アメリカ合州国のナヴァホ・インディアンの居留区を車で走っていた時だった。マクドナルドを見つけた(それ以外には何の店もなかった)ので、休憩のために入っていくと、大きな日の丸の旗が展示してあったので驚いた。近づいてよく説明を読むと、沖縄戦で日本側から接収したものだという。なぜ、そんなものがこんな所に? 展示を詳しく見ていって初めてナヴァホ暗号部隊の存在を知った。
戦争に暗号による連絡は付き物である。すでに日米両軍は、互いの暗号を解読していたわけで、作戦は筒抜けであった。そこでアメリカ軍が考えたのが、英語ではなく、ナヴァホ語による暗号で連絡を取るという作戦だった。そのために駆り出されたのが、ナヴァホ・インディアンたちなのであった。ナヴァホの人々は、沖縄戦における暗号部隊の存在が、大きくアメリカ軍を助けたとして、今なお、誇りに思い、このような展示を行っているのであった。西洋人に土地を追われ、不毛の地であるナヴァホ居留区に閉じ込められたンディアンたちの悲しくやるせない「誇り」である。
それにつけても、当時日本では、沖縄の人々が琉球語で話すとスパイ呼ばわりして罰していたという。彼我の違いを思い知らされるではないか。琉球語を味方の暗号に適用することもできたはずだろうに。いや、いずれにしろ総じていって、戦争には反対である。だが、細かく見ていくと、その戦争の最中にも、様々な考え方が存在し、それが命運を決していることもあるのだなあと改めて考えた。
赤茶けたナヴァホ居留区の大地のど真ん中のマクドナルドにおいてである。