人工股関節置換術後に痛みが緩和して、痛みに関連する脳活動も正常化した。これは関節の変形が物理的に改善した結果、侵害刺激による痛みの脳活動が正常化しただけに過ぎない。
侵害受容性疼痛の要素が大きい場合には、脳機能を最大限に考えて理学療法を進めるよりも、末梢器官への適切な理学療法を実施すべき
慢性化には、対象者が有する素因→破局的思考、不安なども関連するが、亜急性期おける不適切なかかわりという要因も指摘
痛みの情動的体験に伴う発汗、心拍数の上昇などの自律神経抑制の機能を島皮質は担っている
怖がっている人の表情、不快な匂い、悲しい音楽などのネガティブな文脈においては、前部帯状皮質、島皮質などの情動領域の活動が大きくなるだけでなく、主観的な痛みの不快感が強くなることが報告
前部帯状皮質と島皮質は痛みの主観的な強さを表現する部位
この部位の活動が主観的な痛み体験と1:1の関係にあると報告
下行性疼痛抑制系は、有酸素運動のような単純なエクササイズでも作動
PAGは前頭前野からの入力も受けており、認知プロセスによって下行性疼痛抑制系の機能を促進できる
痛みから注意をそらすと前頭前野ー前部帯状皮質のシステムが活性化して、痛みが一時的にまぎれることが知られている
痛みに注意が向かないゲームを取り入れた運動療法の実施は、この知見を理学療法に応用している
慢性的に痛みに悩んでいる対象者は、痛みから注意をそらすこと自体が難しいことが多く、痛みから注意をそらして運動してくださいという無理な教示はむしろ痛みへの過剰な注意をもたらすことも報告されている
実体験に与えられる冷痛に対して、これは痛いという感覚ではなく、冷たくてチクチクする感覚ですので、その感覚に集中してみて下さいと教示したところ、前頭前野の活性化に伴い、下行性疼痛抑制系が作動し、主観的な痛みの強度が軽減することが明らかに。
下行性疼痛抑制系を作動させるはずの有酸素運動をしたら、むしろ痛みが増悪するなんてことも慢性疼痛の場合はある。セオリーはない
慢性疼痛者の最も特徴的な脳機能異常として、前頭前野の機能不全がある
偏桃体の容量減少は腰痛の慢性化を高い精度で示唆する
四肢に慢性的な痛みを有する者の患肢の動かし方を忘れたという経験を脳科学的に説明できていない