教育・子育て

特別支援教育とインクルーシブ教育のズレ (3)

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  • あび(abhisheka)
  • 2019/07/12 19:17

承前

(いきなりだが、2010年5月8日の日記である。)

 K高校の中退率が、30パーセントから9パーセントまで激減したことが、最近、朝日新聞でニュースになった。 
http://www.asahi.com/kansai/sumai/news/OSK201004260051.html 

 僕はこの学校に1988年から1993年まで勤めた。 
 
 さて、期せずして、「はらっぱ」2010年5月号、特集「障害があってもなくても、ともに学びたい」にも、K高校のことが取材記事として載っている。 
 障害のある、3年生の男子生徒が、仲間とともに楽しく学校生活を送っているという話だ。 

 個人的な感想を言わせてもらえば、僕は、今、K高校はやっと、道を見つけたのだと感じた。 

 wikiにもあるように、1989年にK高校は習熟度別クラスを導入、1991年には大阪でコース制の導入の先駆けとなった。 
 どんどん学力低下、底辺校化、中退が増加していく中で、そういう改革で乗り切ろうと考えたわけなのだ。 

 僕はそれらの改革に最も反対していたメンバーのひとりだった。
 コース制の導入案が職員会議に出たとき、
 僕は
「分ける発想ではなく、共に生きる発想で、学校の将来像をつくっていくべきだ。それには、習熟度別やコース制という方向ではなく、たとえば解放教育の歴史に学び、そういう学校としての実践を積み上げていくべきだ」
という修正案を提出した。 
 しかし、60名ほどの職員の中で、僕の案への賛成は5名だった。本人は忘れているかもしれないが、僕はそのとき見回して確認した5名の顔は覚えている。
 中途半端なエリート集団である高校教師の中で、僕が何を言っているのかを理解し、賛同してくれた人たち。 

 意見を闘わせていた中、後に枚方市のとある高校の校長となった当時の教務主任は、(僕の言うような路線にすると)「障碍児が入ってきてしまいますよ」と発言した。 
 はぁ? 僕は、それを差別発言だとして、ごりごりに糾弾したが、当時の学校長が、「失言もままある。学校の将来についての議論に戻したい」と言って、その発言についてはそのまま不問となった。 

 それから20年、K高校にはちゃんと障碍児が入っているではないか。やっと中退率は下がってきたではないか。 
 それは、共に生きるという発想で、教員集団が取り組みを進めているからではないか。 
 長い回り道であったことである。

 老婆心だが、教訓をちゃんと文字化しておこう。
 特色ある学校づくり(コース制など)は、学校をさらなる荒れに導き、高校においては中退率はむしろ増加する。
 多様な生徒が共に学ぶ学校は、荒れが軽減し、中退率も下がる。 


  ブログのこのページにはその後、しばらくしてから、次のようなコメントが入った。

コメント主
K高校には昔からこんな良い先生がいたとわかりかんげきです (2011.12.26 14:23:47)



ども、です。卒業生ですか? 保護者ですか? (2011.12.27 12:57:59)


コメント主
「はらっぱ」にのっていた男子生徒の母です今年の三月に皆勤で無事卒業させていただきました。輝くような宝物のような三年間でした。本当に良い学校でした。 (2011.12.28 13:51:17)



きゃああ! すてき。ども、はじめまして。「本当に良い学校でした」という言葉、別に僕は何もしていないけど、嬉しいです! (2011.12.29 18:12:57)


コメント主
11日まで京阪枚方市駅の市民ふれあいセンターでK高校の先生方と絵画展をさせていただいています。卒業後もとてもよく面倒みてくださる熱心な先生方です。 (2012.01.09 13:33:08)
 


今日、行ってきました。K高校の現役の先生とも話しました。Iくんは、トイレの絵マークに格別の関心を持ってスケッチし続けているのですね。簡略化した線でいろいろなことを表現する絵のバリエーションを追求するのはとてもおもしろいと思いました。オリジナル絵マークも創作して売り出せばいいと思いました。笑。 (2012.01.09 20:10:10)

 

コメント主
お目にかかれず残念です   お忙しいなかお越しいただきありがとうございました。感激と驚きとで腰を抜かしそうでした。お目にかかれず残念ですがK高校は今年90周年を迎え、10月に記念式典を行います。ご都合がよろしければぜひお越しください。私はまだ希望を捨てておりません! (2012.01.11 13:03:00)

(つづく)

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10代より世界放浪。様々なグルと瞑想体験を重ねる。53歳で臨死体験。31年の教員生活を経て現在は専業作家。https://note.mu/abhisheka

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