異世界転生とはその名の通り、現代社会において、不慮の事故によって死んだ者が、中世ヨーロッパと同程度の文明を持つ世界に転生し、そこで現代知識を駆使して周囲から賞賛も得る物語の1ジャンルです。
神隠しとは、人が不意に行方不明になったことを神の災いによるものとする言葉です。
日本人は行方不明の原因が神であることにすることで、自分の周囲の人間による犯行であるという生々しい現実を隠していました。
また、神隠しにあうということは異世界で生き続けていることへの期待の表れでもあります。
神隠しは、隠された人ではなく、その周囲の人の視点での話です。
では、視点を隠された人に変えてみましょう。
実際に神隠しから帰還した人というのは少なからずいます。
最も有名な話としては『浦島太郎』でしょう。
浦島太郎は、助けた亀に連れられて、竜宮城でほんのひと時の楽しい時間を過ごしていたのですが、そこから戻るとそこは、浦島太郎が生きていた時代から数十年も経っていたという話です。
この話は、浦島太郎の目線で語られる物語ですが、浦島太郎の周囲の人々からしたら、浦島太郎が亀を助けた翌日から行方不明になってしまい、何十年も帰ってこなかったという神隠しの話になります。
妖怪研究家の小松和彦は、「神隠しは恐ろしいものではなく、浦島太郎のように選ばれた特別な人間が特別な場所へ行き、特別な経験をして帰還するもの」と語っています。
そのように考えれば、昨今の異世界転生ブームにおける現代社会から異世界への移動及びそこでの活躍は神隠しに遭遇した本人の物語といえるのではないだろうか。