時代物の短編。
『近世実録全書』の「姫路隠語」が種本で、大佛次郎や松本清張も同じ題材で短編を書いているそう。
贅肉を極限まで削ぎ落とした文体は、文学と実録の境界線上。
不行跡の息子を斬って捨てた忠臣の蔵人は、家格を引き下げた二人を斬殺した末、粛々と切腹する。
そんな殺戮マシーン以上にゾクゾクするのが顛末を聞いた客人の主水。
自若として煙草を喫い事務的に手紙を認めるそのさまは、ストイック極まりない作家の自画像のよう。
斬られ際の悲鳴をタイトルにするセンスもさすが。