ビットコインは価値を持つ。
私がそう確信したのは、金(ゴールド)との共通点を見出したからである。
ではまず、金の価値について話そう。
金に価値があるのは、以下の三つの特徴があるためである。
それは、「保存性」「検証可能性」「可分性」である。
①保存性
金は錆びない。腐らない。
蒸発したり、飛散したり、燃えたりしない。
鉄は錆びる。
食べ物は腐る。
水は蒸発する。
紙幣やダイヤモンドは燃えればなくなる。
それらと違って、金は物質として安定している。
「消えない」ことこそが、金の信頼のおおもとである。
②検証可能性
金は、本物か偽物かを確かめる方法が確立している。
かさばっていないか、純度はどうかも検証しやすい。
金の偽物を製造するのは、ドルの偽札をつくるよりもよっぽどコストがかかる。
③可分性
もし金を半分に分割すれば、ちょうど半分の価値を持つ。百分割すれば、百分の一の価値を持つ。
当たり前のように思うかもしれないが、そうではない。
たとえば、一台の自動車を半分にしても、二分の一の価値を持ったりはしない。それはスクラップでしかない。
車に限らず、不動産も、有価証券も、牛や馬といった生物資産も、半分に分けたからといって、半分の価値を持つとは限らない。
それに比べて、金は分けられる。
いくら分けても、分けただけの価値を保有する。小さく分けたからといって、価値が消えたりしない。
以上、三つの優れた特徴によって、金は人類社会において抜群の信頼を得た。
それによって、さらに需要な特徴である「換金性」を備えることになった。
実際に、金は、世界中どこででも現地通貨に交換することができる。
誰もが価値を認めることによって、実際に価値が生まれているのだ。
通貨の三大機能といえば、「価値の保蔵」「価値の尺度」「交換手段」の三つである。(これについては詳述しない。興味のある方はお調べください)
金の場合、保存性と検証可能性によって「価値の保蔵」機能を有し、可分性によって「価値の尺度」機能を有する。
以上により換金性を獲得し、それによって「交換手段」機能を得たのだ。
金の三つの特徴が、通貨の三大機能をもたらしたというわけだ。
さて、ビットコインである。
ビットコインは、金の三つの特徴をすべて備えている。
ビットコインのデータは分散して記録されるため、消滅しない(保存性)。
取引の履歴や保有量を、誰でも検証できる(検証可能性)
1BTCは1億分の1(=1satoshi)まで分割可能である(可分性)。
金と同じ特徴を持つのだから、ビットコインが金と同じ信頼を獲得する可能性は、十分にある。
そしてそれは、金の地位にとって代わる可能性をもつということでもある。
金に欠点があるとすれば、それはその「重さ」である。
特に、高額の決済に金を用いる場合、大量の金を運搬するためにコストが生じる。
一方、ビットコインには、金と違って、「重さ」という制約がない。この点で、金よりも優れている。
ただし、ビットコインには拡張性(スケーラビリティー)の問題があり、これに伴って、手数料の高騰や、着金の遅さという問題が生じた。これは、ある意味で「重さ」だと言える。
拡張性の問題こそ、ビットコインのボトルネックなのだ。
この点が解決されれば、ビットコインは金よりはるかに優れたものとなり得る。
では、換金性はどうだろうか。
ビットコインはほかの通貨に交換しやすいだろうか。
この点は、まだ完全とは言い難い。
取引所を通じて法定通貨との交換を行う場合、当局の規制や取引所の上場廃止等によって、交換できなくなるおそれが十分にある。
もしビットコインが換金できなくなり、それでもなお有用であるためには、「ビットコインであらゆるものが直接買える」という状況にならなければならない。
つまり「ビットコイン経済圏」である。
現在のところ、それは未成熟である。
先述の通り、ビットコインには拡張性の問題がある。
そのため、日々の買い物のような少額決済にはあまり向かない。
しかし、高額決済には便利だ。
たとえば、大学の学費の支払い、自動車の購入、不動産の売買などである。
こうした場面でのビットコイン決済がスタートすれば、それは「ビットコイン経済圏」への大きな弾みとなるだろう。
ここからは余談である。
私は最初に「ビットコインは価値を持つ」と述べたが、それは飽くまで通貨・資産としてのそれに過ぎない。
金が価値を持つならば、同じ特徴を持つビットコインもまた価値を持つはずだ。ただそれだけのことである。
人生のあらゆる局面について、お金さえあればいいわけではないように、ビットコインの持つ力も、相対的なものに過ぎない。
むしろ、お金への過信は危険だ。お金は人を強くもするが、弱くもするからだ。
これについては、また別の機会にまとめたい。
(2019年6月24日)