短編。
後白河法皇の院政時代、鬼畜の如き中納言を従僕に殺させた廉で、後妻と実の娘が死刑になるところから話は始まる。
過去に戻って事の次第が明らかになるのだが、淡々とした描写ながら全く救いがない。
しかも海外で実際にあった尊属殺人を翻案したとのことで、益々気が塞いでしまう。
スタンダールやアントナン・アルトーも同じ題材を扱っており、名だたる文豪や劇作家を素通りさせない求心力を持っているのは確かだ。
タイトルは本文中に明示がなく、道長に代表される名門藤原氏に対する当てつけか何かだろうか。
〈月のない夜〉という描写が一度だけ出てくるけど、全然重要なシーンではないので、やはりタイトルの由来ではなさそう。