9月の終わり、7月頃からどうしても行きたいと思っていたフィリピンに行くことになりそうだ。なぜどうしても、なのか、それは端的にもともと行くはずだったからだ。しかし、そこまで強い動機はない。
最も、フィリピンの玄関口である「ニノイアキノ国際空港」についてはかなりの悪評があり、「世界最悪の空港」とまで言われていたようである。しかし、2010年代ごろからターミナル3の改修も経て、徐々にその評判は良くなりつつあるようだが、私はそんな空港に深夜0時過ぎに到着したのだった。
そもそも、この治安の悪いフィリピンの国際空港に深夜についたということ事態まったく計画していなかったことの表れだが、ここからどうするか、と絶望から始まっている。
日本人は海外に対して恐怖心を持っていると言われるが、それは間違いだ。正しくは、「恐れるべきところは恐れる」というだけであり、治安の悪い地域で恐怖心など持たないわけがない。
空港着でそのあとどうするかというところだが、どうにもすることがない、一方で、旅行を名目としている身で、いきなり空港野宿、そしてその次の日は割と治安の悪いマニラを探索というのはハードルが高いように思える。
戦々恐々としていた空港治安への懸念だったが、実際のところそこまでひどくはなかった。深夜一時から夜明けまで過ごしたものの、空港中に寝泊まりしている人はおり、自分自身なんのトラブルもなく空港泊ができた。とはいえ、本当のトラブルはその後に来た。
それはSIMカード問題だった。ニノイ・アキノ国際空港では一応GlobeとSmartのSIMカードが売られているが下値で3800円くらいする。たった数日いるだけでこの値段しかないのはやばいので外にあったローソンでSIMカードを買った。これは100円くらいだ、が、なんとその5時間後、そのSIMカードは死んだ。
ちなみに、ニノイ・アキノ国際空港は一度外に出ると入るのに手荷物検査が必要になる。よく、一度外に出たら二度と入れないと書かれていたりするが、手荷物検査を経れば入れる。そのゲートを探す必要はあるが。
マニラ中心部にあるリサール広場はただの公園、ではあるがその外苑には色々な人がたむろしており決して安全とは言えないだろう。特に客引きが多く観光したらほぼ100%声掛けされる。
SIMカードが終わっているので、こっちとしてはWi-Fiスポットのみで生きていくことにした。国立図書館にはWi-Fiが使える場所があり、それは館内2階らしい。
館内に入るには、レジストレーションが必要らしくIDやパスワード、Wi-Fiのキーなどをもらえる。警備は厳重では出入りのたびに自分のバッグの中身を見せなければならない。これはリサール広場でも同じであった。
治安が悪いとされるマニラではあるが、確かに街なかの至る所に上半身裸で寝ている人は多くいた。多く、というか居る場所には道路の両側に大勢が寝ているといった具合である。
BGCという空港の西にある近代エリアはこことは大違いで巨大な道路にビルが立ち並ぶ先進的な場所もある。こうして見るとメトロ・マニラに置いても地理的に貧困層が多いところとそうではないところで極端に様相が異なっていると言える。ある場所ではメインストリートのレストランやスーパーは綺麗だが、それらがある場所の近くに伸びている路地に入ると、文字通りスラムが出現するからだ。
インターネットで「エルミタ 治安」と検索すればそこがどんな場所かわかる。一言で言えば危険、だろう。そしてその危険と言われるエルミタ、マラテ、イントロムナス周辺を歩けばなぜ危険と言われるのかがわかる。
ベトナムのような危険さとはまた異なる、なぞの不安感がそこにはあるのだ。銀行の前にはソードオフ・ショットガンを持った警官がおり、ガソリンスタンドの脇には女性と子ども、そして犬が路上生活している。
とはいえ、その路上生活者が居るとなりの雑居ビルではビジネスセミナーが開かれていたり、一見治安の悪さを忘れるような光景もある。
少し北上すればスモーキーマウンテンがあり、最悪の治安と言われるケソンシティも見えてくる。
フィリピン旅行の醍醐味は、一つに当地域が外務省が指定する十分注意すべきエリアに区分けされていることに起因する。これはどういうことかといえば、お金を払って旅行したうえで、普段日本では味わえない現地の空間を体験できるということだ。東南アジアエリアで、往復券と旅行代を合わせて5万円を切る危険地帯は、知っている限りフィリピンしかないだろう。危険地帯と表現しているが実際に行ってみると、たしかにいつどこからなんのトラブルが起きてもおかしくないカオスさはある。
上記はさもフィリピンはスリリングな場所でそれを求めるものには様々な学びがある、風に言っているが治安があまり良くない故に観光という観光は程々のものになる。本来こうあるはずというレベルの観光は十分にできない、どちらかといえばトラブルも思い出の一つ、といった旅感になる。これはある意味で問題であり、最終的に旅行に行ったのに満足に旅行できないことを暗示している。
しかし、そのような問題はトラブルを経験しまくることで味わい深いものになるし、一つにそうやってでしか旅のオリジナリティは生み出せない。こういったトラベルに資金を投下するのは、思い出として消失しづらい記憶として残るからでもある。
こと資金の使い方というと、一つに経験に使えというものがある。なぜなら、モノを購入しても時間の経過でそれらは無用の長物になったり、価値が減退するからだ。もちろん、ロレックスやエルメスのバッグなど、ブランド品ならばむしろ価値が上がったりするモノもある。しかし、よほどエルメスやロレックスが好きだったり、ポケモンカードやフィギュアが好きではない限り、それらが再度値上がりするのを見込んで購入することは得策とは言えない。なぜならば、投資信託とかゴールドインデックスファンドなどを買えばいいからだ。
旅行のし過ぎで、経験値を無駄に積み上げるのもどうかとは思うが、使途不明金が大量にのさばっているよりはいい。とはいえ、こうやってうまくお金を使いましたよ、と自己満足する意義はどこにもなく普通に空虚でもある。そんなことを自慢するなら、翻って稼いだほうがいい。
最後に東南アジアをいくつかまわって思ったことがある。いや、これはどちらかというと忠告に近いかもしれないが、各国の物価は期待以上に高いし安いものには明らかに理由があるのがわかる。少なくとも、法外に安価な何かと出会う希望は捨てるべきだろう。