前作までのキャラを大量投入の上、サルトルとボーヴォワールもぶち込んだ集大成的大作。
400字詰原稿用紙換算2200枚と、『哲学者の密室』の2400枚に迫る勢い。
Kindle版なので重みはない。
今作に至り、ナディア嬢の推理はサイコの域に達してしまった感すらあるが(指を○るとか正気かよ)、例によってムッシュ・ヤブキに前座を押しつけられたと考えると哀れに思えなくもない。
過去篇を挟み込む構成など『哲学者の密室』との比較は避けられないが、個人的には本作のほうが面白く読めた。
イリイチが完全にチョイ役なのがちと残念。
挫折者続出が予想される中盤、過去篇について。
延々と続く国際情勢描写はかのドグラ・マグラにおける「俺今何読んでるの……?」状態を彷彿とさせるが、これを退屈の一言で斬って捨てるのは忍びない。
信者たるものここは『テロルの現象学』の復習的側面を見出すべき。
ドゥルッティ・コラム=ヴィニ・ライリー好きなら元ネタのドゥルティ登場にテンション爆上がりだし、謎の老人ゲオルギイ(これ絶対グルジェフだよ!)や『虚無への供物』作者の太腿エピソードなど小ネタも散りばめられ、全くもってこの作者ノリノリである。