空前絶後のサウナブーム。
方々で耳にする『トトノウ』という言葉に時代のうねりを感じる。
平安が『南無阿弥陀仏』ならば令和では『トトノウ』なのか…
まるで伽藍や教会のように崇拝されるサウナ。そこへ足を運んだ者達は、まるで悟りを開き、あるいは祝福されたかのように満たされた様子で帰って来るらしい…
噂が噂を呼び急速に増殖するサウナ信徒達はいま日本全土を飲み込もうとしている…
世はまさに、大サウナ時代!
成人男性共がこぞってウィーアー!してる。
社会の荒波に揉まれては寄る辺なき流木と化したおっさん達が、その孤独の海に隠された財宝を見つけようと次々に飲み込まれていく。
1度味わってしまったら忘れられない衝撃。
どんなに屈強な益荒男でも、堕ちずに帰った者はいないと聞く…
ツイッターでわしの信頼のおける有力なアカウントからもヤバめの情報が入っている。
至る所で騒がれる「サウナ最高」の声。
もはやサウナ行ってない奴はまだガラケー使ってるような化石人間認定されてもおかしくない…
あるいは温泉行ってサウナ入んねぇ奴はジャンプ買ってるくせにワンピース読んでないとか言ってる逆張り偏屈人間認定されてもおかしくない…
そうビビらせるぐらいにサウナはブームとして定着してきている気がする…
ここまで来てまだ「サウナはちょっと…」とか言ってサウナ入るのビビってる奴なんてきっとわしかアイスクリームぐらいしかおらんだろう。
しかし、逆になんか怪しい気もする。良い噂に対して悪い噂が少なすぎるのだ!!
おいおいおい…Amazonだったら高評価レビューが多すぎて逆に信用できねぇぞ。おまえら全員サクラか?不自然過ぎやしないか?
サウナ業界の陰謀か?それともあれか?洗脳か?全国のサウナ施設には脳みそをドロドロに溶かしてアヘアヘに気持ちよくするガスや怪電波を流す洗脳装置が備え付けられているのでは?もしくは、温度番をしてるらしい釜爺とやらが、食べると幸せになれる怪しい飴玉とかを中で配っておっさんに餌付けしてるんじゃないのか?
実はサウナとは隠語で、日本転覆を画策する秘密結社や地下組織の集会場なのでは??反社会勢力の温床なのでは??サウナを媒介に勢力拡大を目論む新興宗教団体の布教施設になっているのでは??それともあれか?妖怪の仕業か?妖怪サウナおやじに皆ナニと尻子玉を抜かれているのでは??いつかサウナ好きのおっさん達によるプロジェクトメイヘムや全国集団サウナ自殺とか汗だく百鬼夜行とか起こったりしない?宇宙人の侵略の線も有り得るぞ??サウナは実はUFOで中に入ったおっさん達は次元転送装置でアブダクションされた後アヘアヘサウナおじさんに改造されて戻ってくるんだ!!
なんて具合にわしはついこの間までサウナに対して恐怖感しか抱いていなかった…。
しかし、先日のオフ会でほんのわずかな時間だが実際にサウナを体験することができ、わしが恐れていたサウナ像は都市伝説のようなものだったのだと判明した。
特に怪しい人物や装置、儀式等は見当たらなかった。確認できたのは三途の川をバタフライしている爺さんとサウナ玄人感を振りまく陽気なおっちゃんだけだった。
サウナを媒介にした日本転覆計画などなかった…いやしかしまだ分からない、2度目、3度目と顔を通すことで、係の者から声がかけられるのかもしれない。安心するにはまだ早すぎる気もする…
しかし、幸運にも?わしはそこでほんの少しだが『トトノウ』の入口を垣間見ることができたのだ。
以来、あの先に待ち受ける世界とは一体どんなモノなのかと心を奪われている…
なるほど、確かに全国のおっさん達がサウナ中毒者になってしまうことにも頷ける。例に漏れずわしもそのうちの一人となりかけているのだ。
ヤクをばらまくじじいや洗脳装置を使わずとも、おっさんを虜にする魔力がサウナそのものに秘められているのだと十分に感じることのできる説得力のある体験だったのだ。
これは…トトノウの全容を確かめずにはいられない。
実はそこで『トトノウ』とは一体何なのかある程度察することはできた。
サウナ好き、トトノイストとは、簡単に言ってしまえばただの破滅主義のマゾヒスト。緩慢に訪れる死の感覚を楽しむサイコスーサイダー。ようはイカレポンチである。その辺の気づきは前回サウナを体験したこちらの記事で詳しく触れている。
しかし、本当にそうなのか?本当にそれだけなのか?
数多の日本男児達が本当にただの「インスタント臨死体験」でアヘるためだけに足繁くサウナに通うのか?
もしそうだとしたならば、これは恐ろしい事態である。
TikTokの失神チャレンジやトー横のオーバードーズと同じようなノリで大勢のおっさん達が現実の外側に救いを求めようというのだ。どうかしている。
だからわしは何かほかに理由があると信じている。そうであって欲しいという願いも込めて、ここはひとつ我が身を持って確かめに行かねばならない。
見極めてやる。サウナとは、トトノウとはなんなのかを!
そこでわしはもう一度サウナに潜入し、人々の心を掴んでは離さないその不思議な力や、実際にそこで身体に起こる現象の調査に乗り出すことにしたのだった。
情報収集をすべく、何気ない日常会話の中で、先日サウナでトトノウの片鱗を垣間見たことを職場の同僚達に告げてみた。そしたらこんな言葉が帰ってきた。
「でしょ?気持ちいいでしょ!?ズッキーさんもついに沼にハマっちゃったか~」
アーメン。驚いたことに同僚達もまた既にサウナ信徒だった…こんな田舎にまでサウナ教の魔の手は伸びてきていたのだ…わしが普段何気なく接しているおっさん達の大半はもう既にサウナ人間へと調教されてしまっているのかもしれない…恐ろしい。
そこから始まるサウナ論議。いや、トトノイ議論。
こいつら一体何回『トトノウ』『トトノウ』言ってるんだ?ねづっちでもこんなにトトノえないぞ?いや、ねづっちならきっと謎かけとかけてサウナと解いてる。そんでトトノッてる。
その心は?
どちらもトトノ…うっせえハゲ!
とにかくこんなにトトノッてるのはねづっちかトランプ大統領の前髪くらいだ。それぐらいトトノッてた。たぶん分間最大トトノイ数日本一ぐらいあったと思う。それぐらい連呼してた。トトノウ。
話が逸れた。そんな事はどうでもいい。
大事なのは彼らの反応と提供してくれた情報だ。
面白いことに彼らが口を揃えて重要だと言うのは、サウナの温度でも湿度でも時間でもなく、トトノウ"場所"についてだった。
「サウナはあっても、トトノウ場所がしっかりしてる所がなかなか無いんですよ!」
そう力説する同僚達…
彼らが言うには、サウナだけが素晴らしくてもトトノウことは出来ないらしい、最も重要なのは「トトノウ場所」とのことだ。
ここが田舎だからか、市内だけに留まらず県内全域にまで足を伸ばし無数の温泉施設へ「ベスト・トトノイ・プレイス」を求めてサウナ巡りをしている彼らが認める絶好の『トトノウ場所』は片手の指でも余る程度しか見つからなかったそうだ。
「広さが大事なんです。」
「あと、材質だね。」
目を輝かせて語る彼らの言葉はサウナに負けないぐらい熱かった。
彼らの言葉を要約するとこうだ
~トトノウのに重要な場所とは〜
・十分な広さが必要
・清潔感
・仰向けに寝転がれる環境
(畳、芝生、リクライニングチェア、etc...)
等の要因をクリアし、『トトノウ』に集中出来なければいけないらしい。トトノウ事のノイズとなるストレスや雑念を極力排除した、清潔でパーソナルスペースを確保出来る広さで心地よい環境でなければならないそうだ。
そして、然るべき環境で然るべき時を待てば、世界が回り始め、己が大地と一体化していくような感覚になるらしい。もはや"禅"にも似た世界観にも思えてくる。
なるほど、やはり「トトノウ」とは実に奥が深い。一筋縄ではいかなそうだ。
だがちょっと待って欲しい。
仰向けに寝る?
椅子に座るとかならわかる…
寝る?
それも仰向けに?
聞けば、ふらふらとし、前後不覚に陥るというではないか…そんな意識朦朧としたトリップ状態でだらしなく仰向けになりちんちんをさらけ出せと??想像したくもない痴態だ。
しかも水風呂でしっかりとタマを冷やした後だからちんちんが縮こまっているだろう事は想像に難くない。
冗談だろ?
ちんちんひろげてひっくり返るのが許されるのは小動物か赤ちゃん、あとはクレヨンしんちゃんぐらいだぞ!?決しておっさんがやって許される絵面ではない。
大人として、漢としてそれはどうなんだ??
アヘ顔でひっくり返り、恥ずかしげも無くリトルちんちんをおっぴろげた状態で外界をシャットアウトして大地と繋がる感覚に集中しろだと??バカか?やはり怪しい宗教か宇宙人の侵略の線が濃厚かもしれない。恥が文化のこの国で、恥と外聞を捨てろと言う。頭マッカーサー?そんなマッサーカー!だわまじで。サウナは黒船か??それでいいのか日本男児たちよ??
"トトノウ"とはそれほどの代償を払ってまでする価値のあるものなのか?
決していい歳した大人が見せていい姿では無い。わしはそう思う。
お前ら刀狩でちんぽ抜かれたんか?大和魂はどこへいった?ちょんまげ切ってもちんぽは切るな!ってばあちゃんから教わらなかったのか??
っていうか"トトノウ場所"って何なんだ?
サティアンか??それともサナトリウムか??
お母ちゃんが泣いてるぞ?母ちゃんだけじゃない、ご先祖様も泣き出すぞ?
わしは彼らがしきりに力説する『トトノウ場所』と『トトノウための体位』を聞いて、おそろしくなってしまった…
こわい…
彼らが進める施設に広がる光景を思い浮かべた時、その異様さに怖気立ち膝が震え始めた…
バブッ!!
わしはあまりの恐ろしさに思わず放屁してしまった…危うく糞まで漏らしそうになった…
『トトノウ』…自分がこれから挑戦するものの大きさを知った今、逃げ出したい気持ちでいっぱいになった。腹の調子が狂うのも当然である。このせいでわしは、大丈夫かな…トトノイながら脱糞しちゃわないかな…といった新たな恐怖とも戦わなければならなくなった。強敵である。
「この辺の近くならココがオススメですよ」
鼻をつまみながら同僚が数少ないベスト・トトノイ・プレイスを教えてくれる…
聞いてしまったからには行くしかあるまい。
知ってしまったからにはやるしかあるまい。
それがいかにおそろしく苦痛を伴うものであろうとも、この身を焦がし続ける好奇心の火を消さねば、それは自分を生きていないことと同じだ。
わしは覚悟を決めた…
然とこの身をもって体験すべく、わしは漢達を虜にするサウナへと向かうのであった…