え?なんなんだ!この展開は!!
「竜様、地球の様相が様変わりしても自分は現場にも行けない。かと言って取り乱すのはみっともないですよ。ここは、腹を据えて天変地異からのリカバリに努めた方が良いですよ」
研究室で絶品のコーヒーを淹れてくれたネコさんが、手の施しようのない俺に処世術を伝授してくれている。
「ご主人、今夜は新月だからようやく地球にスカーレットを迎えに行けるにゃ。アスタロトも準備万端だから落ち着くにゃ」
俺の手下《ペット》である真黒い毛並みのシャム猫のネコが生意気にも主人である俺に意見してくる。
「我が弟子をどうするつもりか、竜殿、覚悟は決まったのかな?」
ネコに跨った、白磁のビスタドールが俺に問う。
「アスタロト、そんなの決まってるだろ。あんな、大陸も無くなった地球に置いておけないからスカーレットを連れ戻すさ。俺も真っ白な手をしてる訳でもあるまいし、今更だろう?」
「そうか、その方が覚悟を決めているのなら良い、自分の女が仕出かした咎はお主が背負って行くがよい」
地球環境のシミュレーションをいろいろ試したところ、氷河期真っ逆さまの状況から大陸の減少で危機を脱したようなのでスカーレットが仕出かした事態に一安心だ。核汚染やPMニ.0も無くなったしね。
「そろそろ、いい頃合いだ。行くなら早くしな、竜」
「ああ、じゃ頼むぜ」
俺はあっという間に、異界から地球に戻っていた。まあ、俺の知る地球とはかけ離れた大陸の無い星になったけどな。南極は除くけど。
「竜、よく来たわね。もう、何年もあなたと会っていないような気がするわ」
クジラに引かせた小舟の上でスカーレットが、俺にウインクした。
優雅なもんだな、昔見たハリウッド映画のエジプト女王みたいだ。
「派手にやったもんだな、何人死んだか分かっているのか?」
「ふっ、そんなの決まってるでしょ」
「じゃ、聞かなかったことにするよ。口座の増え方を見れば一目瞭然だからな。金の切れ目が縁の切れ目とか、地獄の沙汰も金次第とか良く言ったものだな。真正、魂の価値が仮想通貨イージェイ《EJ》になって証明されるとか。どんだけだと、納得いかない気もするが、俺が言うのも今更だからな」
黄金の巨大な物体が海の底から俺たちの進路に立ちはだかった。凄まじい美人がその物体に乗っているのが判る。ただ、その物体の形状はいろいろ変化していて定まった形が無いようだ。
「そろそろ、決着を着けましょうか?乱導竜、この星を統べるのが私かお前かを!」
凄い美人が、きつい目で俺を睨みつける。物体の形がいつのまにやら黄金のピラミッドに固定されていた。
「西城斎酒《ゆき》、生きていたのね。やはり・・・・・・」
スカーレットが揺れる瞳で凄い美人の名を呟いた。