EV×Web3は爆発するポテンシャルを抱えている

バイデン政権はEV（電気自動車）の普及を推進するための政策を発表しました。これにより、アメリカで製造される新車の50%以上が2030年までにEVとなることが義務付けられました。これによって、新たなサプライチェーン（供給網）、組み立てライン、製造施設の整備が北米で行われることになります。これは環境保護庁（EPA）による新しい規制の一環となります。

ブロックチェーンは、サプライチェーンの透明性と人権の確保において重要な役割を果たすことができます。

自動車メーカーやバッテリーメーカーが適切な手順で原料を調達しているかどうかを確認するためには、信頼できる方法が必要です。現在では、このような手段はほとんど存在しません。バッテリーや自動車部品は、アフリカの炭鉱からアジアの工場、ヨーロッパの自動車組み立てラインまで、複数の大陸をまたいで調達され、組み立てられることが一般的です。

製造された自動車がアメリカの道路を走るまでのプロセスでは、連邦政府の優遇措置を受けるメーカーでさえ、原材料の原産地を隠したり、クリーンでないエネルギーを使用したりすることができます。

複雑で透明性に欠けたサプライチェーンは、サステナブルな取り組みの確実な実施と、アメリカや自由貿易協定（FTA）締結国におけるエンド・ツー・エンドのインフラ確立を目指す規制当局にとって大きな課題です。

ブロックチェーンは、原材料の原産地や製造プロセスを追跡・検証するための高い透明性と安全性を提供することで、これらの課題の解決に役立ちます。

ブロックチェーンを使用すると、原料の採掘から製造までの各取引を複数の関係者が記録・検証できます。情報の正確性と信頼性が確保されます。これにより、密輸や環境汚染を引き起こす採掘の抑制に寄与し、企業が倫理的に問題のある供給源に頼ることを困難にします。また、最近の電気自動車の発火事例など、品質管理の問題にも対処するのに役立ち、消費者の安全性向上にも貢献します。

実際に、いくつかの組織はブロックチェーンをサプライチェーンに取り入れており、その効果を実証しています。

例えば、グローバルジュエリー企業のデビアス（De Beers）は、ブロックチェーンを活用してダイアモンドの取引に透明性をもたらす取り組みを行っています。これにより、ダイアモンドの産地から市場へのルートを追跡し、ダイアモンドが持つ認証情報を確実に保護することができます。

世界経済フォーラム（WEF）も、「Redesigning Trust with Blockchain in the Supply Chain」というプロジェクトを通じて、ブロックチェーンをサプライチェーンでの信頼性向上に活用することを目指しています。このプロジェクトでは、100を超えるパートナー組織と協力し、オープンソースのツールキットを共同設計することで、ブロックチェーンの導入を効率化しています。

こうしたプロジェクトは、EVサプライチェーン構築に取り組む企業にとってインスピレーションとなるものです。アメリカから優遇措置を受ける企業は、クリーンで再生可能なエネルギーを使用し、原材料の調達においても環境に配慮した取り組みを行っているかどうかを検証することが重要です。また、製造過程においても品質管理や安全性の確保にブロックチェーンが役立つ可能性があります。

これらの取り組みは、サプライチェーンにおける透明性と信頼性の向上を通じて、環境保護や人権確保などのサステナビリティの目標を達成するために重要な一歩となります。

ブロックチェーンは、信頼性のあるデータの確立により、サプライチェーンや他の産業における透明性と信頼性を向上させる役割を果たします。

特に、複数の大陸をまたぐサプライチェーンにおいて、透明性の不足が課題となっている業界において、ブロックチェーンは重要な役割を果たします。ブロックチェーンによる信頼の実現により、データの改ざんや偽装を防ぐことができます。また、トークン化のプロセスによって、株主などが新しいデジタル資産を保有できるようになり、新たな市場も生まれる可能性があります。

不動産業界では、スマートコントラクトとブロックチェーンを活用して物件の購入や不動産の権利をトークン化する取り組みが進んでいます。同様に、EV業界もブロックチェーンを活用してサプライチェーン内で倫理的な調達を行うことが可能です。

さらに、ブロックチェーンの活用は、投機的な暗号資産から実世界のコモディティに連動したデジタル資産へとシフトしています。パクソスなどのステーブルコインプロジェクトは、金やその他の貴金属を裏付けとしていますし、今後はリチウムなどの原材料にも同様のトレンドが広がる可能性があります。そのためには、国内および国際的なサプライチェーンの改革が必要です。

バイデン政権がEV普及促進のための政策を発表したことは、ブロックチェーンを活用したサプライチェーンの改革にとって好機です。これにより、サプライチェーン内の倫理的な調達や透明性の向上が推進されることが期待されます。