名探偵神津恭介の青春時代を描いた中編「わが一高時代の犯罪」「輓歌」の二編。
明智小五郎・金田一耕助と並ぶ日本三大探偵の一人ながら知名度は今一つ、自分も『刺青殺人事件』しか読んだことがないが、高木彬光氏が間違いなくミステリの論理性に自覚的であることは一読すれば判る。
二編とも真相を華麗にひっくり返してくれるし、何より奇人変人もとい個性派揃いの一高(昔あった東大の予備校的存在)の面々ですら、こうして青春ミステリに仕立て上げてしまうのだから。
特に前者の、最後にタイトルの意味を理解した瞬間のあの感動ときたら……!
タイトルについて追記。
「わが一高時代の犯罪」は、木々高太郎の長編『わが女学生時代の罪』に拠るものだが、内容は全く似ていない。
『匣の中の失楽』と『棺の中の悦楽』くらい似てない。
そういえば『匣の中の失楽』も青春ミステリだったっけ。あちらは登場人物にも実在のモデルがいたそうだけど、一高のほうもそうなのだろうか。
あと「輓歌」に山風と茨木歓喜が揃って出てきたのには笑ったというかメタミステリかよとツッコミたくなった。
追記の追記。
矢内原忠雄の名が一箇所だけ出てきたけど、丁度青空文庫の『イエス伝――マルコ伝による』を読んでいるところ。