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魂の螺旋ダンス(27)浄土真宗の戦争責任

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  • あび(abhisheka)
  • 2020/01/17 08:32

・ 浄土真宗の戦争責任

また浄土真宗は、先のアジア・太平洋戦争において天皇制イデオロギーを支え、アジア侵略を正当化する役割を担った事は記憶に新しい。


もっとも戦前戦中においては、仏教各派はもとより、キリスト教や新興の創唱宗教を含む日本の精神文化のことごとくが、天皇制イデオロギーを支えアジア侵略を正当化したことは、胸に刻んでおかなくてはならない。

しかしここではその全体像をとらえる紙幅はない。

そこでやはり有縁の浄土真宗大谷派をめぐる若干の経験を述べ、感想を記しておきたい。


私は僧籍には縁のない家庭の生まれである。

だが、高校時代に個人的な苦悩の中から、東洋思想への傾倒を深めた。

当時、有名になり始めていたインド人のグル、バグワン・シュリ・ラジニーシに惹かれ、また鈴木大拙の禅思想、親鸞の思想に光を見出したつもりでいた。

そこで、志を持ち、大谷大学において親鸞思想の学究をはじめたのであった。


ある日、私は通学の電車の中で、友人と親鸞の思想について話していた。

と、ちょうど隣の座席に座っていた年配の男性が、突然、私たちに話しかけてきた。
「浄土真宗のクソ坊主どもが、天皇のために死んで来いと説教を垂れて、皆戦争に行った。それでわしの友人たちは、ほとんど死んでしまった」


私たちは、その男性といくつかの駅を通過する間、ひととき話しただけである。

だが、この時の衝撃は、私の心に深く突き刺さった。

彼の言う「浄土真宗のクソ坊主ども」とは、私が共に学ぶ友人たちの父であり、祖父であるはずであった。


加藤三郎は、世界革命戦線「大地の豚」を名乗り、反日思想に基づく連続爆弾闘争を実行した。

(彼はその後、一八年間の服役を終え、二〇〇二年に釈放された。)

逮捕の前、彼は爆弾闘争をやめ、インド人のグル、バグワン・シュリ・ラジニーシの弟子となって瞑想センターに出入りしていた。

同じく瞑想センターに出入りして、時折りメディテーションを試みていた私は、そこで加藤と知り合った。

彼は出家名でデヴァムと名乗っており、私は過去のことは一切知らなかった。

ジョン・レノンにも似た繊細な風貌で、むしろ女性的なやさしいエネルギーを感じさせる人物だった。私は「好き」だった。


ある日、突然テレビの画面に爆弾闘争の犯人として連行されていくデヴァムの姿が映った。

瞑想センターの小さなテレビで、仲間と共に固唾を呑んでそのシーンを眺めていたのを覚えている。

デヴァムは、当時のラジニーシの弟子たちの特徴である赤い服を来て、グルの写真入りのロケット(マラと呼ぶ)を下げて、合掌したまま警察署の中に消えていった。


彼が何を考え、どのような事をしてきたのかは、雑誌『思想の科学』に掲載され、『意見書』という単行本にまとめられた文章などで、徐々に明らかになってきた。

彼のむしろ繊細な風貌と思い合わせると胸が痛んだ。


大学を離れ、教師生活をしていた私のところに、あるとき大学時代の友人からある案内状が届いた(一九九二年)。

東本願寺の宗務所において「アイヌと共に民族差別を考える宗教者の会」という団体を立ち上げるから、その結成集会に参加してくれという内容であった。

趣意書を読むと、加藤三郎が、浄土真宗大谷派のアイヌ侵略に抗議して東本願寺大師堂床を爆破した際の問いかけに応えていきたいのだとあった。

…すべてが、私の中でグルグルと回る。

誰もが同じこの島の上に生きる仲間たちであり、友人たちであり、問いかけ問いかけられ、過ちを犯し、にもかかわらずそれに応えようとしている…。


私はその会に出席して、今、この問いを自らに問おうとしている人々に会った。

ところがである。

会の中で、アイヌの血を引く人が、佐藤愛子という作家が北海道で霊視した内容(アイヌ虐殺のヴィジョン)について話した。

すると真宗の僧侶の側から、我々はそのような霊視現象といったものを見下げているし、真の宗教性といったことと関わりがないと考えていると発言した。

私は親鸞思想を学んできたものとして、彼の言う意味はわかった。

が、この場合、胸が痛んだ。


超越性宗教は、その近代的な性格においてしばしば草の根の霊的現象といったものを見下す。

それは時には因習的な霊的呪縛からの解放をもたらす重要な役割を果たすこともあるだろう。

が、超越性宗教がいつも草の根の霊的現象を見下すだけでは、解き得ない問題もあるとはっきりと自覚したのは、この時だった。

そこには聞き届けられるべき声もまた木霊しているのだ。  


加藤三郎氏は東本願寺爆破の声明文の中で「われら鬼道をもって、神仏を亡き者にし」と宣言している。

また「鬼道とは天地自然の恵みなしには生きられず、人と人の間でしか生きることのできない、われら人間の心ある道のことであり」と説明している。

私は加藤が、この「鬼道」という言葉に託したものに、征服者によって「鬼道」と蔑まれた「部族シャーマニズム」復興への切なる願いを感じるのであった。


二〇〇〇年二月一日の中外日報に、鎌田東二へのインタビュー記事「『鬼』への畏怖、その偉大さと邪悪さと」がある。

記事は「古代人が信仰しやがて零落した神、敗れ去った国津神、弥生人に制圧されていった縄文人、平地民に支配されあるいは従属していった山住みの民―――。

色々なものが重なり投影された形で「鬼」はイメージされ、「鬼伝説」が形成されていった。」と鎌田の見解をまとめている。


身の周りで起こり続けることが、私に多くの問いを投げかける。この島の精神文化の行く末にかかわる、数多くの「公案」が、未解決のまま渦を巻いている。

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10代より世界放浪。様々なグルと瞑想体験を重ねる。53歳で臨死体験。31年の教員生活を経て現在は専業作家。https://note.mu/abhisheka

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