子ども時代いつも駆け上っていた山道への階段。
この向こうのすべてが山だった頃。
今はこの見かけだおしの山はただの張りぼて。
すぐ反対側は崖になっていて新しい国道が通っている。
国道の側道を車椅子で行けばすぐ、京都側の住宅街やショッピングモールに出る。
それも前は全部山だった。
数日前、細長いテンのような動物が、素早く山を降りてきて、住宅街の溝に隠れるのを見た。
やつらは、ずっと山にいたのだ。
が、子どものとき、見たことはなかった。
山がなくなったので出没するようになったのだ。
札幌市内に熊出没も同じ理屈だろう。
ところで、僕はこの山への階段を二度と駆け上ることはできない。
ただ車止めのこちら側、車椅子の座席から撮影できるだけだ。
上の展望所には、今もベンチがあるんだろうか。
中学時代の彼女と座ったベンチが。
21世紀の子どもたちが、階段を駆け下りてきた。