8歳の時。
当時住んでいた三郷団地のすぐそばに、蛇山と言う広大な空き地があった。
ここは、三郷市が管理していた開発地区だった。
でも全く手入れをされてなく、荒れ放題で完全に野生の住処とかしていた。
ここは、泥沼があり、高い草木が生え、奥には湖まであり、崖まであった。
俺は、よくここに1人で遊びに行っていた。
とある夏休み。
友達が蛇山で、カブトムシを採って来ていた。
俺は、それが凄くうらやましくてどうやって採って来れるのか聞いてみた。
そうしたら蛇山にある木に、夜に行き蜂蜜を塗っておくらしい。
そして、朝行くと採れると言っていた。
俺は早速、母親から蜂蜜を奪って蛇山の木に夕方頃塗ってみた。
そして次の日の朝、蛇山に行ってみたらカブトムシなんていない。
しかも、カブトムシが蜂蜜を舐めた形跡すらない。
仕方ないので、また夜に再チャレンジ。
でも、次の日の朝もカブトムシなんていない。
蜂蜜には、蛾が1匹ついていただけだった。
朝と言っても、10時頃だったので朝じゃないけど…。
そして、カブトムシが採れないまま1週間が過ぎた。
この事が悔しくて、カブトムシ採り名人の友達に話してみた。
そうしたらその友達は、マジで取りに行ったんだと、驚いた顔をしていた。
まさかこんな面倒くさい事をやるとは、思わなかったらしい。
その友達は、今度は本気で採り方を教えてくれた。
カブトムシが採れる木は、クヌギ。
俺は、名前を言われても解らないと駄々をこねてしまった。
そうしたら、どんぐりが落ちている木だと教えてくれた。
その木は、子供たちの中でも有名な木だったのでスグに解った。
この木の樹液がが出てればそこにカブトムシが居る。
樹液が出てない時は、特製ブレンドの蜜を使うらしい。
そして採れるのは、朝4時ごろ。
この友達は、俺が本気だと言う事が解って特製の蜜を分けてくれた。
作り方は解らないが、お酒とバナナの匂いがする物だった。
俺は嬉しくなって、もうカブトムシを大量に採る想像が膨らんでいた。
そして学校の皆に、自慢している妄想が暴走し始めていた。
そして俺は、前日の夕方にクヌギに蜂蜜を塗って、朝に採りに行く事にした。
次の日の朝、俺は顔が青ざめた。
目が覚めたのは、朝7時頃。
完全に大寝坊だ。
俺は、母親の「朝ごはんは?」の声を無視して、急いで蛇山に向かった。
そうしたら当然、何もなかった。
俺は、仕方なく半べそをかきながら家に帰って行った。
そして、この日の夕方にまた蜂蜜を塗りに行った。
明日こそは、絶対に早起きしてカブトムシを採ると心に決めて…。
次の日の朝。
目が覚めたら、また7時過ぎ。
試しに見に行ったが、当然何もなし。
俺は、早起きできない自分に悲しくなって、涙が出て来た。
今度は、母親に朝4時に起こしてもらうように頼んでみた。
そして次の日の朝、目が覚めたのは朝7時。
俺は、テンパって「母親に起こしてって言ったじゃん!」と詰め寄った。
そうしたら母親は、ちゃんと起こしてくれたらしい。
この時一度起きたが、眠すぎてまた寝てしまったみたいだ。
でも、全く記憶がない。
こんな事が1週間くらい続いてしまった。
この頃になると母親も、呆れて起こしてくれなくなってしまった。
俺は、こんな自分に悲しくなってカブトムシの採取を辞めてしまった。
夏休みが終わる8月下旬頃。
俺は、また蛇山に遊びに行っていた。
そうしたら枝に刺さったフランクフルトみたいなカマキリの卵を見つけた。
俺は、おもむろにそれを家に持ち帰って育てて見る事にした。
そして、母親に許可を得て、植木鉢にカマキリの卵を刺した。
夏休みも終わり、とある9月の上旬の綺麗な青空が広がる気持ちの良い朝。
ベランダから母親の物凄い悲鳴が聞こえた。
俺は、何事かと急いで向かってみた。
そうしたら、見事にカマキリの卵が羽化していたのだ。
物凄い数で、200匹くらい居た気がする。
庭に干してあった洗濯物にもうじゃうじゃくっついている。
俺は、この時カマキリの卵が羽化した事で嬉しくてたまらなかった。
そして虫かごに、どんどん詰めていっていた。
その間母親は、血相変えて掃除機を持って来てカマキリを吸い込んでいる。
俺はそんなの気にせず、カマキリを集めた。
あらかたカマキリが片付いた後、俺は母親に呼び出された。
そして、猛烈に叱られてしまった。
もう「カマキリの卵は禁止!」と外まで聞こえる声で怒鳴られてしまった。
その後、虫かごに採ったカマキリも捨てられてしまった。