17歳の時。
俺は、生まれて初めてスキーに行ってきた。
この当時は、スキーが大流行した時代。
そんな中、ミーハーな友達の「やーもん」に行こうと誘われたのだった。
彼の本当の名前は「山本君」
我々仲間内のあだ名で「やーもん」と、呼ばれている。
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俺は、ドラマでかっこ良い俳優さんが、スキーをしていて憧ていた。
それを見て、スキーをしたいと感じていた。
しかし、下手くそな滑をみんなに見られて、かっこ悪く思われそう。
その姿を見られたら、絶対女の子に笑われる。
それが怖くて、スキーを始められないでいた。
この時の俺は、最初からいきなりモテたかったのだった。
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でも、やっぱりモテたくて、せっかく誘われたからスキーに行く事にした。
ゲレンデで、初心者のカッコ悪い滑りを見られるのは、俺だけじゃない。
友達のやーもんも、同じ土俵だ。
そう思えて、恥を書く事が、覚悟できた。
そして、もう2人友達を誘い、スキーに行く事が決定した。
誘った友達は「葛西君」通称葛西と「松浦君」通称マッタン。
この初心者2人が加わり、とても心強かった。
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行く場所は、金沢の「白山セイモアスキー場」
ここは、温泉もあり、中上級者も満足できる、本格的な場所だった。
でも、その前に道具を準備しないとならない。
主催者のやーもんは、修学旅行でスキーに行ったので、道具が揃っている。
我々残り3人は、道具なんて無いので、お茶の水に買いに行った。
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しかしスキー道具は、全部高い。
高校生にとっては、非常に高価な物ばかりだ。
この時、道具を全部揃えるお金が無かったので、ウェアーだけ買った。
後は、現地でレンタルする事にした。
何故ウェアーだけ買ったのかと言うと、レンタルの物は、着たくなかった。
何か汗臭そうで、そんなの着るなんて、どうしても嫌だったのだ。
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そして当日。
我々は、とうとう生まれて初めてのスキー場にやってきた。
スキー場で、カッコ良く決めたウェアーを着て、板はレンタル。
とりあえず、見た目だけが整った。
滑り方は、経験者のやーもんが、教えてくれた。
教えてくれた滑り方は「ボーゲン」
スキー板をハの時にして滑る、初心者滑りだった。
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とりあえず俺は、ボーゲンで初心者コースを、滑る事にした。
ボーゲンは簡単で、すぐにマスターできた。
でも真横では、小学生の女子が、板を真っすぐにすして滑っている。
その子は「パラレル」と言う、上級者滑りをしていたのだ。
それを見た俺は、涙が出てくる程、自分がかっこ悪く思えた。
そこで俺は、初日からいきなり、パラレルを練習し始めた。
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パラレルは、やーんもんが知っていたので、とりあえず形だけ教わった。
体重をかかとにかけ、お尻をプリプリ揺らして、方向転換するらしい。
そして、実際にやってみたが、難しくて全然できない。
お尻だけプリプリ揺れて、全然曲がれなかったのだ。
きっと、バカ丸出しの滑りで笑われてると思い、恥ずかしかった。
実際の所、誰にも全く気にされてないけど、何か恥ずかしい。
俺は、そんな気持ちの中、早く上手くなりモテたくて、必死だった。
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1日目は、全くパラレルが滑れず、終了してしまった。
この後、温泉に入っり、パラレルで真横を滑走していた小学生を思い出す。
この事を思い出したら、穴があったら入りたい程、自分の滑りが情けない。
そして、温泉に潜ってしまった。
明日こそは、パラレルが出来るようになり、ブイブイ言わせてやる。
そう心に誓ったのだった。
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翌日、しばらく初心者コースで、パラレルを練習した。
そして、何とか方向転換が出来るようになった。
俺は、この時、モテたいがあまり気持ちが焦っていた。
そして思い立った事は「よし!次は上級者コースだ!」
そう、とてつもなく無謀な事を、本気でやるつもりだった。
そして、迷わず上級者コースのリフトに乗り込んだ。
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俺は、リフトの上で妄想を膨らませていた。
「上級者コースを滑れれば絶対モテる!」と、確信していた。
そして、上級者コースの山の頂上に到着。
しかし、そのコースは、コブだらけの断崖絶壁だった。
この状況を見た俺は、一瞬で暴走していた妄想から目が覚めてしまった。
あまりの高さに俺は、本気でビビり「俺、死にに来ちゃった」と感じた。
でも、下りのリフトなんて無く、滑るしか戻る術がない。
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俺は、上級者コースに心底恐怖したが、思い切って滑り出していった。
しかし初心者の俺が、まともに滑れる訳も無く、当然転びまくる。
コブなんて避けて滑れず、全部のコブに乗り上げ、吹っ飛んで転ぶ。
そんな感じで、滑ると言うより、転げ落ちて行った。
滑走距離1%、転がり距離99%。
もう、転がりすぎて、受け身の方が得意になってしまった。
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こんな感じで滑って行く内に、もう転がりすぎて、何も感じなくなる。
転がる事自体、楽しくなってきた。
そんな滑りをしていた時、コブでジャンプして、着地に失敗してしまった。
そして、足首を180度近くひねり、そのまま転がり、止まる事が出来ない。
そして、勢いよくコース外に吹っ飛び、落ちてしまった。
この時、空中を飛んでいた記憶がある。
そして、降り積もった雪のクッションに、大の字で衝突してしまった。
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雪のクッションに埋まった俺は、何とか這い上がり、状況を把握する。
そうしたら、スキー板が外れて、雪に刺さっていた。
俺は、痛めた足をこらえて、スキー板を抱えコースに戻った。
そしてしばらく休み、冷静さを取り戻した。
よく見ると、上級者コースには、人が誰もいない。
みんな難しすぎて、ここに来ない事を、今やっと理解した。
俺は、今までこんなコースで滑っていたのだ。
バカすぎる。
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この後、板を見たら、靴の留め具が壊れて、装着できない状態だった。
足も痛いし俺は、歩きで上級者コースを下っていた。
なんともバカで情けない自分に、何だか呆れてしまった。
モテたいあまり、無茶しすぎたのだった。
身の程を、もっとわきまえないとならないな。
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上級者コースを下り、友達と合流した。
その俺の、雪だらけの姿を見て、みんな唖然としていた。
そして「転がりまくってコース外に落下しただろう」と言われてしまった。
この時、あまりの恥ずかしさに、顔が真っ赤になった。
そして俺は「いやぁ~別にぃ~、何も無かったよぉ~」とイキがった。
そうしたら、みんなにそれが嘘とバレて、大笑いされてしまった。
非常に、自分が情けなくて、恥ずかしい。
この後、足を痛めたので、もう1人で部屋に戻りしょんぼりしていた。