
(前回のあらすじ:
ナンパの長期講習を申し込んだ僕は、
課題をこなす日々を送っていた。
また共に切磋琢磨する仲間の存在も知った。)
さて、グループLINEに移ってからも
課題図書や課題動画の感想提出は続いていた。
内面は鍛えている。
次は外見のテコ入れだった。
ある日、講師から空いている日を尋ねられた。
そしてその日に指定する美容院で髪を切るように告げられた。
場所は六本木。
当日、わざわざ講師も美容院まで着いてきてくれて、
美容師にどういう感じで切るかまで伝えてくれる。
これには純粋に驚いた。
そこまでするかと思った。
僕のモサモサだった頭は
短髪ツーブロックに変身した。
髪型のあとは服装だった。
別の日に皆で新宿の伊勢丹に集まった。
実はここで初めてグループ全員で顔を合わせることになった。
講習生の一人は僕と同じタイミングで単発講習を受けたやつだった。
一緒にカフェで時間を潰したいかつい兄ちゃん。
そしてもう一人は僕と同類というか、真面目なひよっこタイプだ。
三人で講師に連れ回され、それぞれにあった服装を言われるがままに買っていく。
シューズ、パンツ、シャツ、一式全部買わされた。
KENZO, MONCLER, Zanotti...
どれも自分が今まで身につけたことのないブランドのものだった。
これの何がいいんだろう。
自分には全くわからなかった。
髪型を整え、ブランドを身に着けた僕は
まだまだそれに馴染めていない。
まるでひよっこが強がっているようにしか見えなかった。
家に帰ったら、間違いなく親に
こいつ頭おかしくなった、と思われるだろう。
けどそれでもよかった。
それよりも違う世界に触れてみたかった。
さて、外見は準備した。
内面も鍛えている。
次は何をするのか。
他の講習性も気になっていたのだろう。
伊勢丹を出たときに、講習生のいかつい兄ちゃんが講師に尋ねてくれた。
講師は不敵な笑みを浮かべていた。
彼はいつもこういう表情をした。
そしてこう言った。
「君たちに足りないのは"経験"です」
経験ですか、、
そう呟き返す三人に
「今からタクシーでここに行ってください」
と、とある場所を示してきた。