こんにちは、Pockyです。
本業についてあまり書いたことなかったので今日は私の職業、航海士の仕事についてご紹介しようと思います。
航海士というのは船を決められた目的地まで運航することが仕事です。
陸上のように道路はありませんが海の上でも「交通ルール」は存在するのです。
例えば行き違う船や横切る船に対してどちらの船が優先かやどちらに避けるかといったことが決まっています。
また、水深や障害物の関係で通行が制限される海域や潮流の激しい海域では状況に応じた安全なルートを選考することが必要です。
このように障害を避けながらルールに従って安全に船を運ぶことが航海士の役割です。
現在では電子海図やGPS、自動衝突予防援助装置(ARPA)といった航海計器が発達し、レーダーしか無かった昔に比べれば事故を回避することはかなり容易になりました。
それでもやはり最終的に目で確認して判断を下すのは人間であり、船橋(ブリッジ)と呼ばれる操舵室で常時見張りを行う必要があります。
基本的に航海士は3直制となっており、
三等航海士が8時〜12時と20時〜24時
二等航海士が12時〜16時と0時から4時
一等航海士が16時〜20時と4時〜8時
を担当することになっています。これはどの船も大抵同じで、この1日2回、計8時間の航海当直業務のことを「ワッチ」と呼びます。
ちなみに船長は危険の多い海域や緊急の場合に指揮をとるので普段は航海当直には入りません。
私は三等航海士なので朝8時から12時と夜20時から24時までのワッチを担当しています。
まずは朝起きて朝食を食べてから船橋に向かいます。通勤時間は1分です。笑
ワッチには航海士の他に操舵手と呼ばれる乗組員が一緒に入り、主に2人で業務に就きます。
業務といっても大洋航海中は他船や障害物がほとんどないので、操船はほとんどオートパイロット(自動操縦)です。
切迫した状況が無ければ仕事に支障を来さない範囲で、コーヒー片手に操舵手の方と笑い話を交えながら程良い雰囲気でワッチしています。
ワッチ中、運が良ければイルカやクジラにも出会えます。
遭遇したジンベエザメ↓
朝のワッチを終えるとお楽しみのお昼ご飯です。
船には司厨部があり、専用のコックさんが毎日乗組員の食事を作ってくれます。栄養もボリュームも満点で、陸と何ら変わらない美味しいご飯を食べることができます。
お昼ご飯の後は自由時間です。事務仕事があれば片付けたりしますが、主には仮眠を取ったりデッキ(甲板)で運動したり読書をして過ごしています。
また、船が走っていない時は釣りもできます。
夕食後、20時から再びワッチに入ります。
夜は周囲の灯火が見やすいように船橋内の電気は消灯し、真っ暗の中でワッチを行います。
船には右側に緑の灯火、左に赤の灯火が付いており、これにより相手船との見合い関係を把握するのですが、やはり夜の見張りは昼間に比べて気を遣います。
夜のワッチが終われば一日の仕事は終了です。
疲れを癒すべく、お風呂に入ります。
湯船は海水ですが外洋の綺麗な海水なので何も気になりません。
そして勿論シャワーは清水です。造水機により海水から真水を作ることができるので洗濯等も含め、水の節制で苦労することはほとんどありません。
そして就寝。ベッドはふかふかとはいきませんが十分快適です。
太平洋の心地よいうねりが眠気を誘ってくれます。
以上、ざっと航海中の1日の流れはこんな感じです。
航海中は基本的に電波が入らないので携帯やテレビを見ることはできませんが、「不自由を常と思えば不足なし」で、私はさほど苦に感じません。
部屋は冷蔵庫や洗面台なんかもあって充実しているし、一歩外へ出ればオーシャンビューが広がっています。
太平洋の青々とした海や水平線から昇る朝日を眺めると心が洗われる気分です。
また、寄港地に入ればしばしの休暇があり、観光もできます。
旅費をかけずに海外にも行けるのでとてもありがたいです。
私がいる船では年間180日くらい航海しています。陸にいるときは休みの日が多いので、まとまった休みが取れるのも大きな利点です。
ちなみに航海士になるためには海技士という資格が必要です。
筆記試験と口述試験があり、口述の受験には乗船履歴が必要なので、乗船実習がある水産高校や海洋系の大学に進学することが航海士になるうえで一番の近道です。
しかし最近では新卒者を対象に航海士の自社養成を行っている大手船会社が増えてきています。そのため一般大学から船会社に就職し、研修を行なって航海士になるというパターンもあります。
いずれにせよ現在は船員不足なので就職にはかなり有利な分野かと思います。
これから将来を考える方は検討してみてもいいかもしれません。