とてもおこがましいのだけれど、わたしは本を読むひとたちのために、すこしでもいいものを提供したくて校正者になった。
わかいころは、読書がすきだから、本がすきだから、書店がすきだからというような、漠然とした理由のみで本にまつわる仕事に就こうとおもっていたし、ほんとうに就いた。
でもいまは、会社とか発行元とか、利益とか、そういうところを飛び越えて、読者によいものを提供したくて校正者をしている。
わたしはある意味ジョブホップしまくっているのだが、いま所属している会社には丸4年ちょっと在籍して10月末に去ることになる。さようなら。今までどうもありがとう。学んだこともたくさんあったが失望することもたくさんあった。それもまたいい経験だったのだともおもう。
わたしのペレストロイカはいつだって煙たがられ、いつだって失敗した。所属している意味を見いだせず、なんにもしないでいるひとも給料が自然とあがるしくみに困惑し、何もしないほうがいいみたいだな…と、虚無感にも襲われた。わたしはいい作品を、風通しのいい環境を、前向きになるような気持ちをつくりたいだけで発言していただけだったんだよ。それだけだった。でも伝わらなかった。もう一生伝わらない。
未来を見据えてひとを育てることをしない社風。若者をたいせつにしない空気。できる人が辞めていくのに、それに気づけない怠惰さ。そんなところでは無心で校正をするよりほかなかった。読者だけのために。
でももうそれも終わりを告げる。ぼろくそ書いたけれど感謝したいことはきちんとある。こころからありがとうございます。と言いたいことがたくさんある。いい子たちにもであえた。それがあるから救われてもいる。
さて。
11月から新しい生活が始まる。いまからとてもわくわくしている。でもなぜだか寂しくもなっている。なぜなのかわからない。環境がかわるときの燃え尽き症候群のような感じだ。ふとした瞬間に涙がでてくる。また季節がいけない。夏から秋にかわる季節。空気がかわっていくのを受け止めきれない。受け止めなくてもよいのかもしれない。でも受け止めようとしてしまう。わたしの悪いところはここにある。
すこし受け流してみること。わたしの名字は小川なのであるから。さらさらさらさら流してみること。それを実行していこう。10月31日までは。わたし天才……。