近年注目を浴びるテクノロジーであり、最もマカフシギであるといっても過言ではない「量子コンピュータ」ですが、今回はそれについて解説していきます。
結論から言うと、「新しい物理特性を使った計算機」です。量子コンピュータで最も重要なワードは何かといわれれば、まさに「量子性」でしょう。
量子とは何なのか?という疑問はこの自然界の諸現象に対する問でもあり、物理学としてそれらを考える必要があります。
これまでのデジタルノイマンコンピューターは、原子状態などの物理的な側面に触れることはなく、もっぱら電子というなの量子をある程度コントロールすることで実現してきたものです。
しかし、この量子コンピューターはそれらとは異なり、自然界における量子特性を内包したコンピューターになるため、仕組みという意味では、これまでのロジック回路とは異なる部分があります。
この量子特性というのが「波動性と粒子性」です。量子力学では、電子や光子などが二つの性質を持ちます。量子コンピューターでは、これらを切り替えながら計算するという仕組みを取っており、これはこれまでのコンピューターとは全く異なるものといえます。
従来式コンピューターでは、論理回路を組むことで演算を行っていましたが、量子コンピューターでは量子回路というものを利用します。この量子回路は、計算を量子状態の相互作用の結果として考えるため、入出力に対して可逆なシステムとなっています。
また、量子コンピュータに触れると、量子テレポーテーション、変分量子ソルバーや回路QEDなど、そのすそ野へのアプローチも見えてきます。
例えば、変分量子ソルバーといわれる、変分原理を用いた最適化手法などは、化学材料分野への応用が期待されており、「物質のプログラム」をAIのように最適化することができる可能性があります。このような技術が例えば、ここでは紹介していない「バイオインフォマティクス」と出会ったりした場合、オーミクスとの親和性をある程度発揮するかもしれません。
実際、量子化学の発展に伴い、化学式をプログラミングすることは珍しいものではなくなってきており、量子分野、バイオ分野、IT分野が絡み合う未来が実現することもあり得るとされています。
コンピューターにおいて、その処理性能を示す指標として挙げられてきたのがムーアの法則です。これは、コンピューターを作る半導体の性能が一年おきに2倍になることを示しており、同様なことが量子コンピューターでも言われています。
実際、現在の量子コンピューターはおおむね100量子ビットから200量子ビット付近の性能が堅く実現できており、2025年までには1000量子ビットを超えるものが出てくると予測されています。
1000量子ビットが実現した場合、何らかのアプリケーションは作られるとみられており、量子コンピューターに関するブレイクスルーが実現すると考えられています。これまでのところ、量子ボリュームの水位はまさにムーアの法則のごとくであり、その地平線はどこまで広がるのか不明ですが、将来的には非常に大きな量子ボリュームが実現されていることが予測されます。
トポロジカルな量子コンピューターというのも現在では開発されているようで、特徴として「フォールトトレランス性」が挙げられます。このフォールトトレランスとは、システムが破壊されても補完的に動くことを示しているもので、破壊代替性のような意味合いを持ちます。
量子コンピューターは、量子回路という入出力が可逆である計算システムを利用し量子状態の時間発展による作用結果が計算結果となります。この量子回路をトポロジカルな物質を利用することにより、環境ノイズによる量子状態の不安定化を防ぐなどの取り組みが行われています。これは、現在使われているほとんどの量子コンピューターがNISQと呼ばれる「低規模で環境ノイズが内在するコンピューター」であり、そこから脱却することを目的としているために起因します。
そのため、NISQのことをNISQデバイスとも呼んだりします。
なぜトポロジカルな物質が量子状態を安定化させるのかについてですが、非常に難しいため無視しても構いません。
トポロジカル特性をあらわにしているのがマヨラナ粒子といわれる中性粒子で、電子や光子などのフェルミオンやボゾンの従うルールとは異なる振る舞いを見せることで知られています。
先ほど紹介したトポロジカル量子コンピューターは、まさにFT(フォールトトレランス)なものですが、来るFTQC(フォールトトレランス量子コンピューター)時代はどのような方式が主流になっていくのでしょうか。
これまで、量子コンピューターの方式としては、超伝導回路を利用するか、光回路を利用するか、デジタル回路を利用するかなどが主流でした。最初に登場したのは量子ゲート方式といわれる超伝導回路利用のものですが、その後は光量子コンピューターやイオントラップ、またはシリコン量子ビットなど、いろいろな種類が誕生してきました。
NISQ時代における方式としては量子ゲート方式とアニーリング方式が挙げられますが、「ノイズのない時代」であるポストNISQ時代は量子ゲート方式などが再度改修されるものとみられています。
このFTQC時代になると何が重要なのかといえば、端的に既存のスパコンよりも量子コンピューターのほうが優勢になることです。これまで、量子スプレマシーはグーグルや中国企業がしのぎを削ってけん制しあっているものでしたが、それは飽くまでもスパコンでも代替できる程度のものでした。しかし、それはNISQデバイスだから言えることであり、ポストNISQであるFTQCでは話は異なるようです。
ネット上のソースでは、FTQCとNISQが混同したものが最新であると記載してあるものもあります。