本著は経済成長の指標であるGDPについて再考を促す本です。現代の国際社会は経済成長とGDPが絶対的指標です。私もこれはどっかの環境活動家のように否定するようなことはしません。確かに経済成長は人間社会に大きな貢献をしました。しかし行き過ぎていると思うような兆候は随所に見られます。
簡単におさらいをすると、GDP(Gross domestic product)(国内総生産)は一定期間内に国内で産み出された付加価値の総額のことであり、次の式で表される(Wikipediaより)。
GDP=C+I+G+EX-IM
Cは企業の支出(投資支出)、Iは個人の支出(消費支出)、Gは政府の支出(公的資金)、EXは輸出、IMは輸入をそれぞれ示す。
この式を見ると二つの疑問が浮かぶ。人口が多いほど有利であることと、公共投資を増やせばGDPは上がることである。数年前にGDPが世界三位に落ちたと騒いでいたが、お隣の国は日本の10倍の人口があるので、そりゃそうだろうと思う。第一人口減ってんだからGDPが減るのはしょうがない。そして政府支出は、増やせば増やすほどGDPは水増しできるのである(そして国債というなの借金はじゃんじゃん増える)。
企業で言えばGDPとは売り上げであるが、普通の感覚からすれば売り上げだけ見てその企業の経営がうまくいっているかを判断する人はいない。少なくとも利益を見る。しかしGDPは利益を反映していない。もっというと、投資など蚊帳の外である(以前経営に関する講義では、売り上げを評価するのは課長クラス、利益を評価するのは部長クラス、投資を評価するのが経営陣らしい)。要は放漫経営で経費垂れ流しでもモーマンタイなのである。
この本で一番刺さったフレーズは、次の二つである。
おおう、マジか。でも確かに。
子供を産んで育てることは究極の投資であるはずであるが、GDPと経済からすれば親が働けず、経費もかかるので無駄だという。実際出産子育てで生活が苦しくなる家庭は多い。人口増やさないとGDPは下がるのに、増やそうとしても下がるのである。大きな矛盾だ。
自然は経済的に見て価値がない、というより評価する基準がない。しかし現在の経済学的には土地を開拓して、天然資源はじゃんじゃん使って、無駄に物を作った方がGDPは上がるのである。発展途上国にこれを推奨している。結果として水や土や空気を汚して、それらの価値はかえって上がる。これも大いなる矛盾である。
もちろんいますぐGDPを捨てろということはない。GDPはやはり有効な指標である。しかしこれに変わる指標を早急に取り入れないと、人類に未来はない。