法科大学院とは、法曹(弁護士・検察官・裁判官)養成制度の一環として設立された大学院であり、卒業すれば司法試験を受験できるようになる学校です。
法科大学院は、未修コースと既修コースに分かれています。
未修コースは法律を学んだことがない人向けのコースで卒業まで3年かかります。
法律をある程度学んだ人が集まる既修コースは卒業まで2年かかるようになっています。
法科大学院は巷では地獄と言われています。私は、かつて法科大学院に通った身として、法等に地獄なのか、検証していきたいと思います。
以下地獄の理由を考えていきます。
1 落ちたら地獄
我々は、大学を卒業して法科大学院に通います。ストレートで大学を卒業すれば、22歳、法科大学院卒業後には、24歳です。司法試験は、卒業後の5月に受けることができ、9月に発表があります。つまり、ストレートで25歳の時に初受験ということです。
司法試験は、5年5回まで受験できます。
つまり、卒業後は無職となり、5年5回の司法試験に落ちれば職歴なし29歳無職になってしまいます。
よって、落ちれば地獄というのもあながち間違ってはいません。
ですが、多くの人は5回受験するまでに諦めて、公務員等別の就職先を目指すので、地獄というのはいいすぎかもしれません。
2 留年したら地獄
先ほどストレートでいけば24歳で卒業と言いましたが、留年する可能性があります。
法科大学院は一般的な大学と大きく異なり、留年に厳しく、多い大学院は、4割ほど留年したりします。少なくとも1割ほどは留年するところが多いのです。
後述しますが、法科大学院は、皆が司法試験を目指して勉強をするつもりで入学し、勉強をしていますから、一般的な大学でいえば、ほぼ全員余裕でAをとれるクラスで勉強をしています。そんな中で留年が1~4割というのはかなり厳しいと言ってよいでしょう。
さて、留年すれば当然1年遅れ、勉強を続けなければなりません。しかし、勉強した分、合格できる力を身に着けられるのでは?と思われる方もいらっしゃると思います。
しかし、司法試験はある種才能の試験と言ってもよい側面があるのです。
何が言いたいかといいますと、司法試験は勉強時間を増やせば受かる試験ではないのです。
司法試験受験回数別の合格率データをみますと、1回目の受験者合格率が圧倒的に高く(平均が20%とすると、35%ほど)、それ以後2回目、3回目と続くにつれ明らかに合格率が下がります。5回目になると年度によれば5%も。
このように、何回も落ちて、ずっと勉強をしても、中々合格できない試験になっています(試験内容は後述)。
受験の前段階の初歩的な大学院の進学時点でふるい落とされた人は、合格は難しいと言っても過言ではありません。
3 試験内容が地獄
司法試験は、2時間(3時間のものも)の試験を8科目受験させられます。
問題は、今までに見たことがない複雑な問題で、分量も多く、3000文字以上の論述が求められます(一般的な国立大学の記述試験の3倍以上)。
脳の記憶力、思考力、想像力、事務処理能力をフルに稼働して答案を手書きで作成していく地獄のような試験です。
法科大学院も、これを想定した試験になっており、問題はやや甘めですが、同じく大量に筆記する必要があり、年2回前期後期に講義ごとに試験があります。
4 授業が地獄
法科大学院の授業は、週に11コマ(90分)ほどです。週平均2~3の授業がある計算です。
授業は、事前配布のレジュメの問題に沿って行われます。教授が学生をあてて、口頭で答えさせます。そのため、予習をしていなければ大恥をかきますし、答えられなければ叱責する教授もいます。
授業では、司法試験のための膨大な量を扱いますから、すごいスピードで進行していきます(圧倒的に時間が足りないのです)。
広い範囲から期末試験の問題が出されるため、予習と授業だけでは、試験は解けません。必然的に復習が必要になります。
こうして法科大学院生は、1日中予習復習に追われています。
5 地獄なのか
実際、卒業した身としては、地獄とは思いませんでした。確かに試験はつらかったのですが、法律という学問がとても面白いので、苦痛ではありませんでした。
普通の大学生からすれば、地獄と言ってよいかもしれません。