求めないことが傷つかないこと
そう思いを定めたのはいくつの時だったろうか
私や母に暴力をふるったお父さん
最後には私を見棄てたお母さん
高卒まで過ごした施設
ひとりで出てきた都会で
最初に私を抱き
最初に私にお金をくれた男
それなりに私を大切にし
美容学校を卒業させてくれた男
最後はみんな
バースデーケーキを買って
子どものいる家に帰っていく
同世代の男の求めに応じ
これが恋愛かと想ったこともあったけれど
相手にとっては私だけじゃなかった
そう気づいて突き落とされることの繰り返し
今度こそ信頼できるという期待は
いつもズタボロにされ
貝よりも固く閉じた心
お金のためだけに開く体
そうでなければ
騙されるためだけに開く体
慣れてくれば
そこにもそれなりの幸せがあり
秘密の場所に隠してある現金は
億に達し
これさえあれば一人で生きられると
唱えればあふれてくる空元気
でも
そんな私もいつかは年老いて
誰にも必要とされなくなり
お金で物や世話を買い
最後の最後は・・・
私が死んでいくとき
いったい誰が弔ってくれる?
私の骨はどこへ行く?
私がこの星の上に
生きて死んでいった証は
すべて消えて
漆黒の闇だけが永遠に続くの?
何もかもあきらめることで
私が得た
誰にも壊せない安らぎの向こうで
高笑いしている死神
異様に真っ白な顔に
口が裂けている
殆ど耳のすぐ近くまで
真っ赤な口が裂けている