6歳の時。
埼玉県の三郷団地に住んでいた。
そこの玩具屋には、最先端のクレーンゲームが置いてあった。
景品は、お菓子だった。
景品のお菓子は、駄菓子屋で売ってる物がバラされて、袋に包まれた物。
5円の飴玉や、10円のチョコレートや、おはじきが沢山入った袋、等。
そして、このお菓子のいくつかには、商品券が入っていた。
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そのお菓子の商品券は、ガンプラが当たる商品券。
商品券は、小さく切った折り紙に、金賞、銀賞、銅賞と、書いてある物。
人気のガンプラ順に、金銀銅と商品別に順位が付けられていた。
人気のガンプラは、毎週変わり、そのガンプラが店の入り口に飾られる。
俺は、それを見て、そのガンプラが激しく欲しくて、たまらなかった。
何故なら、そのガンプラは、いつも大人気でスグに売り切れ、買えない。
そんな大人気のガンプラが、いつもクレーンゲームの商品になっている。
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商品のガンプラは、当時300円の、1/144スケールモデルだった。
一番人気なのは、いつも「シャア専用機」
俺は、そのガンプラが欲しくて、クレーンゲームをやりまくった。
このクレーンゲームは、1回10円で、3回まで動かせる。
親切なおもちゃ屋が、子供向けに、このような設定をしてくれていた。
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俺は、おもちゃ屋に毎日通い、クレーンゲームの中を覗き込んでいた。
中を覗くと、たまに商品交換件が入っているお菓子が見つかる。
取れない位置にあると、俺はゲーム機本体を揺らして、取れる位置にする。
当時の俺は、そんなインチキをしてでも、ガンプラが欲しくて必死だった。
この頃、母親に1日50円もらえたので、15回できる。
でも、なかなか取れずに、いつも持ち金が尽きていた。
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何度も挑戦していると、だんだんコツを掴むようになってきた。
そして、10回プレイすれば、商品券が入ったお菓子を1回位取れる。
でも300円の物を取るのに、10回プレイして500円使うのは、変だ。
それは、6歳の猿の俺でも、理解できる事だった。
300円の物なんだから、300円以内で取らないと損だと。
そして俺は、自分で1つのルールを決めた。
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そのルールは、商品券が取れると思った時だけやる。
そうすれば、お小遣いの消費を、最小限に抑えられると思った。
そして、実行してみた。
でも数日後、このルールに変な違和感を感じるようになった。
商品券を取れると感じた時に、プレイする回数が10回位になっていた。
そう俺は、取れると思っても下手くそで、結局300円以上使ってしまった。
これでは、元も子もない。
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そんな状況の中、俺は、とあるインチキを思いついた。
商品券は、折り紙の「金紙」「銀紙」「銅紙」を小さく切った物だった。
この紙に、金賞、銀賞、銅賞、と書かれている。
俺は、これを偽造してしまおうと思った。
そして、家にあった折り紙を同じ位の大きさに切り、商品券の形にした。
その紙に、金賞、銀賞、銅賞、と書くのだが、俺では字が汚くてバレる。
そこで、ある秘策を講じた。
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その秘策とは、母親に字を書いてもらう事。
さっそく母親の所に、偽造した金紙を持って行き、字を書いてもらった。
我ながら完璧な偽造方法だ。
そして、おもちゃ屋に向かって行った。
ただこの紙を見せただけでは、クレーンで取ってない事がバレると感る。
なので、いつもの様に1回クレーンゲームをプレイする事にした。
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プレイして取れたのは、当然外れのお菓子。
そのお菓子の中に、商品券が入っていたように装う。
そして、その偽造商品券を、おもちゃ屋に見せてた。
この時、悪い事している感が満載で、心臓がバクバクしている。
完全に挙動不審になっていた。
見せた結果、おもちゃ屋が「これは違う物なんだよと」言ってきた。
俺は、この時(やばい!完全にバレた!殺される!)と、青ざめた。
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そしたら、おもちゃ屋の奥さんが、旦那さんに何故か怒り始めた。
奥さんが「やっぱこれ入ってたじゃない!」と、怒鳴っている。
俺は、何が起こったのか、よく解らないでいた。
そしたら、おもちゃ屋の奥さんが、俺に話しかけてきた。
「この金賞の文字は、書いてある場所が違う物だからダメなの」と言った。
実は、本物の商品券は、金紙の裏に文字が書いてある。
俺の偽造は、完全に失敗作だった。
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でも、俺が持ってきた偽造商品券の文字は、表側に文字が書かれていた。
どうやら、おもちゃ屋の旦那が、たまに間違えて表側に文字を書くらしい。
この件で、またケンカし始めた。
そのケンカの話を聞いていたら、状況が解ってきた。
以前、表に文字が書かれた物を、奥さんが見つけたらしい。
そして旦那さんを叱った事がある。
その後、間違えて表側に書いた商品券を、全部回収したらしい。
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この時、旦那さんは、めんどくさくて10個位のお菓子しか確認しなかった。
なのに、旦那さんは、もう絶対に大丈夫だと言い張ったみたいだ。
その、いい加減な旦那さんの行動で事で、奥さんがキレたらしい。
その後、奥さんが折れて、旦那さんの言う事を信じたと言う事だ。
しかし、現実は違っていた。
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しばらくしたら、喧嘩が1段落した。
そして奥さんに「これは、間違いの商品券だからダメなの」言われる。
俺は、ダメでも、偶然に偽造がバレなかった事で、もの凄く安堵した。
もうこんな偶然、2度と来ないと思い、もう偽造をしないと心に誓った。
こんな、死にそうな恐怖体験もう2度としたくない。
この時の俺は、手の震えがしばらく続いて止まらなかった。
まるで、奇跡の救いだ。