こんにちは、積分定数です。先日、量子コンピュータによってブロックチェーン技術の信頼が揺らぐ"かも"しれない、という記事を書きました。そこで今日は、「じゃあ量子コンピュータが台頭したら暗号通貨は終わるの?」という問いに対して答えていきたいと思います。今回は量子コンピュータをもってしても突破できないセキュリティ強度を持つとされるQuantum Resistant Ledger(量子抵抗台帳)というコインについて書いていきます。
僕の暗号理論についての記事を読んでくれた方は暗号の仕組みをある程度理解してくれたかと思います。簡単に言えば現代の暗号は「素因数分解さえできてしまえば解読できる」というものです。この素因数分解は現在の最速コンピュータを使っても数億年かかると言われています。しかし量子コンピュータが実現すればその暗号も現実的な時間内で突破されてしまうというのです。
暗号の種類にもよりますが、上記のような素因数分解による暗号(RSA暗号と言います)の場合はコンピュータによる総当たり方式が一般的です。つまり与えられた数字メッセージNを素数で小さい順から割っていき、余りが0になったら解読成功ということです。余談ですが量子コンピュータも原理的には古典コンピュータと変わりないので古典コンピュータでできなかったことは量子コンピュータでもできません。
XMSS署名という技術を採用しています。この技術、詳しく書くと難解なので、すご〜く簡単に説明します。例えば暗号文のメッセージが10だったとします。今までの暗号は素因数分解だったので
10=2×5
で解読できたわけですが、XMSS署名というのは
10=1+9、2+8、3+7、…
というように考えます。そして、この足し算の組み合わせの内、たった1組だけが解読するために必要な鍵になるのです。今までの暗号は掛け算だったのに対し、XMSS署名は足し算による暗号ということですね。しかもこの足し算の数を増やすことも可能です。つまり
10=1+2+3+4
のように2個以上の足し算かもしれないのです。直感的に、この暗号を解読しようとしたら計算量が尋常じゃないということがわかりますね。
前述の通り、量子コンピュータに対抗できる通貨ということで将来性は高く評価できるでしょう。しかし量子耐性のある通貨は他にもいくつかあります。有名なところで言えば
NEO、ADA、IOTA
です。これらの通貨はQRLとは違った暗号を採用しています。QRLももちろん優れた通貨で期待できるものですが、他のメジャーな量子耐性通貨と比べたとき、率先して買うべきかと言われれば微妙と言わざるを得ませんね。ただ、投資先の1つの候補として考える分には充分アリだと思います。QRLは海外の取引所、Bittrexで取り扱われているので興味のある方は是非(ちなみに僕は持っていません)。