自分の行く末《ゆくすえ》をどう決めるか、それによって人の価値は変わるものだ。
平坦な道を選び安楽を貪るか、棘の道を選び辛酸を舐めるのか。
さて、この物語ではどうなるのだろうか?
「うーん、いい冒険日和ねぇ。今日は何処へ行くの、キール?」
「ああ、あそこを目指すのさ。だが、その前による所がある」
「え?どこに?」
鍜治場には、髭を蓄えた背は低いが筋肉質の男が無心で槌で短剣を打っていた。 「ふふっ、久しぶりに剣を打っていると心が弾むのう。いや、別に複雑怪奇な金属の筒の集合体とか人形の胴体や手足を造るのも面白くはあったがのう ・・・・・・」
「ほう、この短剣は手に馴染むなあ。流石にワフードさんだ、俺に合わせて丁度良い具合に仕上げてくれた」
「なに、この道も長いのでな。使い手にあった拵え造るくらいは当たり前の腕の範疇じゃが、やはりあの素材を使ってやる仕事は最高じゃったな」
「うん、実にいい作品をありがとう」
「ワフードさん、またね」
ワフードの鍜治場を後にした、キール一行が目指すのは砂漠の中にそびえる墓場だった。
巨石を積んだ四角錘の古代の建造物、いわゆるピラミッドと呼ばれる物の隠された地下通路をキール一行は下っていた。
「それにしても、キールが武器を用意するなんて初めてよね。ここにはそれほどヤバい奴が居るの?」
「どうなんだろうな、こいつのアドバイスに従ったまでだが・・・・・・」
キールは懐から、光る不思議な薄い板を取り出してリサに見せた。
「それって、不思議なんだけど。今までもお宝の場所を教えてくれたのよね。何なのよそれって?」
「ああ、これは俺のいた所では、スマートフォンと言って色々な情報のやり取りをする道具さ。
例えばゲームも出来るし、電話や動画も見れる。メールもな。
である日、受けたメールがそもそも俺がこの世界に来る切っ掛けだった」
「ふーん、ゲーム?電話?動画?メール?」
「うーん、まあ他の機能はあんまり関係無いから説明はまた今度な。
メールって、言うのはこの世界では手紙に近いかな。主に文字で意思疎通する手段というところがな。
手紙の場合は、インクで羊皮紙とか紙に文字を書いて誰かが配達するだろ」
「うん、そだね。配達した人がお礼にお金を貰うんだ」
「ああ。メールの場合は、パソコンやスマートフォンで書いた文字が情報に変換されてスマートフォンに送られてくるんだ」
「ふーん、さっぱりわからないんだけど。それで何て書いてあったのそのメールに?」
そこで、キールは不思議な板《スマートフォン》を操作してメールを表示させるとリサに見せた。
「ふーん、なんだか悪魔が囁く言葉みたいね」
メールには、次の文章が記されていた。
『すべてを手に入れる鍵がここにある
力も富も・・・・・・
すべてを欲する者よ、探せ
そして隠された七つの鍵をすべて手に入れよ
選択せよ! 「望む」 か、 「望まない」 』
「ああ、そしてこのメールに何故か俺は惹かれるものを感じて・・・・・・」
そのときキールは、「望む」をクリックしたのだった。