7歳の時の日曜日。
この頃は、まだ学校が日曜日しか休みでは無かった。
俺のこの頃の日曜日は、朝6時に起きていた。
家族はまだ寝ている時間。
それは、再放送の「マジンガーZ」を見る為だった。
マジンガーZは、「U」というチャンネルで放送していた。
この「U」というチャンネルは、その土地専用の番組をやるチャンネル。
この頃は、埼玉県の三郷市に住んでいたから、埼玉放送の番組だった。
この「U」チャンネルは、ダイヤル式のブラウン管テレビに付いてた。
このダイヤルをガチャガチャ回してチャンネルを変える。
この頃のテレビは、スイッチも今とは違っていた。
音量調整スイッチを引っ張り、ONにする。
俺はこの頃、まだ背が低く背伸びをしてスイッチを引っ張ていた。
そして背伸びをしたままダイヤルを回し、チャンネルを変えていた。
「マジンガーZ」を見たいが為に、凄く必死だった。
朝6時に起きても、まだ家族は寝ている。
その誰にも支配されずに、自分の好きな番組を見れる。
この瞬間の、自分だけしかいない世界に幸せを感じていた。
そして、大好きな「マジンガーZ」を見る。
この上ない幸福感だった。
そして、「マジンガーZ」が見終わり、まだ家族は寝ている。
この全世界に俺1しかいない様な、誰にも支配されない感覚が好きだった。
それは、俺の親は口うるさく厳しかったからだ。
毎日、押さえつけられているストレスが溜まっていく。
だから俺は、家族が寝ている日曜の朝は、何も言われないから好きだった。
この時間だけは、何をしても大丈夫だと。
俺はこの後、外に散歩に出かける。
家族が起きるのは、朝9時過ぎだから、それまでに戻れば朝食に間に合う。
俺は、寝ている母親を一瞬起こし、外に遊びに行ってくると伝え外に出る。
この日は、外に出ると雲一つない快晴が広がっていた。
そして、冬の冷たい風が吹いていた。
まだ、外には誰もいない。
まさに、俺一人しかいない世界がそこに広がっていた。
俺はその空間が凄く気持ち良くて、いつも踊りながら走っていた。
どこに行くあてもなく。
街は静かで、俺の足音しか聞こえない。
そのまま走っていると、必ず商店街に出る。
いつも人混みで溢れかえっている商店街も、この時間は誰もいない。
ここも今だけは、俺一人だけの世界だ。
俺は、この商店街にある自動販売機で、毎回コーンスープを買った。
もちろんお金なんてない。
どうしたかというと。
自動販売機の下を覗けば、そこにはお金が落ちている。
このお金を、近くにあるシャッターを開ける棒で拾っていた。
自動販売機の下は、俺にとって宝箱だった。
ちなみにこの事は、父親が教えてくれた。
立派な父親だ。
この自動販売機の下からお金を拾うのは、誰もいない時だけ。
人が居ると、怒られるからだ。
そして俺は、コーンスープを買って近くのベンチで飲む。
毎回、なんて優雅なダンディズムを味わえる時間なんだろうと幸せだった。
この後、誰もいない公園で1人で遊ぶ。
そうすると、帰らなくてはならない時間になるので、家に戻る。
雲一つない快晴の青空の下、心地良い冬風が吹く。
街には誰もいない。
俺一人だけの世界。
この日曜日の朝の、この空気、この感覚、全てが幸せだった。
誰にも何も言われず、自分の好き放題できる時間。
宿題の事も考えなくて良い。
大好きなコーンスープも、自由に飲める。
今も忘れられない、幼い頃の最高の幸せだ。