4歳の時。
母親は、料理教室に通っていた。
場所は、三郷団地の公民館。
ここに料理の講師が来ていて、火木ようびの2日間通っていた。
当時の母親は、料理が凄く下手だった。
そこで父親に、料理教室に行くように勧められたらしい。
この当時、俺は4歳で料理の味なんてよく解らない年齢。
でも、確かに4歳の俺でも母親の料理は、まずいと感じていた。
何がまずいのかと言うと、とにかく味がない。
味付けがどうのという以前に、まるで魔法がかけられた様に味がない。
我々は、この味のない料理を毎日我慢して食べていた。
でも、さすがに我慢しきれなくなり、父親が料理教室を進めたのだ。
この料理教室に行く時間は、夕方4時から。
このせいで母親は、幼稚園に迎えにこれない時があった。
その時は、事前に幼稚園の先生に連絡してくれていた。
そして俺は、幼稚園の先生に1人で帰るように言われ帰った。
帰る場所は、家ではなく料理教室が開催されている公民館。
ここに行くと、いつも丁度料理が完成寸前の時間になっていた。
毎回ここの公民館に行くと、すごく良い匂いがする。
そして料理が完成して、試食タイムになる。
俺は、この時間を楽しみにしていた。
それは、ほかの人達の料理も食べられるからだった。
もちろん母親の料理も食べる。
でも、ほかの人の料理と比べると、明らかにまずくて嫌いだった。
ほかの人達の料理は、しっかりと味が付いていて凄くおいしい。
俺は、母親の料理が何でこんなにおいしくないのか不思議だった。
ある日いつもの様に、1人で料理教室に向かった。
その日は、ドーナッツを作っていた。
この日は、ドーナッツを作っている事もあり、格別教室が良い匂いだ。
俺は、この日ばかりは大好きなドーナッツなので、試食を楽しみにしていた。
そしてドーナッツが完成し、試食時間になり母親の料理を食べてみた。
でも、明らかに何か違っていた。
何かしょっぱい。
母親に、しょっぱいと伝えたら、母親が調味料を見て驚いた。
塩と砂糖を間違えて入れたらしい。
俺は、こんな漫画みたいな出来事が現実に起こるとは、思わなかった。
そして俺は、あまりのまずさに泣き出してしまった。
この時、母親は俺に言い訳をして誤っていた。
料理教室で作る料理の材料は、自分で準備しないとならない。
この時、砂糖を家から持ってきたつもりが塩を間違えて持って来たらしい。
それを今まで気が付かなかったという事だ。
俺は、この後ほかの人が作ったドーナッツをもらい、何とか口直しが出来た。
ほかの人のドーナッツは、粉っぽかったが物凄くおいしく感じた。
母親の塩ドーナッツと比べると、天地の差だった。
この時を境に俺は、母親の料理のへたさは、怪獣級だと感じる様になった。
現在の母親の料理は、この時から比べら、遥かにおいしい。
でも味が薄いのは、いまだに変わってない。
母親は、薄味が好きなのだ。
俺の家族は、父親、弟、俺、と男家族で、全員濃い味が好きだ。
だけど、今までずっと母親好みの味に付き合ってきた。
俺と弟は、子供の頃に味が薄くておいしくないと、よく言っていた。
でも父親は、何も言わずに食べていた。
この味に何も言わないなんて、大したものだ。
以前、この思い出をツイッターで書いた事がある。
そうしたら、料理をする人から結構反響があった。
その内容の多くは、塩と砂糖を間違える事は普通にみんなあるとの事。
この時、確かに毎日料理をすれば、それ位の間違があるものだと理解した。
俺のあの強烈な味の思い出は、誰もがする失敗の1つに過ぎなかったのだ。