6月1日に、10万円の生活給付金が振り込まれた。
俺の住む荒川区の住民の中では、1番早いかもしれない。
荒川区は、5月28日から申し込みの封筒を配達し始めた。
でも俺は、3週間前に区役所に封筒を取りに行っていた。
そして、その場で申し込みを済ませたので早く振り込まれた。
俺は、荒川区から来る申し込みの封筒を待ていられなかった。
いつ来るか解らないし、いつ振り込まれるのかも解らない。
そんな信用できない事を、指をくわえて待っているのがバカバカしかった。
でも俺が思っていた状態とは、少し違っていた。
俺の知り合いや親は、申し込みの封筒が6月1日に配達されたらしい。
5月28日から配達し始めて、たった2日で届くなんて奇跡の速さだ。
俺の所に来たアベノマスクさえ、5月28日だった。
でも給付金の受付は、今頃と凄く遅いが。
しかも配達された申込用紙は、住所記入済み。
なぜ、住所ごとき記入する時間を取ってまで申し込みを遅くする。
俺は、不思議でならなかった。
でも俺は昨日、区役所に用事があり出向き、この時その理由が解った。
俺は、今年からフリーランスとして働く為に会社を辞めた。
それで、社会保険から国民健康保険に切り替える為、区役所へ行ってきた。
その時、仮設的に用意された個室に案内された。
ここで、対面になり保険の切り替えの説明を詳しく受けた。
たかが保険の切り替えに、詳しく説明受けるなんて不思議だった。
俺は、説明が終わった後、なんでこんな丁寧な対応をするのか聞いて見た。
そうしたら役所の手続きは、みんな難しすぎて1回では出来ないらしい。
みんな必ず1回は、間違えた記入をしたり必要な書類が無かったりする。
その度に何度も手続をやり直す時間の方が、遥かに時間がかるかららしい。
なので、出来るだけその場で説明されながら書類に記入してもらう。
次回来る時は、チェックシートを見て必要書類を集めれば良いとの事。
確かにトータルで見れば、これが役所仕事の時間のロスが1番少ない。
俺は、全体の人の状況を見ていなかった事に気が付いた。
そして、1人1人にこんなに丁寧な対応をする職員を褒めてきた。
今まで役所の仕事に不満だらけだったが、身に染みて苦労が解り見直した。
区役所で国民健康保険の丁寧な説明を受けた時、担当してくれた人が居る。
この人は、70歳位のお爺ちゃんだった。
話を聞いていると、国の制度の事を何でも知っていて凄く頭が良い。
どんな質問をしても、きちんと答えが返ってくる。
俺が今まで出会った区役所の人間は、解らない以外答えなかった。
俺は、この事で質問するのは諦め、自分でネットで調べる事にしていた。
しかし、こんな頭が良くて、人当りも良く、頼りになる人間が居た。
俺は正直、衝撃が走った。
しかも、昭和時代の、とても気さくで、おおらかな、お爺ちゃんだった。
俺は、久しぶりに心許せる人間に出会った気がした。
こんな人、もう一生出会えないかもしれない。
見習うべき目指す人間性を持った人と出会えた気がする。
でも、これが俺にとっての一生の内で、最後の1回かもしれない。
俺は、この人の事を一生忘れない。