テクノロジー

Vol.105 【詳解】量子コンピューターについて

gryption's icon'
  • gryption
  • 2022/06/24 17:55

近年注目を浴びるテクノロジーであり、最もマカフシギであるといっても過言ではない「量子コンピュータ」ですが、今回はそれについて解説していきます。

量子コンピューターとは何なのか?

結論から言うと、「新しい物理特性を使った計算機」です。量子コンピュータで最も重要なワードは何かといわれれば、まさに「量子性」でしょう。

量子とは何なのか?という疑問はこの自然界の諸現象に対する問でもあり、物理学としてそれらを考える必要があります。

Content image
量子コンピューター企業であるIonQはNY証券取引所に上場した

これまでのデジタルノイマンコンピューターは、原子状態などの物理的な側面に触れることはなく、もっぱら電子というなの量子をある程度コントロールすることで実現してきたものです。

しかし、この量子コンピューターはそれらとは異なり、自然界における量子特性を内包したコンピューターになるため、仕組みという意味では、これまでのロジック回路とは異なる部分があります。

この量子特性というのが「波動性と粒子性」です。量子力学では、電子や光子などが二つの性質を持ちます。量子コンピューターでは、これらを切り替えながら計算するという仕組みを取っており、これはこれまでのコンピューターとは全く異なるものといえます。

従来式コンピューターでは、論理回路を組むことで演算を行っていましたが、量子コンピューターでは量子回路というものを利用します。この量子回路は、計算を量子状態の相互作用の結果として考えるため、入出力に対して可逆なシステムとなっています。

また、量子コンピュータに触れると、量子テレポーテーション変分量子ソルバー回路QEDなど、そのすそ野へのアプローチも見えてきます。

例えば、変分量子ソルバーといわれる、変分原理を用いた最適化手法などは、化学材料分野への応用が期待されており、「物質のプログラム」をAIのように最適化することができる可能性があります。このような技術が例えば、ここでは紹介していない「バイオインフォマティクス」と出会ったりした場合、オーミクスとの親和性をある程度発揮するかもしれません。

実際、量子化学の発展に伴い、化学式をプログラミングすることは珍しいものではなくなってきており、量子分野、バイオ分野、IT分野が絡み合う未来が実現することもあり得るとされています。

増え続ける量子ボリューム

コンピューターにおいて、その処理性能を示す指標として挙げられてきたのがムーアの法則です。これは、コンピューターを作る半導体の性能が一年おきに2倍になることを示しており、同様なことが量子コンピューターでも言われています。

実際、現在の量子コンピューターはおおむね100量子ビットから200量子ビット付近の性能が堅く実現できており、2025年までには1000量子ビットを超えるものが出てくると予測されています。

1000量子ビットが実現した場合、何らかのアプリケーションは作られるとみられており、量子コンピューターに関するブレイクスルーが実現すると考えられています。これまでのところ、量子ボリュームの水位はまさにムーアの法則のごとくであり、その地平線はどこまで広がるのか不明ですが、将来的には非常に大きな量子ボリュームが実現されていることが予測されます。

トポロジカル量子コンピューター

トポロジカルな量子コンピューターというのも現在では開発されているようで、特徴として「フォールトトレランス性」が挙げられます。このフォールトトレランスとは、システムが破壊されても補完的に動くことを示しているもので、破壊代替性のような意味合いを持ちます。

量子コンピューターは、量子回路という入出力が可逆である計算システムを利用し量子状態の時間発展による作用結果が計算結果となります。この量子回路をトポロジカルな物質を利用することにより、環境ノイズによる量子状態の不安定化を防ぐなどの取り組みが行われています。これは、現在使われているほとんどの量子コンピューターがNISQと呼ばれる「低規模で環境ノイズが内在するコンピューター」であり、そこから脱却することを目的としているために起因します。

そのため、NISQのことをNISQデバイスとも呼んだりします。

なぜトポロジカルな物質が量子状態を安定化させるのかについてですが、非常に難しいため無視しても構いません。

トポロジカル特性をあらわにしているのがマヨラナ粒子といわれる中性粒子で、電子や光子などのフェルミオンやボゾンの従うルールとは異なる振る舞いを見せることで知られています。

FTQC時代の主流方式は何になるのか?

先ほど紹介したトポロジカル量子コンピューターは、まさにFT(フォールトトレランス)なものですが、来るFTQC(フォールトトレランス量子コンピューター)時代はどのような方式が主流になっていくのでしょうか。

これまで、量子コンピューターの方式としては、超伝導回路を利用するか、光回路を利用するか、デジタル回路を利用するかなどが主流でした。最初に登場したのは量子ゲート方式といわれる超伝導回路利用のものですが、その後は光量子コンピューターイオントラップ、またはシリコン量子ビットなど、いろいろな種類が誕生してきました。

Content image

NISQ時代における方式としては量子ゲート方式とアニーリング方式が挙げられますが、「ノイズのない時代」であるポストNISQ時代は量子ゲート方式などが再度改修されるものとみられています。

このFTQC時代になると何が重要なのかといえば、端的に既存のスパコンよりも量子コンピューターのほうが優勢になることです。これまで、量子スプレマシーはグーグルや中国企業がしのぎを削ってけん制しあっているものでしたが、それは飽くまでもスパコンでも代替できる程度のものでした。しかし、それはNISQデバイスだから言えることであり、ポストNISQであるFTQCでは話は異なるようです。

ネット上のソースでは、FTQCとNISQが混同したものが最新であると記載してあるものもあります。

 

Article tip 0人がサポートしています
獲得ALIS: Article like 38.80 ALIS Article tip 0.00 ALIS
gryption's icon'
  • gryption
  • @biyori
金融系・テック関連のニッチな最新情報をわかりやすくアウトプット&解説ブログ本編:https://note.com/gensnotes/

投稿者の人気記事
コメントする
コメントする
こちらもおすすめ!
Eye catch
他カテゴリ

機械学習を体験してみよう!(難易度低)

Like token Tip token
124.82 ALIS
Eye catch
テクノロジー

なぜ、素人エンジニアの私が60日間でブロックチェーンゲームを制作できたのか、について語ってみた

Like token Tip token
270.93 ALIS
Eye catch
クリプト

ジョークコインとして出発したDogecoin(ドージコイン)の誕生から現在まで。注目される非証券性🐶

Like token Tip token
38.31 ALIS
Eye catch
クリプト

Bitcoinの価値の源泉は、PoWによる電気代ではなくて"競争原理"だった。

Like token Tip token
159.32 ALIS
Eye catch
テクノロジー

iOS15 配信開始!!

Like token Tip token
7.20 ALIS
Eye catch
クリプト

約2年間ブロックチェ-ンゲームをして

Like token Tip token
61.20 ALIS
Eye catch
他カテゴリ

ALISのシステム概観

Like token Tip token
5.00 ALIS
Eye catch
テクノロジー

彼女でも分かるように解説:ディープフェイク

Like token Tip token
32.10 ALIS
Eye catch
クリプト

Uniswap v3を完全に理解した

Like token Tip token
18.92 ALIS
Eye catch
クリプト

17万円のPCでTwitterやってるのはもったいないのでETHマイニングを始めた話

Like token Tip token
46.60 ALIS
Eye catch
クリプト

Bitcoin史 〜0.00076ドルから6万ドルへの歩み〜

Like token Tip token
947.13 ALIS
Eye catch
クリプト

NFT解体新書・デジタルデータをNFTで販売するときのすべて【実証実験・共有レポート】

Like token Tip token
121.79 ALIS