再読。
ボスフォラス以東唯一つと称される、壮麗かつ閉鎖的な城館での連続殺人を追うは、ホームズ由来の苗字を持つシリーズ探偵・法水麟太郎。
オーソドックスな筋書きながら、過剰な衒学趣味の大伽藍により遂に三大奇書の一を占めるに至った驚愕の大長編探偵小説。
〈第一容疑者が結局真犯人〉という最大級の肩透かしは、常に意外な犯人を求められるミステリの宿命への挑発か、はたまた単なるプロットの要請か。
ミステリ的なものの長所と短所を詰めに詰め込んだその饒舌ぶりは、閉幕後も熱狂的ファンとアンチを生み続けている。
再読で印象が変わったのが当主旗太郎の憐れさ。
真犯人の緊張と警戒を取り去るためだけに、法水にお座なりの捏造をぶつけられた当主旗太郎。
嫌疑の論拠として弓と提琴の持ち替えを指摘され、結局無実ではあったが作者にすらその行動の真意を忘れられた(無視された?)当主旗太郎。
当主なのに実は先代と血縁関係のなかった旗太郎。
旗太郎よどこへ行く。
閉幕。