前回のお話はこちら!
Naottaの親友のダニエラはユダヤ人富豪の娘であり、その漫画並みのスケールにニューヨーク新参者のNaottaは圧倒されるも、Naottaとダニエラは食通という共通の嗜好を通してなんでも話す仲になる。お金の心配も無く好きなことのできるダニエラにはどうしても手に入れたいものがあった。
Naottaとダニエラはユニオンスクエア近くのファーマーズマーケットのカフェUnion Fareでブランチしていた。
「もう6年も同棲しているのにアレックスは一度も結婚しようと言ってくれないの。」
なるほど、確かにそれは危険信号。
ダニエラによると、
・父所有のアパートで同棲していてユダヤ人の父親は厳しいから結婚しないと父親が許さない。
・子供も欲しいから30歳がリミットで結婚する気がないなら次に行かないと。ダメなら卵子の冷凍保存も考えてる。
おぉー、現代ユダヤ女性ってコンサバかつ先進的なのね。これには軽くビックリ。
しかしとにかくアレックスは結婚の話になりそうになると急にイラついて機嫌が悪くない、話を先へ先へと伸ばそうとするらしい。
これ普通だったらかなりまずいんじゃないか??とNaottaは思ったが、アレックスを知っているNaottaは彼がいい加減な性格には思えなかった。むしろ頑固すぎるぐらい真面目で誠実、かつ密かな野望を秘めてそうな情熱家に見える。(そしてマット・デイモン似のイケメンでもある。)
とにかく頭も切れてビジネスウーマンらしく推しが強いダニエラも、彼だけは腫れ物にでも触るかのように大切に扱うようにして我慢していた。
「・・・とにかく近いうちにアレックスに最後通告するわ。」
ダニエラはまだ少し迷っているように見えたが、ある程度決心しているようだった。
もう一つ、彼女にはビジネスパートナーと一緒に取り組んでいる大切なプロジェクトがあった。
それは新しいコンセプトのレストランのオープン。
彼女がずっと温め続けてきたオーガニック野菜スムージーのアイデアを遂に実現させる為に動いているのだ。
「普通の野菜スムージーじゃないの。これまでのスムージーは市場から漏れた売れ残りの古い野菜を使っていて栄養価もだだ下がり。ハイドロポニックというテクノロジーで水耕栽培された野菜には普通の何100倍もの栄養があるの。」
ダニエラは大切な秘密を教えるかのように話してくれた。
・本当はずっとこういう事がしたかった。
・大きなチェーン店が顧客の裏で不誠実にオーガニックを唄っているのが許せない。
・こんな小さな野菜にコミュニティを元気づける素晴らしいパワーがあるのよ。
野菜は全て近郊の農家から仕入れ、完全な地産地消を目指すらしい。
彼女のこれまでのキャリアとアイデアの集大成であり、我が子の様に大切なプロジェクトだろう。
ジュースバーとは言えお店のオープニングはものすごく大変そうだった。彼女とビジネスパートナーは開業準備の為に土日休みなく1日15時間以上働いているらしい。
ニューヨークのレストラン業界は厳しい。この店のようなベーカリーでも高いクオリティを維持し続けるのは大変だ。
Naottaにはダニエラがかなりストレスが溜まっているかに見えて少し心配になったが、トラブル続きになりがちなニューヨークの新規店舗オープンもやっと出口が見えてきたところだ。
オープンすればきっと彼女の気持ちも上向きになるだろう。
次回に続く。
この話はフィクションです。
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今回の舞台はファーマーズマーケット近くのこちらのカフェ。
5 EAST 17TH STREET, NEW YORK, NY 10003