本が好きな僕はどこへ行っても書店には入ってみる。
台北で一番有名な書店は、誠品書店だ。
何店舗もあるみたいだが、中山地区の誠品書店は、けっこう大きかった。
二〇一九年の日本から来た僕は台北の書店文化には一種のうらやましさを感じた。
書物や知識というのは人間にとってとても大切なものであるという共通認識が、書店文化をしっかり支えている気がした。
日本でも一九八〇年代頃までは、ひとつひとつの書店にそういう気概を感じることができた。
しかし、今の日本では個性ある種々な書店は次々と倒産していった。
また書籍流通のいびつさから、個人書店は自分の店に並べたい書物さえ自由に選ぶことができず、有無を言わさず送りつけられてくるものを店頭に並べるしかないのだ。
それはおかしいではないかという抗議を大阪の隆祥館書店などが行っている記事を読んだことがある。
書物という、自由に物事を考察するための大切な基盤が、何か大きな力によってコントロールされてきているのを、日本ではひしひしと感じる。
時の政権に都合のいい書物や、嫌韓本、嫌中本が大量に並べられたりしているのを見てげっそりすることがよくある。
日本は様々な分野において今、文化破壊が起こっている。
その最前線のひとつが書店だと言えるだろう。
それに比して、台湾の書店で感じたのは、僕がまだ学生だった頃に書店を訪れると感じた文化の香りだった。
誠品書店の他にも滞在中に様々な個性ある小売店を見た。