「うーん、話しても無駄みたいね。アラク、反陽子砲発射用意!」
「ね、姉さん?」
月の女王と守護戦艦月《ジ・アラク》の制御AIであるアラクが竜には理解できない科学法則について口論していた。
「我が主、反陽子砲の使用は戦術としては下策です。打ち損じるとどのような災害が起こるか予測もつきません。だいいちあのような小型(生物かどうかはおいておくとして)標的を攻撃するように反陽子砲は作られていません。埃を吹き飛ばすのに、大砲を撃つようなものですよ。
御一考ください!」
「だからと言って、しょぼいレーザー砲だとかレールガンやミサイルとかで対処できるような敵でないのはアラク、あなたにもわかっているでしょう?」
「おい、ちょっと待ってくれ!災害って、予測される最大の災害はどんなものなんだアラク?」
アラクは瞬きを余計に二回ほどすると、とんでもない予測を話だした。
「そうですね、リュラーン皇子。流れ弾が太陽に当たれば、太陽が消失しますし。まあ、この場合はどっかの恒星系から似たようなものを見繕って太陽の代わりに組み込めば済む話なので大したことではありません。
それよりも、問題なのは標的や宇宙船:太陽系《マンズーマ・シャムセイヤ》にかすりもせずに反陽子砲が外れた場合は高確率で他の銀河、たぶんアンドロメダが崩壊します」
「アラク、大儀の前の小事ですよ。その程度の不幸、覚悟を決め我々で飲み込みましょうぞ」
「待ってくれよ、姉さん!こんなことで銀河一つ滅ぼすとか何処のラスボスだよ。落ち着いて、こんなこともあろうかと俺は居候を飼っているんだよ。 ちょっと火星にいる探検隊に頼んでみるからさ。
アラクは、よく現象を観察して武器のコピーができるか検証してくれよ」
「おお、愛しのリュラーンがそこまで言うのなら、その手腕見せてもらいましょう」 「リュラーン皇子、モニタ準備完了です。いつでも、いいですよ」
「うん、そうだ。どこでもいい。適当に月の裏側にそっちで持ってるミサイルの上等な奴を打ち込んでくれ。大丈夫、こっちの船はちょっとやそっとじゃ壊れないからさ。心配せず本気で撃ち込んで来い、船長!」
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宇宙探査船の艦橋で船長と副長が話し合っていた。
「船長、よろしいのですか宇宙連邦の武器の性能がここの住人に知られる恐れがありますよ」
「心配するな、副長。我々は偶然、標準惑星の衛星が突然地表外殻を失って謎の金属表面が露出した現場に居合わせて鉱物サンプルを入手しようとするだけだ。
まあ、我々の魚雷で傷一つ付かないだろうがな」
「光子魚雷《フォトン・トゥピドー》発射!」
~~~ 「なるほど、短距離跳躍機能を備えたミサイルに極少量の反物質を搭載しているみたいですね。射程は一光年程度でしょうか」
「どうだ、アラク。このミサイルを真似た武器は作れるか?」
「そうですね、ですが結局ミサイル内部に反物質を積んでもあの魔人たちには通用しませんよ。さきほどあのミサイルが魔人の土手っ腹に命中しましたがびくともしませんでしたので」
宇宙探査船から発射された光子魚雷は、ちょうど魔人ガープに命中したが何の痛痒も感じないようで月面上を暴れまわっていた。
「ふん、俺に考えがある。アラクはミサイルの弾頭は空にして量産してくれ。奴等の数は多いから充分な量を頼むぞ。
俺が奴らに効く飛びっきりの爆薬をミサイルに積んでやるからな」
月の女王とホムンクルスの罵り合いで時間を稼ぐこと約三十分でミサイルが完成した。
「ようし、準備はできたな。詐欺魚雷《スキャム・トゥピドー》発射!」
無数の詐欺魚雷が月面を徘徊、攻撃する魔人どもに命中する。すると、様々な色の煙となって魔人どもが地獄へ戻っていく。
俺の霊子《レイス》の残高が、百兆霊子ほど減ったのはご愛敬だ(悲しいぜ)
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没イラストw MidJourneyで複雑な構図を造るのはムズイってことで ・・・ ・・・