春のオカルトまつりの企画として、ホラー小説2点を紹介します。企画の趣旨と一致していないかもしれませんが、そのときはご容赦ください。
個人的に今最も恐ろしい小説家は貴志祐介さんだと思っています。その中でも最も恐ろしかった、悪の教典と新世界よりをご紹介します。ちなみに貴志さんの他の作品として、鍵のかかった部屋や天使の囀りがあります。
【悪の教典】
世の中にはサイコパスという、罪の意識を持たない反社会的人格を持つ人間が一定数存在する。本作品の主人公蓮実聖司はまさにそのような人間だった。表向きは生徒や他の教師からも慕われる、有能で人気者の高校教師である。しかし裏の顔は自分にとって邪魔になるものは、殺人すら躊躇わずに排除する、サイコキラーであった。
蓮実は自分にとって都合のいい人間は優遇し、様々な手段を使って自分に心酔するようにしむける。反面都合の悪い人間は、社会的、肉体的に抹殺する。しかも自分に疑いや火の粉が向かないように計画的に。自分の立場を悪くするような存在は、疑いのある段階で削除する。しかも罪の意識などなく、むしろハイリスクなスリルを楽しんで。
最後の舞台は担任クラス全員が残る教室が舞台となるが、その恐怖感は別格である。
【新世界より】
全ての人間が呪力という念動力を手に入れ、バケネズミという知性を持った醜いネズミ人間が使役された、1000年後の世界が舞台になる。主人公渡辺早季が子供から成長するにつれて、この世界のルールと隠された1000年間の歴史が知っていく。呪力はあまりに強力であるために、人間同士が殺しあわないように様々な制約が施され、ルールに逸脱した人間は排除される宿命にあった。
呪力が誕生してからの人間の歴史と、非情な制約とルールも恐ろしいが、最後に明らかになるバケネズミの正体に、人間という生き物の恐ろしさが凝縮されている。
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