ふーむ、こうもうまく行くとは我ながら感心してしまうな。やはり、この世界でも科学知識は通用するみたいだな。まあ、スマートフォンを使っている時点で今更感もあるが。
「科学と魔法の融合か。嘘っぽいけどほんとの話ってあるんだな」
「何をぶつぶつ言ってるかようわからんが、この管《パイプ》とか宝石箱はどうするんじゃ?」
「そうですね、宝石箱というかレーザー装置は俺が持って帰るから。残りの試作品は全部ジョージタウンにある領主の館に送って下さい。その分の運賃も支払いますよ」
ワフードさんは顎に手をやって少し考えてから、仕事の代金を提示した。俺はもちろん納得して二万霊子《レイス》を支払った。
あれだけの仕事をやって貰った割には破格の値段だ。商売っ気のない職人気質なんだろうな。
「あ、そうだここを紹介してくれたケーンの店にまだ飲み切れていない酒があるはずだから良かったら飲んでください」
「おお、気が利くな竜。そういうのが一番うれしいわい。ありがたく、美味い酒を飲ませて貰うとするか。あと、なんだ、また作って欲しい物があればケーンに伝えてくれればお友達価格で引き受けるでな」
「ありがとう、もう少しすると忙しくなると思うが、よろしく頼むよ」
俺は深々と頭を下げてから、町の方に歩き出した。
「いらっしゃい。ワフードには会えたかい?」
「ああ、いい仕事をしてもらった。俺は、すぐに帰らなくちゃならないんだが、残った金ではワフードに飲ませてやってくれ。俺に出来る感謝の印だ」
「それは、いいんだが。
いいんだが今晩、奴に来られたら店の酒樽が空っぽになっちまって、うちは開店休業だな。やれやれだ」
ケーンは、店の中で天を仰いだ。
「それとケーン、今後ワフードさんに仕事を頼むときは、あんたに言づけてくれと言われたんだが頼まれてくれるか?」
「ああ、もともと町はずれの奴の工房に足を運ぶのも面倒なんでうちの店で仲介しているんだ。
だいたい奴はいつも毎日というくらい、ここに飲みに来るからな」
「わかった。じゃあ、俺が来れないときは使いの者を寄こすからよろしくな。俺は竜、ジョージタウンの領主の所に居候している」
「偉い錬金術師で領主様の所に居候ねぇ。
まあ、変わり者だとは思っていたが俺が思ってた以上に大物だったな」
「じゃあ、世話になった。またな」
俺は時を置かずしてジョージさんの館に戻って来た。
「ご主人、お帰りなさいにゃ」
「うん?ネコか、その様子じゃ特に変わったことはないようだな。それじゃ、いつものようにネコさんに相談にいくか」
俺はペットのネコを適当にあしらうとネコさんの所に相談しに行った。
「へぇ、この箱が光を増幅するカラクリですか」
「ああ、試作だから光源には俺のスマートフォンを使っているが、適当な光を発する石があればそいつに置き換えるつもりだ。あと、冷却する仕掛け、重力を操る仕掛けなんかが必要になるんだが。
ここで相談なんだがネコさんの方で、ちょこちょこっと作れるかい?」
「竜さんの頼みならと言いたいところですが、うーん。それは少し難しいですね」
ネコさんでも難しいとなると、あとはジョージさんに泣きつくしか無いのか?しかし、それではこの件を任されているネコさんの面子が潰れるか。
まあ、俺にとっては究極どうでもいいとも言えるが。
「そうですねぇ。私にはできなくともマスタなら、いや、ここは。これはあの娘、下僕一号に頼む方が良いでしょう。
あの娘の使い魔には、様々な魔法をよくする者がいます。それを一時的に借り受けて、海を凍らせる者、月の輝きをもたらす者、闇の力を操る者、速さを極めし者これらの力を借り受けるのです。
そして、竜さんが使いやすいようにわたしが上手く魔法を封じ込めた宝石などに変えてあげましょう。これなら、必ずや上手くいくでしょう」
(ふふ、あやつの使い魔の力の一端でも私が掌握してしまえれば。来るべき闘いにおいて有利に立てる。まこと、これは好機!)
「なんか、ネコさんがすごくやる気になってくれたみたいで俺はありがたいよ。
だけど、なんかあの水色の女の子は苦手なんだよな。未だに名前さえ教えてくれないしな、下僕一号は。まあ、なんとか頼み込んでみるよ」
「え?あんた、今なんて言ったの?使い魔を借りたいですって!冗談じゃないわ」