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マルクスによる自己疎外からの解放論 (1)

あび(abhisheka)'s icon'
  • あび(abhisheka)
  • 2019/05/25 11:42

僕の考えではこれは神仏カテゴリーなのであるが、たぶん誤解されると思うので、ビジネスカテゴリーのみに投稿します。
引用元は以下の拙著です。

マルクスによる自己疎外からの解放論

 マルクス主義は二十世紀の世界を席巻した。
 もちろん、それには高い理想が掲げられており、また王政や他国の侵略からの解放など積極的側面がないでもなかった。
 しかし、その実際の姿においては専制的な国家による全体主義に陥った。平等を重んじるあまりの粛正や、文化的抑圧、大量の虐殺などの深い傷跡を残した。

 しかし、若きマルクスが目指したものはそのようなものではなかった。
 およそあらゆる超越性宗教が歩んだ道と同様に、その最初期に言明された思想は、瞬間瞬間更新される覚醒による超越性と、深い根源的解放の世界を謳いあげるものだった。
 後に、その当人の思想が固着を起こしたり、後継者が教条的なものに変質してしまうという点も、他の思想と共通している。超越性宗教の絶対性宗教化である。

 ではマルクスが本来、表現しようとしたマルクス主義とはいったいどのようなものだったのか。そのことをピンポイントではっきりさせておこうとするとき、主著であるとされる『資本論』よりも、若き日に書かれた『経済学・哲学草稿』がその思想の一番根底のところを鮮明に表現しているということができる。
 今しばらくこの書によって、マルクスの思想の根源に思いを馳せてみよう。

 驚いたことにマルクスはその最初から、共産主義が物質的な配分の均分を目指すだけでは不十分で無意味であることや、専横的な国家による政治的なものである限り、その目指すべき姿ではないことを看破していた。
 共産主義を大きく三段階に分類し、その各段階の特徴を叙述し、その最終段階が真の「自己疎外からの解放」であることを早くから表現していたのである。

 共産主義(1)
 マルクスの思想の根底として重要なのは私有財産という(他の生き物にない)人間特有の観念の批判にある。人間は、私有財産という観念に囚われ、そのことを通じて自然や自己自身から(もっと言うなら今ここに満ちあふれる限りなき働きから)自己疎外されていると考えていたのである。
 共産主義とは、その私有財産という観念を止揚し、今ここにおいて全面的に自己解放されることでなければならなかった。

 しかし、共産主義の最初の段階では人間の意識の自己変革がそこまで及ぶことはない。
 そうではなく、ただ「労働者の仕事は止揚されないで万人の上に拡大される。」つまり、労働者の在り方が変わり、自己疎外から解放されるのではなく、全員を資本主義下の労働者と同じ存在にすることによって、「平等」を実現するに留まってしまうのである。

 それは「私有財産として万人に占有されないあらゆるものを否定しようとする」。ある意味、私有財産という観念に強く囚われたままである。
 そのため私有財産を共有財産にしようとするが、対象の物質的「占有」という性質は変わっていない。結果、そのような物質的な次元に留まらない人間の諸能力については「暴力的なやり方で才能等を無視しようとする」。
 これが、文化大革命などにおいて、典型的に生じたことである。

 またマルクスは、そのような共有財産に対する態度が極めて物質的な「占有」しか意味しないことは、男性の女性に対する態度に典型的に見られるとする。
 「結婚に対して女性共有」「人間の人格性をいたるところで否定する」「妬みや均分化を完成したものに過ぎない」。
 そのことが、結婚を女性共有に変えるという考え方の中に顕著に露呈しているというのである。

 いずれにしろ対象のすべてを物質的にだけ見て均分化するだけなのが、この共産主義(1)である。

 ルドルフ・シュタイナーの社会有機三層論は、法的平等、文化的自由、経済的友愛を説くことでマルクスに対抗したと言われることがある。
 その場合、マルクスが三領域のすべてに平等を当てはめようとしたとする誤解が前提にある。しかし、すべてを物としてしか見ずに、それを均分化することは、なんら私有財産の超克でも、自己疎外からの解放でもないことを指摘し、「粗野な共産主義」を批判していたのは、マルクス自身なのである。

 このことを忘却し、マルクスが「粗野な共産主義」を提唱していたに過ぎないと考えることは、その後の専制的な国家共産主義、現在の共産主義への漠然とした嫌悪感の深い原因となっている。

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釜ヶ崎夏祭りに手弁当で歌いに来た加藤登紀子

 

 

 

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10代より世界放浪。様々なグルと瞑想体験を重ねる。53歳で臨死体験。31年の教員生活を経て現在は専業作家。https://note.mu/abhisheka

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