短編。
最初の一文でこれから起こる事件を明らかにし、以降その仔細を披露していくパターン。
思えば前回読んだ「海難記」もそうだったし、更に以前の「湖畔」も然りだ。
無論「川波」など当て嵌まらないものもあるが、書き出しの手法の一つではあったのだろう。
異国フランスの雪山の厳しくも美しい情景描写。
クレヴァスに落ちる妻と生還した夫の対比。
一転して世俗的な裁判の様子。
それから事件現場の近くに小さな山小屋を建てる男。
その真意が明かされるラスト。
予想の少し上を行くプロットの妙。
この少し上という匙加減が見事なのだ。