21歳の時。
俺は飯田橋のデニーズに勤務していた。
でも飯田橋のデニーズは、もうない。
このデニーズには、同期で一緒に働いていた人がいた。
名前は大崎くん。
当時、恐ろしく厳しい先輩の本間さんという人の下で一緒に働いていた。
この本間さんという人は、マニュアル以上の事をやらせる。
確かに間違ってはいないが、そこまで厳しくしなくて良いじゃんと思った。
でもマニュアルを見てみると、衛生的におかしいと感じる所はあった。
マニュアルは、従業員の負担を軽減した効率の良いやり方が書いてある。
おれは、マニュアルに書いてあるやり方の方が楽で良かった。
でも本間さんは、それを許してくれなかった。
つまり、俺がマニュアルだという厳しい人だった。
ある時、同期の大橋君と一緒に遊びに行こうという事になった。
行く場所は、東京ドームで開かれる「アメリカンフットボール」の試合。
大橋君は、アメリカンフットボールが大好きな人だった。
でも当時の我々は、深夜帯と昼間の勤務が交互になっている勤務体制。
しかし、アメリカンフットボールの試合は、午前中からだった。
つまり、どちらかが深夜帯勤務が終了後、寝ないで行く事になる。
この頃のデニーズは、従業員が少なく、とてつもなく激務だった。
社員はみんな毎日12時間は勤務し、休みは週1回だった。
俺と大橋君もその内の一人だ。
この厳しい中、一緒に行くなら休みの日を合わせないとならない。
しかも、あの恐ろしい本間さんに、この事を報告しないとならない。
なぜなら、勤怠を管理しているのも、あの本間さんだったからだ。
そして、その役目はジャンケンで負けた俺になった。
俺は恐怖に満ちながら、本間さんに休みを合わせてくれと頼んでみた。
そうしたら当然、めちゃくちゃ怒鳴られダメだと言われた。
アメリカンフットボォォォォルゥダ~!?この状況で度胸あるじゃねーか!
と、めちゃくちゃ怒鳴られてしまった。
俺は仕方なく、大橋君にこの事を電話で伝えた。
そうしたら大橋君は、もうチケットを2枚分用意してしまっているという。
もし行けなかったら、チケット代が無駄になる。
でも、本間さんにもう1度頼みに行くのは、嫌だ。
大橋君も、怖くて嫌だという。
我々は仕方なく諦めて、仕事をする事にした。
この日の俺は、昼間帯の勤務。
俺の仕事が終わり、深夜帯勤務の大橋君と入れ替わる時間になった。
大橋君がふと勤怠スケジュールを見た。
そうしたら、朝見た時と勤怠時間が違っていた。
あの恐ろしい本間さんが、無理して我々の休みを合わせてくれたのだ。
でもよく見ると、その日の本間さんの勤務時間が19時間労働になっている。
あの本間さんがここまでしてくれるなんて、感謝しかない。
そして我々は、本間さんにお礼を言って頭を下げてきた。
そして、アメリカンフットボールに行く日がきた。
深夜の仕事が終わり寝ないで行くのは、言い出しっぺの大橋君。
俺はぐっすり寝ていく事ができた。
試合するフットボールチームは、アメリカから来日した2チーム。
「ニューオーリンズ・セインツ」と「フィラデルフィア・イーグルス」
東京ドームで試合が行われた。
俺は、アメリカンフットボールには、興味がないがルールは知っていた。
それは、ファミコンのゲームでやった事があるから。
でも、会場のもの凄い盛り上がりに飲まれて凄く興奮してしまった。
最初から最後まで立ちっぱなしで、両手を振りかざして興奮して見ていた。
まるで、ロックフェスティバルの様な熱気と歓声が上がっている。
そんな中、大橋君は椅子に座ったまま爆睡していた。
まぁ深夜明けだから仕方ないかと思い、俺は1人で盛り上がった。
試合が終わり、勝ったのは「ニューオーリンズ・セインツ」
俺は、汗をびっしょりかき、のども枯れ、コーラも2L飲み干していた。
興味は無かったと言え、俺は最高の楽しさを味わえてご満悦だ。
大橋君は、ほぼ寝ていたので凄く悔やんでいた。
でも、俺は最高に楽しかったのでどうでも良かった。