのまま、誰もいない街を、散歩してみる事にした。

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【おもちゃ屋の誘い】

どこまでも広がる青空と、ちょっと冷たいけど、綺麗な空気。

そして、誰もいない街。

まるでここは、俺1人だけの世界に感じた。

そして、無意識に商店街の、玩具屋にたどり着いてしまう。

今は、朝5:30。

当然お店なんて開いてない。

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【犯行現場】

俺は、少し寒くなり、大好きなコーンスープを飲みたくなった。

そして、いつもの様に自動販売機の下を、シャッターの棒であさった。

そして100円玉を取り、コーンスープを買って、ベンチで休む事にした。

そうしたら、遠くから同じクラスの女子が、こちらに向かってきた。

その女子は「自動販売機からお金盗んだでしょ～」と言ってくる。

この子は、文房具屋の娘の「岸」さんという子だった。

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【女心】

岸さんは、何だか怒った顔をしている。

俺は「ますい！このままじゃ、また先生にチクられる！」と焦った。

この時「俺がコーンスープを飲んで、うらやましいんだ」と感じた。

そして俺は「岸さんにもジュース買ってあげるよ」と言いってあげた。

そしたら岸さんは「本当？！」と、凄く喜びはじめた。

俺は、岸さんの分のジュース代を、また自販機の下をあさり、50円玉2枚とった。

そのお金で、コーンスープを買ってあげた。

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【行く当てのない場所】

岸さんは、コーンスープを買ってあげた事で、凄く喜んでくれた。

そして、ベンチに2人で座り、コーンスープを飲んでホクホクになれた。

岸さんに「何でこんな朝早く、ここに来たの？」と聞いてみた。

そうしたら「家にいても親が寝ていて、退屈だったから」と答えていた。

この時「俺も同じ理由で、散歩しに外に出たら、ここに来た」と伝えた。

お正月の3日間は、どのこも休みで、出かける場所が無い。

その為、どこの家庭の子供も、お正月は、退屈だった。

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【お母さんクマ】

1月3日の早朝の朝は、突き抜けるような青空と、綺麗な冷たい空気。

その空の下、誰もいない街の片隅で、大好きなコーンスープを飲む。

これほど幸せな事があるのだろうかと、しみじみ感じていた。

岸さんに、お年玉は何に使うのと聞いたら「クマの人形を買う」と言う。

「どれ位の大きさ？」物か聞いたら「お母さん位！」と言って、ワクワクしていた。

岸さんは、本当に嬉しそうな顔をしていた。

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【岸さんの笑顔】

そんな岸さんの顔を見たら、何だか俺まで嬉しくなり、ワクワクしてきた。

俺も明日は「トライダーG7を買う！」

そう思うと、嬉しさが込み上げて、凄く明日が待ち遠しい。

明日の朝「お店が開くと同時に手に入れよう！」

そう心に誓った。

その後、岸さんとバイバイして家に戻って行った。

この時、もう朝6時を過ぎていた。